ADHD(注意欠如・多動症)は、発達障害のひとつで、注意力の持続が難しかったり、衝動的に行動してしまったりする特徴があります。こうした特性が日常生活の中で思わぬトラブルや困りごとにつながることも少なくありません。
本記事では、ADHDをお持ちの方が日常生活でよく直面する「あるある」を5つ紹介しながら、少しでも心地よく生活していくための具体的な対策について丁寧にご紹介いたします。

ADHDの方によく見られる特徴の一つが、「時間管理の難しさ」です。たとえば、友人との待ち合わせに遅れてしまったり、大切な予定をすっぽかしてしまったりすることがあります。場合によっては、電車や飛行機に乗り遅れてしまったり、目的地とまったく違う場所に行ってしまったりすることもあります。
これは、順序立てて行動することや、時間を逆算して準備を整えることが苦手であることに由来しています。身支度の最中にふと目に入った別の物に気を取られ、元の作業を忘れてしまうといった、「注意の逸れやすさ」も原因の一つです。
また、生活リズムが不安定になりやすく、寝坊してしまうことも少なくありません。日常の中で時間に関するトラブルは、自己評価の低下や人間関係のストレスにもつながりやすいため、工夫が求められます。
ADHDの方は、家事や片づけに関しても多くの困難を感じがちです。掃除や整理整頓、洗濯、料理などを段取りよく進めるのが難しく、家の中がごちゃごちゃしがちです。
とくに、子育てや仕事と並行して家事をこなす必要がある場合には、いわゆる「マルチタスク」が求められますが、計画的な行動が苦手なため、それぞれの作業が中途半端になってしまうことも少なくありません。
また、「どう片づければよいのかわからない」「クローゼットの空間の使い方がイメージできない」など、整理整頓の基本的なプロセス自体が困難に感じられることもあります。
「鍵が見つからない」「財布をどこに置いたか忘れた」「イヤホンがない」──このような“失くし物”も、ADHDのある方によく見られるエピソードです。物の定位置を決めることが苦手で、また家の中自体が整理されていないため、物がどこにあるのか分からなくなってしまいがちです。
加えて、衝動的に物を購入してしまう傾向もあるため、所有物が増えすぎて片づけがより難しくなるという悪循環も見られます。
ADHDの中でも「衝動性」の強いタイプの方は、買い物においてもつい予定外のものを買ってしまうという傾向があります。「これ、面白そう!」「便利そう!」とその場の感情で物を購入し、すぐに飽きてしまう──これを繰り返すことで、浪費につながりやすくなります。
また、金銭管理も苦手な傾向があり、自分の収入や支出をきちんと把握することが難しいため、気づけば口座残高がギリギリになってしまうこともあります。
ADHDの方は、注意のコントロールや行動の調整に常にエネルギーを使っており、結果としてとても疲れやすい傾向があります。頭の中が常に散らかっていて、考えが止まらない状態になりがちであり、これだけでもかなりの精神的な消耗を引き起こします。
さらに、人間関係においてもトラブルや誤解が生じやすいため、対人ストレスからくる疲労感も重なってしまいます。

ADHDの特性は「治す」ものではありませんが、日常生活の中で工夫を重ねることで、その困りごとを軽減し、より快適に暮らすことができます。ここでは、いくつかの具体的な対策を紹介します。
予定やタスクを忘れてしまいがちな方には、スマートフォンの「カレンダーアプリ」や「ToDoアプリ」の活用がおすすめです。予定を入力するだけでなく、アラーム機能を活用することで、時間通りに行動しやすくなります。
また、「紛失防止タグ(忘れ物防止タグ)」も非常に有効です。鍵や財布にタグを取り付けておけば、スマホから音を鳴らして探すことができたり、GPSで場所を確認できたりします。特に外出先で失くしやすいものにはGPS機能つきのタグ、家の中で失くしやすいものには音の鳴るタグを使い分けると効果的です。
たとえば「朝の身支度」の中にも、「顔を洗う」「歯を磨く」「服を着る」「朝食をとる」など、いくつかの工程が含まれています。これらを一つひとつの作業に分けて、順番を決めておくことで、行動に移しやすくなります。
さらに、これを日々のルーティンとして繰り返すことで、体に覚えさせていくことができ、ミスや忘れ物を減らすことができます。
クレジットカードやキャッシュレス決済は便利ですが、ADHDの方にとっては「お金を使っている感覚が薄い」という落とし穴もあります。自分の消費行動をコントロールするためには、あえて現金のみを使う「現金主義」に切り替えるのも有効です。
あらかじめ用途別に現金を分けておき、買い物の際には必要な分だけ財布に入れて出かけることで、衝動買いを防ぐことができます。
ADHDの方は、脳が常にフル回転しているような状態になりやすいため、意識して「休息の時間」を確保することが重要です。特に睡眠に関してはトラブルを抱えている人も多く、生活リズムが乱れることでさらに症状が悪化することもあります。
就寝・起床の時間を一定に保ち、寝やすい環境を整えることで、安定したリズムを取り戻すことができます。趣味の時間やリラックスタイムをスケジュールに組み込むことも、精神的な安定につながります。
ADHDの方は、日常生活の中でさまざまな困りごとに直面することがあります。しかし、それぞれの課題には対策があり、ちょっとした工夫によって生きづらさを軽減することが可能です。
自分の特性を否定するのではなく、「自分に合った方法」を探しながら生活することが、何よりも大切です。周囲の理解と支援も得ながら、少しずつ「自分らしい心地よい暮らし」を築いていけると良いですね。