ASDの話し方は定形発達には理解できない!?【大人の発達障害】

 自閉スペクトラム症(ASD)と診断された人の中には、周囲から「話し方が独特だ」と指摘された経験を持つ方も少なくありません。ASDの特性が会話のスタイルに反映されることは多く、対人関係や職場のコミュニケーションで支障を感じる場面もあるでしょう。この記事では、ASDの方に見られる話し方の特徴を5つ取り上げ、そこから生じやすい問題点と、具体的な改善方法について詳しく解説します。

ASDのコミュニケーションとは?

ASDの話し方とは

1. 興味のある話題を一方的に話す

ASDの人の多くは、関心の対象が非常に限定されており、自分が強い関心を持つ分野に対して膨大な知識を蓄えていることがあります。その結果、会話の中でその話題になると、相手の反応を考慮せず一方的に話し続けてしまうことがよくあります。

このような話し方は、聞き手に対して「自分の話には興味を持ってくれない」といった印象を与えやすく、会話のキャッチボールが成り立ちにくくなります。結果として、相手との関係に距離が生まれることもあるでしょう。

2. 言葉遣いが独特である

会話の中で文語的な表現や難解な語彙を好んで使う人もいます。たとえば、「今日は快晴ですね」と言えば十分なところを、「今日は蒼穹な空ですね」と表現するようなケースです。これは、ASDの人が文語的な言い回しや書き言葉に親しみを持っている傾向があるためです。

こうした話し方は、周囲から「堅苦しい」「回りくどい」と感じられることがあります。特に日常会話においては、あまりに形式的な言い方が壁になってしまう場合も考えられます。

3. TPOに応じた会話が難しい

上下関係やその場の空気感に応じた言葉の選択や態度を求められる場面で、適切な対応が難しいと感じる方も多くいます。ビジネスシーンであれば、相手の役職や関係性に応じて敬語を使う場面が典型的です。

しかし、ASDの人にとっては「誰に敬語を使うべきか」「どこまで丁寧な言葉遣いが求められるか」といった判断が難しく、結果として不適切な言い回しになってしまうことがあります。これが職場での誤解やトラブルの原因になるケースもあります。

4. 非言語コミュニケーションが苦手

言葉そのもの以外の手段、たとえば声のトーンや表情、身振り手振りなどを使ったコミュニケーションは、一般的には自然に行われているものです。しかし、ASDの人はこれらの非言語的要素を読み取ることや、適切に使いこなすことが苦手です。

そのため、話し方に抑揚がなかったり、表情が乏しかったりすることがあり、聞き手からは「冷たく感じる」「感情が見えにくい」と受け取られることがあります。こうした特性は、本人に悪意がなくても、相手に誤解を与えやすい要因となります。

5. 発言が非常にストレートである

ASDの人は、本音と建前の区別が苦手な傾向があります。たとえば、相手が髪型を変えた場合、「似合っている」と言うのが無難であると理解していても、正直な感想として「前の方がよかった」と言ってしまうことがあります。

これは、自分の発言によって相手がどう感じるかという視点を持つのが難しいために起こる現象です。結果として、相手を傷つけてしまったり、人間関係がぎくしゃくしたりする原因になることもあります。

話し方によるトラブルとその改善方法

話し方によるトラブルとその改善方法

 ASDの話し方には、先述のような特徴がありますが、それ自体が「悪いもの」というわけではありません。ただし、誤解やトラブルの原因となる可能性があるため、少しずつでも改善を目指すことは有効です。以下に具体的な改善方法を紹介します。

1. 文章で伝える工夫を取り入れる

会話が苦手で自分の思いや考えをうまく言葉にできないと感じる場合、無理に口頭で話そうとせず、文章で伝える手段を選ぶのも有効です。

文章にすることで、自分の言いたいことを一度立ち止まって整理できます。また、相手の立場に立って「この表現で伝わるだろうか」と見直す時間も取れます。特にチャットやメールなどのツールを活用すれば、自分のペースでやり取りができます。

言葉に詰まってしまいがちな内容でも、文字にすれば意外とスムーズに表現できることがあります。自分にとって安心できる方法を選ぶことが、円滑な人間関係への第一歩になるでしょう。

2. 会話のルールを自分なりに定めてみる

会話がうまくいかない原因には、ASD特有の傾向が関係している場合があります。「相手の話をちゃんと聞いていないように見える」「自分の話ばかりしてしまう」「不適切な話題を出してしまう」など、よくあるトラブルの傾向を自分自身で振り返ってみましょう。

たとえば、

  • 相手の話を聞いているときは、うなずきや「ああ、そうなんですね」などの相づちを意識的に入れる
  • 話す前に「この話題、興味ありますか?」と一言添える
  • 1分話したら相手に話を振る
  • 職場ではプライベートな話題に触れないようにする

といったルールを決めておくことで、無用なトラブルを避けやすくなります。

こうした工夫はあくまでも「努力目標」であり、自分の性格を責めるものではありません。コミュニケーションの成功パターンを少しずつ積み重ねていくことが大切です。

3. 読点を意識した話し方を心がける

ASDの人は、感情の抑揚が乏しく聞こえる傾向があるため、「機械的な話し方」に受け取られやすい場合があります。これを和らげる簡単な方法として、読点(、)の位置で一呼吸置く話し方を意識してみましょう。

自分の話を文章にしたときに読点や句点が入る場所で、実際の会話でも一拍置くように意識するだけで、聞き手の印象はかなり変わります。一定のリズムで話すことで、相手にとっても理解しやすくなり、会話のテンポも自然になります。

話し方を根本から変える必要はありません。ほんの少し、息を吸うタイミングを意識するだけで、伝わり方に大きな差が出ます。

4. 自分の特性を事前に伝える

ASDの特性によるコミュニケーションの苦手さや、相手とのすれ違いを完全になくすのは非常に難しいとされています。なぜなら、それは「治すべき欠点」ではなく、生まれ持った認知の特性だからです。

しかし、自分の特性を周囲に理解してもらうことで、誤解を防ぐことはできます。「言い方がきつくなってしまうことがある」「話題の切り替えが苦手」「相手の表情を読み取るのが難しい」など、あらかじめ伝えておくことで、相手も配慮しやすくなります。

もちろん、伝えることに抵抗がある方もいるかもしれませんが、職場や人間関係において継続的なトラブルがあるならば、思い切って打ち明けることも1つの選択肢です。「指摘してくれたら直すよう努力します」と一言添えるだけで、相手の印象も大きく変わるでしょう。

おわりに

 ASDの人に見られる独特な話し方には、それぞれ理由があります。それは単に「クセ」や「個性」として済まされるものではなく、脳の働きや感覚の違いによって自然に現れる特性です。しかし、その特性が誤解や対人関係のトラブルにつながることもあるため、可能な範囲での工夫や配慮は役立ちます。

自分自身の話し方を客観的に見つめ、必要に応じて改善することは、自分を責めることではなく、よりスムーズな人間関係を築くための前向きなステップです。他者への理解と、自分自身への優しさの両方を持ちながら、自分らしいコミュニケーションの形を模索していきましょう。