ASDの正義感が強すぎる【大人の発達障害】

ASDの人の強い正義感:その特徴と対処法

ASD(自閉スペクトラム症)の特性を持つ方の中には、「正義感が強い」と言われる方が少なくありません。もちろん、正義感は誰にとっても大切な価値観ですが、ASDの人の正義感はしばしば「強すぎる」と受け取られてしまうことがあります。
それが原因で、職場や学校など、他者との関係においてトラブルを引き起こしてしまうこともあります。

この記事では、ASDの人に見られやすい正義感の特徴を取り上げながら、その背景や困りごと、そして周囲ができる対応や当事者自身が意識したいポイントについて、丁寧に解説していきます。

正義感の強さがもたらす困りごと

正義感の強さがもたらす困りごと

ASDの人は、物事を白黒ではっきりと捉える傾向があります。
そのため、「これは正しい」「これは間違っている」といった基準を非常に明確に持っており、ルールや規範を守ることに強いこだわりを持ちます。
こうした正義感が、周囲にとって「頼もしい」と思われることもありますが、行き過ぎると「融通がきかない」「他人に厳しすぎる」といった印象を与えることにもなりかねません。

次に、ASDの人に見られる「正義感の強さ」に関する具体的な特徴を3つに分けてご紹介します。

特徴①:ルール違反が許せない

ASDの人にとって、ルールや規則は非常に大切な存在です。
どんなに小さなことでも、「決まっていることは守るべき」と強く感じる傾向があります。
そのため、職場や学校などで、誰かがルールを守っていない場面に遭遇すると、強い違和感や怒りを覚えることがあります。

たとえば、職場で他の同僚が数分遅れて出勤したり、私語が多かったりする場面に、強く反応してしまうことがあります。
「それは規則違反なのに、なぜ誰も注意しないのか」と疑問を持ち、自分が代わりに注意してしまうこともあります。
その結果、注意された相手から反感を買ったり、職場内で孤立してしまうこともあるのです。

このように、「ルール違反を許せない」という思いが強すぎると、周囲の人間関係に摩擦を生む原因となってしまいます。

特徴②:間違いを見逃せない

ASDの人は、細かいことに気がつきやすく、情報の誤りや矛盾を見逃しません。
正確性を重視する姿勢は非常に素晴らしいことですが、それが他者との関係においては、思わぬ軋轢を生むことがあります。

たとえば、誰かが会話の中で間違った事実を述べたときに、「それは違います」と即座に指摘してしまうことがあります。
意図としては「誤情報を正したい」「正しい情報を共有したい」という善意であることが多いのですが、指摘された側は「恥をかかされた」「細かすぎる」と受け取ってしまうこともあるのです。

また、上司や先生といった「目上の人」に対しても遠慮なく訂正を入れてしまうことがあり、その結果、注意されたり評価が下がることもあります。

特徴③:理不尽や不公平が我慢できない

ASDの人は、公平性や平等性を非常に重視します。
そのため、何らかの場面で「不公平だ」と感じると、強く反応してしまう傾向があります。

たとえば、同じ仕事をしているのに評価が異なる、努力しているのに報われない、といった状況に納得がいかず、強い不満や怒りを感じることがあります。
また、他人が不当な扱いを受けているのを目撃したときにも、強く共感して「自分が何とかしなければ」と感じることもあります。

一見すると正義感にあふれた行動ですが、その思いが強すぎるあまり、感情が抑えきれずに周囲との衝突を招くこともあります。
「なぜみんなは黙っているのか」「なぜ不正を見逃すのか」と他人を責めてしまい、人間関係がぎくしゃくしてしまうことも少なくありません。

ASDの正義感の強さの背景にあるもの

ASDの正義感の強さの背景にあるもの

こうした強い正義感の背景には、ASD特有の認知の傾向があります。
ASDの人は、「曖昧さ」や「例外の扱い」が苦手で、ルールや論理を重視する傾向があります。
また、他人の意図や気持ちをくみ取るのが難しいこともあり、「本当は何を求められているのか」「これは許されるのか」といった“空気を読む”ことが苦手なため、ルールや原則に頼ることが多くなります。

そのため、「間違っていることは正すべき」「ルールを守らないのは悪いこと」と考えるのは、本人にとっては非常に自然なことであり、悪意があるわけではありません。

周囲の人ができる対応

ASDの人の強い正義感を否定するのではなく、「どのようにすればその気持ちを活かしながら、周囲と調和できるか」を一緒に考えていくことが大切です。

以下のような対応が有効です。

  • 「正義感自体は良いものである」と認めた上で、場に応じた伝え方を一緒に考える
  • 注意を促すべきとき・流しても良いときの“境界線”をわかりやすく説明する
  • トラブルになった場面を振り返り、感情の整理や気持ちの言語化をサポートする
  • 役割やルールが明確な場面で活躍してもらい、正義感が強みとして生かされるようにする

こうした対応は、ASDの人が「自分は悪くないのに怒られる」と感じずに済み、安心して過ごせる環境を作る助けになります。

本人が意識したいこと・できること

ASD当事者の方にとっても、「正義感があることは悪いことではない」という前提を大切にしていただきたいと思います。
その上で、「伝え方」や「タイミング」によって、同じことでも相手の受け取り方が変わるということを少しずつ意識できると、対人関係が楽になることがあります。

たとえば

  • 「これは本当に今すぐ指摘すべきことか?」と一呼吸おいてみる
  • 注意したいときは「私はこう思うのですが、どうでしょうか?」と柔らかい表現に変えてみる
  • 不公平や理不尽に感じたときは、信頼できる第三者に相談してみる

といった工夫が、トラブルを避けながら自分の気持ちを伝えることに繋がります。

また、ASDに詳しいカウンセラーや支援者と一緒に、コミュニケーションの練習をすることも効果的です。

おわりに:正義感は“強み”にもなる

ASDの人の「強い正義感」は、ときに誤解されたり、摩擦を生んだりすることがあります。
しかし、それは「真面目さ」「誠実さ」「正確さ」といった素晴らしい特性の裏返しでもあります。

大切なのは、その正義感を否定するのではなく、「どうすればうまく活かせるか」を考えていくことです。周囲の理解と、本人の工夫が重なったとき、正義感は人との信頼関係を築く“力”にもなります。

自分らしさを大切にしながら、少しずつ社会の中で心地よく生きていける道を探っていけたら
――この記事がその一助になれば幸いです。