発達障害のある女性が、恋愛に関わることで深く悩み、うつのような症状を感じてしまうことは、実は少なくありません。恋愛は人生の中でも感情の振れ幅が大きくなりやすい経験のひとつ。とくに発達障害の特性を持つ女性にとって、恋愛関係はさまざまな難しさと向き合う場面でもあります。
本記事では、「なぜ恋愛でうつのような状態になってしまうのか」、その背景にある特性や社会的な要因を考えながら、「心を守るためにできる対策」について丁寧に解説していきます。
発達障害(主にADHDやASD)のある女性が恋愛でつまずきやすい背景には、いくつかの要因が重なっています。
1. 恋愛は最も複雑な人間関係
恋愛関係は、仕事や友人関係と違い、「感情のやりとり」と「現実的な協力」の両方が必要になります。
仕事の関係であれば、成果を出すための協力関係であり、個人的な感情の深いつながりは求められません。友人関係であれば、感情的なつながりは大切ですが、生活や家事を共にするわけではないため、現実的な協力はあまり必要とされません。
一方で恋愛は、感情面の深いつながりと現実的な協力(家事や将来設計など)という二重の関係性を求められることが多く、これが発達障害のある女性にとっては大きな負担になることがあります。
2. 「女性らしさ」への期待
恋愛関係の中で、女性にはしばしば「気配り」や「共感力」、「柔らかなふるまい」など、いわゆる「女性らしさ」が期待されます。しかし、ASDの特性をもつ女性は、感覚過敏や興味の偏り、相手の気持ちをくみ取ることの難しさなどによって、こうした期待に応えることが難しいことがあります。
「自分らしくいると嫌われるのでは」という不安を抱きながら、「相手に合わせよう」と無理を重ねてしまうと、心が疲れてしまうのです。
3. 距離感とコミュニケーションの難しさ
発達障害のある人は、物理的・心理的な距離のとり方が独特であったり、暗黙の了解や曖昧な表現を理解することが苦手な傾向があります。相手の気持ちを「字面通り」に受け取ってしまうことで、すれ違いが起きやすく、それが関係性のトラブルやストレスにつながります。
また、自分の興味関心を優先しすぎてしまったり、逆に相手の価値観に合わせようとしすぎて疲れてしまうなど、「関わり方のバランス」が難しいことも多いのです。
恋愛は、人間関係の中でも特に感情が大きく動く分野です。真面目で一途な人ほど、恋愛がうまくいかないときに心に大きなダメージを受けやすく、いわゆる「恋愛うつ」や「失恋うつ」のような状態になることがあります。
発達障害のある女性は、過去の失敗経験から自己肯定感が低くなっていることもあり、「自分には恋愛ができない」「やっぱり私はダメだ」と自分を責めてしまいがちです。その結果として、うつ症状が表れることもあります。
とくに女性の場合、発達障害の二次障害として「うつ病」や「不安障害」などを発症するリスクが男性よりも高いという報告もあります。恋愛の悩みが心の健康に直結してしまうことは、決して珍しいことではないのです。

心を守りながら恋愛を楽しむために、発達障害のある女性が意識したい対策を4つご紹介します。
1. お互いの考えや価値観をしっかり話し合う
「言わなくてもわかるでしょ」という暗黙の了解は、発達障害のある人にとって大きなハードルです。だからこそ、関係を築くうえでは「たくさん話すこと」が重要です。
たとえば、家事の分担や生活のルールなどは、曖昧にせずルール化することで負担が軽くなる場合もあります。ルールがあるほうが安心できる、という人は少なくありません。
2. 完全に同じ価値観の人はいないと理解する
恋愛においては、「自分と同じ価値観を持つ人」を求めたくなるものですが、実際にはまったく同じ価値観を持つ人はいません。お互いの考え方に違いがあるのは当然であり、折り合いをつけたり、妥協したりすることも必要です。
「一方的に合わせる関係」や「一方的に求める関係」は、どちらも長くは続きません。お互いの中間点を見つけることが、心地よい恋愛関係のヒントになります。
3. 恋愛以外にも大切なものを持つ
恋愛が人生のすべてになってしまうと、関係がうまくいかなくなったときに、心が大きく揺らいでしまいます。とくに発達障害のある女性は一途になりやすく、恋愛に対する依存度が高くなりがちです。
だからこそ、「自分にとっての拠り所」を恋愛以外にも持つことが大切です。趣味や仕事、友人、自己表現の手段など、さまざまな安心の場所を増やしておくことで、心の支えが分散され、恋愛に過度に依存しにくくなります。

4. 適切な距離感を意識する
恋愛関係では、物理的・心理的な距離感がとても重要です。とくに出会って間もない段階でのスキンシップや踏み込みすぎた関係は、トラブルのもとになることもあります。
一般的に、友人関係の適切な距離は約120cmといわれています。恋愛でも、心の距離が縮まる前に身体的距離を縮めすぎないように注意することが大切です。不安な場合は、信頼できる同性の友人にアドバイスをもらうのもひとつの方法です。
恋愛で心がつらくなったときは、専門家に相談を
恋愛が原因で心の不調を感じているとき、「これくらい我慢しなきゃ」と自分を追い込んでしまうのは危険です。うつ症状が続いたり、「自分が悪い」と強く思い込んでしまう場合は、早めにメンタルクリニックやカウンセラーに相談することをおすすめします。
恋愛の悩みは決して「甘え」ではありません。発達障害のある女性が、恋愛でつらさを感じるのは、とても自然なことです。
恋愛は本来、幸せな気持ちや安心感をもたらしてくれるものですが、関係がこじれたり、自分を無理に変えようとしすぎると、心の負担となってしまうこともあります。
発達障害のある女性にとって、恋愛は少し難しさを伴うものかもしれません。でも、工夫や理解を重ねることで、自分を守りながら関係を築いていくことは可能です。
あなた自身の心の声を大切にしながら、無理のない形で人との関係を紡いでいけますように。