〜ストレスを抱えやすい理由と向き合い方〜
発達障害を抱える人にとって、日々の仕事や人間関係は、思っている以上に多くのストレス要因に満ちています。周囲と同じように働こうと努力しても、うまくいかずに自己肯定感を失ったり、限界まで頑張って心や体を壊してしまったりするケースも少なくありません。
この記事では、「なぜ発達障害のある人がストレスを抱えやすいのか」、そして「限界のサインとして現れやすい具体的な症状」を7つ紹介しながら、どのように対処していくべきかを丁寧に解説していきます。
発達障害には、ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)などがあります。これらの特性によって、職場での適応が難しくなる場面が多く見られます。その理由について、具体的に見ていきましょう。
1. コミュニケーションが苦手
ASDやADHDの人にとって、「空気を読む」「相手の意図を察する」「自分の気持ちをうまく言語化する」といったスキルが困難であることがあります。その結果、相手とすれ違いが生じたり、誤解されたりして、人間関係がぎくしゃくしてしまうことがあります。
特に職場では、あいまいな指示や「察して行動すること」が求められることも多く、これが日々のストレスの蓄積につながります。
2. ミスが多い
注意力のコントロールが難しいADHDの人は、仕事でうっかりミスを重ねやすい傾向があります。どれだけ頑張ってもケアレスミスをしてしまう自分に嫌気が差し、自己否定感に陥ることも少なくありません。
その結果、「自分はダメだ」と思い込み、心が疲れきってしまい、うつ病などの二次障害へとつながるリスクも高まります。
3. 感覚過敏
ASDの特性の一つに「感覚過敏」があります。これは、光・音・におい・人の声・衣服の肌触りなど、五感に関わる刺激を人一倍強く感じてしまう状態です。
オフィスの照明や雑音、人の話し声など、周囲の環境がストレスの要因となり、仕事に集中しづらくなるばかりか、疲労や不快感が積み重なって心身のバランスを崩してしまうこともあります。

4. 過剰適応(カモフラージュ)
「周囲に合わせなくては」「普通に見られなければ」と無意識に頑張りすぎてしまうこともあります。これが“過剰適応”です。
自分の本音や限界を抑え込み、無理をして周囲と同調しようとすると、一時的にはうまくいっているように見えるかもしれません。しかし、それは自分を削るような努力であり、長期的には大きなストレスとなって心と体に負荷がかかります。
では、発達障害を持つ人が「もう限界かもしれない」と気づくためには、どのようなサインに注目すればいいのでしょうか?以下に7つの代表的なサインを紹介します。
1. 気分の落ち込みが続く
最近、笑顔が減った。自分の好きなことにも関心が持てない。こうした気分の落ち込みが長引く場合は、心がSOSを出しているかもしれません。感情が鈍くなり、「何をしても楽しくない」という感覚が続く場合は、専門的なサポートが必要です。
2. 仕事が手につかない
以前はこなせていた仕事に集中できない、手が動かない、自分のパフォーマンスが著しく低下していると感じるようになったら要注意です。「手を抜いている」と誤解されやすい一方で、本人は非常に苦しんでいる状態です。
3. 夜、眠れない
ストレスが限界に達すると、睡眠にも影響が出てきます。なかなか寝つけない、夜中に何度も目が覚める、朝早く目が覚めるなどの不眠が続くと、心身の回復が妨げられ、悪循環に陥ってしまいます。

4. 食欲がない/急激な体重減少
食欲が落ちたり、何を食べても味がしないと感じたりすることもサインの一つです。短期間で体重が大きく減るような場合は、身体のエネルギーが極端に不足している可能性があり、心身ともに危険な状態と言えます。
5. 身体的な不調がある
原因不明の頭痛や腹痛、関節痛、動悸、極端な倦怠感など、身体に異変が現れることもあります。これらは、ストレスが体に出ているサインであり、「体がもう限界だ」と訴えている証でもあります。
6. 希死念慮がある
「消えてしまいたい」「いなくなりたい」といった気持ちが出てくることもあります。そうした感情が湧いてきた時は、自分だけで抱え込まず、必ず誰かに相談することが大切です。命に関わるサインであるため、ためらわずに医療機関に連絡しましょう。
7. 周囲から「休んだほうがいい」と言われる
自分自身では「まだ大丈夫」と思っていても、周囲の人たちが「最近疲れてるよ」「無理しすぎじゃない?」と心配してくれるときは、自分の状態を客観的に見つめるチャンスです。他人の目から見て異変があるなら、それは本当に限界が近いという証拠です。
自分で「もう限界かもしれない」と思ったとき、または周囲からそのように言われたときには、以下のような対応を検討しましょう。
● 医療機関や第三者に相談する
まずは信頼できる家族や友人、支援者などに自分の気持ちを話してみましょう。そして、できれば精神科や心療内科などの専門医を受診し、正しい評価と支援を受けることが大切です。医師によっては発達障害特性に合った配慮や支援制度についてアドバイスをしてくれることもあります。
● 休職するという選択肢も
限界まで頑張り続けることは、自分を追い詰めることにつながります。必要に応じて、一定期間仕事を休む「休職」という選択肢もあります。心身を整える時間を確保することで、回復の糸口が見えてくることもあります。
また、休職中に福祉サービスや就労支援を利用することで、働き方や職場の環境を見直すきっかけにもなるでしょう。
発達障害の特性は、その人の個性であり、生きづらさの原因は本人の努力不足ではありません。社会や環境の側に理解が足りないこと、配慮が十分でないことも、大きなストレス要因です。
どうか一人で抱え込まず、「助けて」と声をあげることを恐れないでください。限界のサインに気づいたときこそ、自分を大切にする第一歩です。