発達障害のある人は、周囲から見て「服装に違和感がある」と感じられることが珍しくありません。これは本人の性格やマナーの問題ではなく、発達障害の特性が影響しているケースが多くあります。本記事では、発達障害の人に見られる服装の特徴、そこから生じやすい困りごと、そしてその対策について解説します。
服装に表れやすい発達障害の特徴
こだわりによる偏りや独特さ
発達障害、特にASD(自閉スペクトラム症)のある人は、「限定された興味」や「同一性の保持」といった特性を持っていることがあります。これにより、服装に対する関心が薄くなったり、逆に強いこだわりが表れたりする傾向があります。
たとえば、同じTシャツや帽子を毎日のように身に着けるケースや、特定のブランドや色の服以外を着ることを拒むようなケースも見られます。本人にとっては「いつもの格好」が心地よく、変化を嫌うためです。このような服装の偏りは、周囲には「独特」あるいは「ワンパターン」と映ることがありますが、本人にとっては安心感や落ち着きを得る手段でもあります。
見た目に対する無関心
服装にあまり関心がなく、「他人からどう見られるか」を意識しない人もいます。ASDの人の中には、服装を「自分を表現するもの」「場にふさわしい格好」といった意味合いで捉えていない人も少なくありません。結果として、TPOに合わない格好をしてしまうことがあります。
また、他人からの評価や視線を気にすることが少なく、シャツがヨレていたり、スニーカーが汚れていたりしても特に問題を感じないこともあります。色の組み合わせや全体のコーディネートについても無頓着な場合があり、周囲からは「だらしない」「場に合っていない」と思われる可能性が出てきます。
感覚の過敏さと鈍感さ
発達障害には「感覚過敏」や「感覚鈍麻」といった感覚の特性が伴うことがあります。これが服装の選び方にも影響を及ぼします。
感覚過敏がある場合、特定の素材が肌に触れるだけで不快に感じることがあります。そのため、コットン素材しか着られなかったり、チクチクするウール素材を嫌がったりと、着られる服が限られることになります。
一方で、感覚鈍麻により気温の変化を感じ取りにくい場合、季節に合わない服装を選んでしまうことがあります。たとえば、寒い冬でも半袖で外出する、夏でも厚手の上着を着ているなど、周囲から見ると季節感のない服装に映ることがあります。
服装が原因で起きやすい困りごと
他人からの評価が下がる
服装に無頓着であることやTPOに合わない服装をしてしまうことにより、職場や社会生活の中で誤解を受けることがあります。たとえば、就職活動の面接でヨレたシャツや汚れたスーツで臨んでしまえば、「だらしない」「準備ができていない」という印象を与えかねません。
体調不良の原因になることも
感覚鈍麻により、寒さや暑さを正確に感じ取りにくい場合、季節に合わない服装を選びやすくなります。たとえば、寒い日にも関わらず薄着で外出してしまい、体が冷え切ってしまうようなことが起こると、風邪をひいたり体調を崩したりする可能性が高まります。
これは本人が「寒くない」と感じていたとしても、実際には体が冷えているという状態が起こり得るためです。体調管理の一環として、気温や天候に応じた服装を意識することが重要になります。
おしゃれができない・しづらい

感覚過敏によって着られる素材が限定される場合、選べる服が限られ、おしゃれの幅が狭くなってしまいます。さらに、ファッションに興味がない、他人の目が気にならないという性質が重なると、流行や個性を楽しむという観点から服装を考えることが難しくなってしまいます。
自分に似合う服や色を選ぶという感覚が育ちづらく、結果として「おしゃれをしたいけどできない」と感じる人もいます。見た目の面での自信のなさにつながりやすく、自己肯定感にも影響を与える可能性があります。
改善のヒントと実践的な工夫
服装の問題は、単に「センス」や「気遣い」の問題ではなく、認知のスタイルや感覚の違いによるものです。そのため、無理なく、現実的に取り入れられる方法で対策していくことが重要です。
1. ローテーションやパターンを決めておく
日々の服選びを楽にするためには、あらかじめ服のローテーションやパターンを決めておくのが有効です。たとえば、「月曜日はグレーのシャツと黒のパンツ」「火曜日は白のポロシャツとジーンズ」といったように、曜日ごとに組み合わせを固定しておくと、迷いが減り、毎朝のストレスが軽くなります。
同じデザインの服を複数枚用意しておくことも、清潔感を保ちつつ安心感を得る方法として有効です。周囲から見たときにも「同じ服をずっと着ている」という印象を与えにくくなります。
2. 身だしなみチェックリストを作る

服装に関する判断が難しい場合には、出かける前に確認できる「チェックリスト」を作っておくと効果的です。
以下のような項目をリスト化して、玄関など目につく場所に貼っておくと便利です。
チェックリストを習慣にすることで、自分の服装を客観的に確認する力が育っていきます。
3. 気温に合わせて服を決める
感覚の特性により気温を感じにくい人にとっては、「体感」ではなく「数字」で判断することが重要です。スマートフォンの天気予報などで気温を確認し、その日の服装を決める基準を決めておくと便利です。
たとえば、
といったように、あらかじめ「気温ごとの服装ルール」を明文化しておけば、判断に迷わずに済みます。
また、必要に応じて脱ぎ着できるカーディガンやジャケットを常に携帯しておくと、急な気温変化にも対応しやすくなります。
まとめ
発達障害のある人の服装には、特性ゆえの偏りや無頓着さが表れやすい一方で、それが本人の社会生活や健康に悪影響を及ぼすこともあります。しかし、理解と工夫、そして周囲からの支援によって、こうした課題は改善することが可能です。本人が無理をするのではなく、環境や支援体制を整えることで、発達障害のある人がより自分らしく、安心して社会の中で暮らしていけるようになります。服装の問題も、支援のひとつの入り口として捉えることが大切です。