「自分の言っていることは正しいはずなのに、なぜか誰も理解してくれない」
そんな思いを抱えて日々を過ごしている方はいませんか?
そのような疑問を抱く人の中には、ASD(自閉スペクトラム症)の特性を持ち、なおかつ「天才型」とも呼ばれるギフテッドな才能を併せ持つ方が少なくありません。
本稿では、「ASDの天才型がなぜ職場で孤立しがちなのか」について、ギフテッドの定義からその特徴、そして仕事において困難に感じる理由までを分かりやすく解説します。

「ギフテッド」とは、知能や特定の才能が極めて高い人を指す言葉で、正式な医学用語ではありませんが、一般的にはIQが概ね130以上の人をそのように呼ぶことが多いです。
日本人の平均IQが約106、東京大学の学生でも平均120前後であることを考えると、IQ130という水準がいかに突出しているかが分かります。
ギフテッドは単にIQが高いだけでなく、特定分野においてずば抜けた才能を発揮することも特徴とされています。これを示す理論の一つに「多重知能理論」があります。
これはハーバード大学のハワード・ガードナー教授が提唱したもので、人間の知能は8つの領域に分かれるとされています。
これらの中で一部に極めて秀でている場合、「ギフテッド」とみなされることがあります。
「2E(Twice Exceptional)」という言葉は、「二重に特別な存在」を意味し、ギフテッドでありながら発達障害を併せ持つ人を指します。
中でもASDとギフテッドの組み合わせはしばしば見られ、そのような人々は驚異的な集中力や知識力を誇る一方で、対人関係や柔軟性に困難を抱える傾向があります。
彼らは自らの才能を十分に発揮できる場面が限られており、結果として孤立してしまうケースが多いのです。

ASDの方は興味の幅が狭く、特定のテーマに対する関心が非常に強いという特徴があります。
その関心分野に対しては徹底的に調べ尽くし、深い知識やスキルを獲得する力を持っています。
音楽の天才・バッハやベートーヴェン、現代のビル・ゲイツもその一例として挙げられることがあります。
関心のある分野においては、情報の吸収が非常に早く、記憶力がずば抜けている場合があります。
学業でも他の子どもたちに比べて理解や暗記のスピードが速く、飛び級するような例も海外では見られます。
ASDの特性として、論理的・合理的な思考を好む傾向があります。
物事を感情ではなく、事実と根拠に基づいて考えるため、ビジネスなどでは冷静な分析力として活かされることもあります。
最も代表的な困難のひとつが、対人関係における柔軟性の欠如です。
曖昧な表現や空気を読むといった行動が苦手であり、形式的な挨拶や雑談といった「意味が見えにくい」行動には強い苦手意識を持つこともあります。

挨拶や雑談など、一般的には「円滑な人間関係に必要」とされる行動の意義が理解できず、実行しないことが多いため、結果的に「感じが悪い」「協調性がない」と見なされがちです。
また、知的レベルや価値観が合う人が少ないため、会話が成立しづらいという背景もあります。
2Eの人は特定の分野には突出した才能を発揮しますが、それ以外の分野には著しい苦手意識を持つこともあります。
そのため、興味のない業務や不得意な作業を続けていると、能力が発揮できず、「能力が低い」と誤解されてしまうこともあるのです。
細部までこだわり、妥協できない性格は、納期や業務スピードが重視される職場ではトラブルの原因にもなります。
自分の理想を追い求めるあまり、時間配分やチームプレーが難しくなることがあり、結果的に評価が下がってしまうこともあるでしょう。
ASDの天才型の方が社会で生き生きと活躍するためには、まず自分の特性を理解し、自分に合った仕事や職場環境を見つけることが重要です。
「得意」を活かし、「苦手」を避ける働き方を模索することで、能力を最大限に発揮することができるでしょう。
時には「就労移行支援」といった制度を利用することも一つの選択肢です。
支援を受けながら、少しずつ自分に合った働き方を見つけていくことも可能です。
ASDの天才型、すなわち「ギフテッド2E」の方々は、並外れた才能を持つ一方で、社会との接点において多くの困難を抱えています。
その才能を周囲が正しく理解し、本人も自分を知ることができれば、孤立ではなく「突出した強み」として社会で活躍する道が必ず見つかるはずです。