学歴や職歴に申し分がなく、仕事熱心で誠実な印象を持たれる男性。しかし、いざ結婚生活が始まると、どこか「普通」とは違う違和感を覚える妻も少なくありません。たとえば、夫が自分の話ばかりをして会話が成立しなかったり、育児や家事に協力的でなかったりする場合、戸惑いや孤独を感じることがあるでしょう。
決して夫が冷たいわけではなく、愛情がないわけでもない。それでも、妻の気持ちに寄り添おうとする姿勢が見えない…。このようなケースでは、夫がアスペルガー症候群(現在は「自閉スペクトラム症(ASD)」と呼ばれることが多い)の特性を持っている可能性があります。
アスペルガー症候群は、発達障害の一つで、相手の気持ちや状況を察することが苦手な傾向があります。子どもの頃は目立った困りごとが見られず、大人になってから、特に結婚や家庭生活の中で初めて問題が浮き彫りになるケースも少なくありません。
本記事では、夫にアスペルガー症候群の特性が見られる場合に気づきやすい5つのサインと、その背景にある心理、そして夫婦関係をより良くするためのヒントをご紹介します。

アスペルガー症候群の特性を持つ人は、他人の気持ちを想像することが苦手です。たとえば、妻が風邪で寝込んでいたとしても、夫は普段通りに仕事に出かけてしまい、何の声かけもしないことがあります。これは「冷たい」わけではなく、相手の状態に気づく力が弱いためです。
また、妻が「夕食の準備をお願い」と頼んでも、自分の分しか作らないことがあります。それは「意地悪」なのではなく、「言われたことだけを忠実にこなす」という特性からきている場合もあります。裏を読んだり、相手の状況を想像して行動することが難しいため、具体的な指示がなければ動けないのです。

アスペルガー症候群の傾向を持つ人は、自分の興味のある話題になると一方的に話し続けることが多く、相手の反応に気づかず話し続けてしまうことがあります。
そのため、妻はただ聞き役に回ることが増え、自分の思いや悩みを話す機会を失いがちです。時には、妻が何かを伝えようとしても、夫がすぐに否定したり、自分の考えを押し通そうとする場合もあるため、話し合いが成り立ちにくくなります。
このような場合は、伝えたいことを端的かつ具体的に伝えることが大切です。また、会話ではなく、メモやLINEなど文章で伝えると理解が深まりやすいという特徴もあります。夫が感情の変化やトーンの違いを読み取るのが苦手なことを踏まえ、言葉選びも工夫しましょう。

アスペルガー症候群の人は、自分で決めたルールや習慣に強い安心感を持ちます。たとえば、「毎朝同じ朝食を食べる」「決まった順番で行動する」など、自分なりのルールに従って生活することで安定を保っているのです。
そのため、突然の予定変更や予想外の出来事には強いストレスを感じやすく、時にはパニックに近い反応を見せることもあります。家族にとってそのルールが不都合である場合でも、夫には「変える」という発想自体が受け入れがたいこともあります。
このような場合、ルールを一方的に否定するのではなく、冷静に話し合いを重ね、少しずつ変化に慣れてもらうことが大切です。「家族の時間を優先したいから、週末の数時間だけスマホを控えてほしい」といった具体的な提案をすると、理解されやすくなります。

アスペルガー症候群の特性として、音や光、臭いなどに対する感覚が非常に敏感であることがあります。たとえば、他の人が気にならないようなドアの音や電子音に過剰に反応したり、強い光や匂いに耐えられなかったりすることがあります。
また、肌の感覚にも過敏さがある場合、妻がスキンシップを取ろうとしても不快に感じてしまい、距離を取ってしまうこともあります。これは「愛情がない」わけではなく、身体的な感覚の違いによるものです。
感覚過敏は無理に克服させようとすると逆効果です。相手が落ち着ける環境を整えること、そして「今は疲れているからそっとしておいてほしい」といった本人の意思を尊重することで、関係の悪化を防ぐことができます。

子どもは予測不可能な行動をすることが多く、アスペルガー症候群の人にとっては、思い通りにならない子育てに強いストレスを感じやすい傾向があります。その結果、子どもに対して過剰に怒ってしまったり、家庭に居場所を感じられず帰宅を避けるようになることもあります。
妻としては「なぜ手伝ってくれないの?」と不満や悲しみが募りますが、夫自身も「どう接すればよいのか分からない」と感じている可能性があります。まずは、「一緒に子どもと遊ぶ10分から始めてみよう」といった小さな成功体験を積ませることが有効です。

アスペルガー症候群の夫との生活に悩み、妻自身がうつ病や不安障害などを抱えることがあります。これを「カサンドラ症候群」と呼びます。精神的なつながりが感じられない孤独感や無力感が積み重なり、妻の心が限界を迎えてしまうのです。
医療機関を受診した際に、医師から「夫に発達特性があるのではないか」と指摘され、初めて気づくケースもあります。夫が自分の状態を理解し、必要に応じて支援や治療を受けることで、妻の負担は大きく軽減されます。しかし、夫を病院に連れて行くのは容易ではありません。大人のアスペルガー症候群は比較的新しい概念であり、診断基準も明確ではないため、医師によって判断が分かれることもあるからです。
アスペルガー症候群の夫との生活は、時にすれ違いや衝突を引き起こします。しかし、彼らには誠実で裏表がなく、嘘をついたり浮気をしたりしないという長所もあります。感情的な共感が難しいとしても、知識として相手の気持ちを学ぶことは可能です。
大切なのは、夫婦がお互いの特性を理解し、一方的な努力ではなく「協力して歩み寄る姿勢」を持つことです。小さな工夫や対話を積み重ねていくことで、少しずつ家庭の状況は改善されていくでしょう。
発達特性を持つ夫との暮らしに悩む方が、自分一人で抱え込まず、必要なサポートを受けながらよりよい家庭を築いていけるよう、本記事が少しでも力になれば幸いです。