発達障害の方が「断れない」場面とその対処法 〜飲み会や仕事の上手な断り方〜
現代の社会生活において、人との付き合いや職場でのコミュニケーションは避けて通れないものです。しかし、その中には「本当は行きたくない」「やりたくない」と感じていても、なかなかそれを口に出して断ることができないという悩みを抱えている方も多くいらっしゃいます。特に、発達障害のある方にとってはこの「断る」という行為が非常に難しいものであることが少なくありません。
今回は、「発達障害の方が断れない理由」と「上手な断り方」について、具体的な場面を交えて解説していきたいと思います。
発達障害のある方が特に断りにくいと感じる場面を2つご紹介します。
「お疲れ様!今日みんなで飲みに行くけど、一緒にどう?」
こういった誘いに対して、本当は断りたいのに断れない。そんな経験をされたことはありませんか?
発達障害のある方の中には、集団行動や複数人での会話が苦手な方が多くいます。飲み会やランチといった集団の場では、周囲に気を遣いすぎてしまい、帰宅する頃にはどっと疲れを感じてしまうこともあります。実際は、家に帰って自分の趣味に没頭したい、静かに一人で過ごすことでリフレッシュしたいと考えている方も少なくありません。
また、昼休みも休憩にならず、雑談のストレスや周囲への気配りで疲れてしまう方も多いです。本来であれば、仮眠を取ったり一人でリラックスする時間に充てたいのに、義務感から参加してしまう。その結果、ストレスが蓄積し、心身の不調を引き起こすケースもあります。

もう一つのよくあるケースが「仕事を断れない」というものです。すでに多くの業務を抱えていても、誰かに「この仕事、お願いできる?」と頼まれると、つい「はい、わかりました」と引き受けてしまう方もいます。
その結果、残業が続いたり、休日出勤になったりと負担がどんどん増えてしまい、疲労が爆発してしまうこともあります。最悪の場合、心身のバランスを崩し、出社できなくなるような深刻な状態に至ることもあります。
なぜ、発達障害のある方は「断る」ことに難しさを感じるのでしょうか。大きく分けて、以下の3つの理由が考えられます。

発達障害のある方の中には、過去の経験から人間関係で傷ついたり、失敗を繰り返してきたという方も多いです。そのため、他人に嫌われたくない、認められたいという思いが強く、相手に合わせようとしすぎる傾向があります。
その結果、自分の気持ちや都合を後回しにしてまで相手に合わせてしまう「過剰適応」の状態になってしまうのです。
特にASD(自閉スペクトラム症)の受動型傾向が強い方に見られるのが、「流されやすい」という特性です。自分の意見を言語化するのが苦手だったり、明確な意志を持ちにくい場合、他人の提案にそのまま従ってしまうことが多くなります。
そのため、頼まれごとを断れずに引き受け続けてしまい、気がつけば自分だけが負担を多く抱えていた、ということになりやすいのです。
「断る」という判断は、自分のスケジュールや仕事量を把握していることが前提になります。しかし、タスク管理が苦手な場合、目の前の仕事の量や優先順位を把握できておらず、「このくらいならできるだろう」と軽く考えて引き受けてしまうことがあります。
そして後になって「これは間に合わない」「無理だった」と気づき、自己嫌悪に陥るケースも少なくありません。
それでは、断ることが苦手な方にとって、どのようにすれば無理なく、かつ円滑に断ることができるのでしょうか。以下の3つの方法をおすすめします。
「飲み会に行きたくない」「○○さんが苦手だから行かない」とストレートに伝えるのは相手も傷つけてしまいかねませんし、自分も言いにくいですよね。
たとえば、「お酒が体質的に合わなくて」「健康のため控えている」などと事前に周囲に伝えておくことで、誘いそのものが減るというメリットがあります。
また、忘年会などの節目だけは顔を出すなど、自分なりにルールを決めて「最低限の参加」にとどめる工夫も良い方法です。
断るときは、「感謝」「謝罪」「理由」「お断り」をワンセットで伝えると、相手に不快感を与えにくくなります。
例:
「お誘いいただきありがとうございます。ただ、今日は私用がありまして、参加が難しいです。本当に申し訳ありません。皆さんで楽しい時間を過ごしてくださいね。」
このような形で、丁寧に伝えることで人間関係を損なわずに断ることができます。

仕事の依頼を受けた場合、「はい、わかりました」とすぐに引き受けるのではなく、以下のように質問することで自分のキャパシティを守ることができます。
このように確認することで、相手も自分の状況を把握しやすくなり、タスクの調整が可能になります。
人間関係を円滑に保つことは社会生活を送るうえで大切な要素ですが、自分の体調や気持ちを無視してまで周囲に合わせる必要はありません。断ることは決して「わがまま」ではなく、長く健康的に社会生活を送るための大切なスキルです。
特に発達障害のある方は、自分のペースやキャパシティを守るためにも、「断り方」を工夫しながら、少しずつでも自分の意思を伝えていく練習をしていきましょう。