
近年、「毒親(どくおや)」という言葉が一般にも広く知られるようになってきました。毒親とは、子どもに対して過度な干渉や否定的な言動を繰り返し、子どもの自立や精神的な健康を損なうような親のことを指します。ただし、多くの毒親は悪意をもってそうした行動をしているわけではなく、むしろ「子どものため」と思って行動していることが少なくありません。
この記事では、特に発達障害のある人にとっての「毒親」の特徴に焦点を当て、どのような点が問題となるのか、そして対策として取りうる行動について丁寧に解説していきます。
発達障害のある人にとって、親との関係は特に重要です。なぜなら、発達障害の特性によって生活や学習、人間関係において困難を感じやすく、そのサポートが必要不可欠となるからです。しかし、親自身が定型発達(一般的な発達)であっても発達障害の知識や理解が不十分な場合、あるいは親自身も発達障害の特性を抱えている場合、子どもとの関係が複雑化し、無意識のうちに毒親的な振る舞いになってしまうことがあります。

今回は、虐待やネグレクトといった明らかな問題行動ではなく、一見「普通」「子どものため」と思われがちな行動が、結果として毒親的になってしまうケースに焦点を当てて解説します。
1. 過保護すぎる

子どもを思うあまり、必要以上に干渉するタイプの親は少なくありません。特に発達障害のある子どもに対しては、「自分で判断できないかもしれない」「失敗するかもしれない」という不安から、行き過ぎた保護をしてしまうことがあります。
たとえば、大人になった子どもに対しても頻繁に電話をかけて外出先を確認したり、職場にまで連絡を取ってしまうといったケースです。本人の判断能力に問題がある場合は、重要な局面で周囲の大人や支援員が適切に介入することは大切ですが、日常の意思決定や行動にまで干渉するのは逆効果です。本人が自分で考え、選択し、経験から学ぶ機会を奪ってしまうことになり、結果として自立を阻害します。
2. 障害を受け入れない

発達障害の診断を受けた際に、それを受け入れられないのは本人だけでなく、親にとっても同様のことが起こり得ます。特に子どもの障害を認めたくない親は、「うちの子に限ってそんなことはない」と現実を否定したり、必要な支援を受けさせないことがあります。
しかし、発達障害は早期からの理解と支援が非常に重要です。親が障害を受け入れず、特性への対応を怠ることで、子どもは適切な環境やサポートを受ける機会を失い、自己肯定感の低下や二次障害のリスクを高めてしまいます。子どもを「普通」に育てたいという気持ちは理解できますが、まずは現実を受け入れ、その子に合った方法で支援することが何よりも大切です。
3. 叱責が多く否定的

子どもがうまくいかなかった時に、感情的に怒ったり、責めたりする親もいます。もちろん時にはしつけや注意が必要な場面もありますが、日常的に叱責が多いと、子どもは自分に自信を持てなくなり、自己肯定感が著しく低下してしまいます。
「なんでそんなこともできないの?」「また失敗したの?」といった言葉は、子どもにとって大きなストレスとなり、特に発達障害のある子どもにとっては心に深く残る傷になります。否定的な言葉ばかりを受けて育った子どもは、大人になってからも「自分はダメだ」「どうせうまくいかない」といった思考パターンに陥りやすく、挑戦や前向きな行動をとるのが難しくなってしまいます。
4. 自由を制限しすぎる

毒親の特徴のひとつに、子どもの行動を極端に制限するというものがあります。「あの学校はダメ」「その会社はやめておきなさい」など、親の価値観を押しつける形で子どもの選択肢を狭めてしまうのです。
もちろん、子どもを心配する気持ちから口を出したくなることもあるでしょう。しかし、人生は子ども自身のものであり、自らの意思で選び、経験することが何より重要です。過度な制限は、子どもの自己決定力や自信を奪い、ストレスや反発を生み出します。大人になっても自由を制限するような親からは、可能な範囲で距離を取ることも必要です。
5. 必要以上に過小評価する

発達障害のある人は、確かに特定の分野や状況において苦手さを抱えることがあります。しかし、それは「何もできない」ということではありません。にもかかわらず、「あの子には無理だから」「できるわけない」といった先入観で子どもの可能性を否定してしまう親がいます。
本来であればチャレンジすることで成長できたはずの場面で、親の過小評価によってその機会が奪われてしまうのは非常に残念なことです。支援者や専門家が「やってみましょう」と背中を押しても、親がブレーキをかけてしまえば、本人は前に進むことができません。
1. 物理的に距離を取る

精神的な安定を得るためには、親と物理的に距離を取ることが有効な場合があります。たとえば、土日に家族との揉めごとが起こるたびにストレスを感じ、週明けに体調を崩すといった例もあります。
金銭的な面や生活力の面で課題はあるかもしれませんが、自立に向けたトレーニングを進めるためにも、一度実家を出て一人暮らしをしてみるというのは有効な手段です。親と適度な距離を保つことで、心身の安定を得られる人は少なくありません。
2. 親以外の信頼できる相談相手を見つける

親が相談相手として機能していない、あるいは価値観が合わないという場合、第三者の存在が大きな助けになります。兄弟や友人、支援者、あるいは専門の相談機関など、「この人なら信頼できる」と思える相手を見つけましょう。
他者の視点を得ることで、冷静な判断ができるようになり、親との関係の中で感じるモヤモヤや混乱を整理しやすくなります。
3. 親のせいにしすぎない

「親がもっと理解してくれていれば」「ちゃんと接してくれていれば」と思う気持ちは、誰にでもあるものです。しかし、すべてを親のせいにしてしまうと、自分自身の人生を主体的に生きることが難しくなってしまいます。
もちろん、いきなり前向きになれと言われても難しいのは承知の上です。それでも、自分が変えられることに目を向けて、小さな一歩を踏み出してみることが大切です。少しずつでも、自分の人生を自分の力でよりよい方向に進めていくことが、最終的には自分自身を救うことになります。

発達障害のある人にとって、親との関係はときに生きづらさの原因となることがあります。しかし、「親だから」「育ててくれたから」と無理に受け入れる必要はありません。大切なのは、自分の心と生活を守ることです。
毒親との関係に悩んでいる方は、まずは自分の気持ちを大切にし、信頼できる他者のサポートを得ながら、少しずつでも距離を取り、自立に向けて歩み出してみてください。それは決して「親を裏切ること」ではなく、「自分を大切にすること」なのです。