ASDの人は年齢と共に症状が悪化する!?【大人の発達障害】

自閉スペクトラム症(ASD)を持つ方の中には、「年齢とともに症状が悪化している気がする」「昔より生きづらくなった」と感じる方も少なくありません。ASDは先天的な発達特性であり、一般的に「治る」ことはないとされていますが、果たして年齢とともに本当に悪化するのでしょうか?また、仮に悪化するとしたら、その背景には何があるのでしょうか?

本記事では、ASDの症状が悪化する原因、悪化の具体例、その対策について、丁寧に解説していきます。

1. ASDの症状は年齢とともに悪化するのか

1. ASDの症状は年齢とともに悪化するのか

ASDは先天的な脳の特性であり、基本的には「加齢に伴って進行する病気」ではありません。ただし、人生経験や環境によって、症状が強く表面化するようになったり、対処が困難になったりすることがあります。つまり、医学的な意味での「悪化」とは少し異なり、「生きづらさが増していく」「周囲との摩擦が激しくなる」などの社会的・心理的な側面での困難が大きくなるケースがあるのです。

ここでは、ASDの症状が悪化したように感じられる主な原因として、以下の2点を挙げます。

① 二次障害による悪化

ASDの方は、生きづらさを感じやすく、社会の中で孤立しやすい傾向があります。そのため、うつ病や不安障害などの精神的な二次障害を引き起こすリスクが高いとされています。これらの二次障害は、集中力の低下や自己肯定感の低下を招き、もともとのASD特性をさらに強調してしまうことがあります。

たとえば、うつ病になると、もともと苦手だったマルチタスクがさらに困難になったり、人間関係のストレスに過敏に反応するようになったりします。こうした変化が、「ASDの症状が悪化した」と感じさせる要因となります。

② 年齢とともに周囲の許容が減る

子どものうちは、周囲の大人がある程度「特性」として受け入れてくれる場面も多く、多少の困りごとは許容される傾向にあります。
しかし、大人になると、社会性・自己管理・コミュニケーション力などが強く求められるようになります。その結果、子どもの頃は許された言動が、大人になると「非常識」「協調性がない」と見なされ、問題視されることがあります。

また、幼少期に適切な療育を受けられなかった場合や、いじめ・叱責など不適切な環境で育った場合には、自尊心の低下や人間不信が形成され、大人になってからの対人関係に大きな影響を与えることがあります。

2. ASD症状が「悪化」したように見える具体例

2. ASD症状が「悪化」したように見える具体例

次に、ASDの特性が年齢とともに目立つようになり、「悪化した」と感じられることがある具体的なケースを3つご紹介します。

① 感情コントロールができず、攻撃的になる

ASDの方には、感情の起伏が激しかったり、突発的に怒りを爆発させてしまったりする傾向が見られる場合があります。特に、子どものころに癇癪があった場合、それが大人になっても形を変えて残ってしまうことがあります。

例えば、職場でちょっとした注意に対して激しく怒ってしまう、強い言葉で反論してしまう、場合によっては物に当たってしまう…といった行動は、周囲との関係を悪化させる原因になります。
結果的に「協調性に欠ける人」「トラブルメーカー」と見なされ、職場での立場を失うことにもつながりかねません。

② 行動がエスカレートし、常にもめ事を抱える

中には、社会的なもめ事を絶えず抱えているASDの方も見受けられます。例えば、役所とトラブルを起こしていたり、会社を訴えようとしていたり、常に何かと戦っているような状態です。

もちろん、不当な扱いに対して声を上げること自体は大切です。
しかし、それが日常的・慢性的になると、本人にとっても大きなストレスとなり、周囲からも「ややこしい人」「距離を置きたい人」と思われてしまいます。

③ こだわりが強く、指示を受け入れられない

ASDの特性として、自分なりのやり方やこだわりが強い傾向があります。これはある意味では「強み」にもなり得ますが、組織の中では柔軟性が求められます。

上司の指示に従えない、チームのやり方に合わせられない、自分のルールを曲げられない、といった状態が続くと、やがて「協調性がない」「扱いにくい」と判断され、疎外される可能性も高くなります。

3. ASDの症状を「悪化」させないための対策3選

3. ASDの症状を「悪化」させないための対策3選

では、ASDの症状が悪化しないようにするためには、どのような対策があるのでしょうか?ここでは、今からでも取り組める実践的な方法を3つご紹介します。

① 自分に合った環境で働く

最も重要なのは、自分の特性を理解し、それに合った職場環境を選ぶことです。障害に対する理解がある会社、働き方に柔軟性のある職場を選ぶことで、無理なく働き続けることが可能になります。

特に、定型発達の人に合わせすぎて無理をすると、ストレスが蓄積し、最終的に二次障害を引き起こすリスクが高まります。
無理をせず、少しでも「安心できる」「自分らしくいられる」環境を探すことが大切です。

② 信頼できる相談相手を持つ

自分一人で悩みを抱え込まないように、信頼できる相談相手を持つことも大切です。家族、友人、支援員、カウンセラーなど、自分のことを理解してくれる人が一人でもいれば、心の負担はぐっと軽くなります。

特に、カッとなってしまったときや、行動に迷ったとき、「それはやめた方がいいよ」と冷静に助言してくれる人がいると、トラブルを未然に防ぐブレーキ役になります。

③ 自分にとっての「メリット・デメリット」を冷静に考える

ASDの方は論理的思考が得意な方も多いですが、時として「感情」によって判断が揺らいでしまうこともあります。反発したくなる気持ちや、こだわりたい気持ちが湧いたときには、「この行動のメリットとデメリットは何か?」を一度冷静に天秤にかけてみましょう。

たとえば、上司に反論したくなったとき、その場ではスッキリするかもしれませんが、その後の関係悪化や職場での孤立というデメリットがあるかもしれません。
それよりも、少し飲み込んで協力することで、安定した職場生活やプライベートの充実につながるなら、そちらの方が長期的に「得」かもしれません。

まとめ

まとめ

ASDの症状は、医学的に加齢とともに進行するというものではありません。しかし、環境や心理状態、人間関係の影響によって、年齢とともに「症状が悪化したように感じる」ことは十分にあり得ます。

重要なのは、

「自分に合った環境を選ぶこと」
「信頼できる人に相談すること」
「冷静にメリット・デメリットを判断すること」

これらの工夫によって、ASDの特性と上手に付き合いながら、より生きやすい毎日を築いていくことが可能です。

症状を「悪化」させないためにも、無理せず、自分らしさを大切にできる環境づくりを意識していきましょう。