「食生活が心に影響を与える」と聞いて、驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、美味しいものを食べると自然と笑顔になったり、気分が明るくなった経験は誰しもあるのではないでしょうか。逆に、心の不調によって食欲が失われたり、過食傾向になることがあるように、心と食事は切っても切り離せない関係にあります。
食べ物は単に私たちの身体をつくるだけでなく、脳の働きにも大きな影響を与えます。脳が正常に働くことで心の安定が保たれるため、食生活は精神的な健康にも直結しているのです。実際に、うつ病などの精神疾患と食習慣の関係を調べる研究も進められており、注目が高まっています。
本記事では、「心に悪影響を与える可能性のある食生活」について解説していきます。すでに治療中の方にとっても、薬物療法と並行して生活習慣を見直すことで改善のきっかけになることがあります。この機会に、ご自身の食生活を見直すヒントとしてお役立てください。

現代人の多くが陥りがちなのが、過剰なカロリー摂取です。特に肥満と脳の健康には深い関係があることが分かってきました。肥満の方の脳を調べた研究では、脳神経の一部に萎縮が見られ、それが認知機能の低下につながる可能性が示されています。
特に、肥満指数(BMI)が30を超える場合には、その傾向が顕著になります。BMIは以下の計算式で求められます:
BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)
例えば、体重が70kg、身長が1.7mの場合、BMIは 70 ÷ 1.7 ÷ 1.7 = 約24.2 となります。標準とされるBMIは22前後ですが、30を超えると身体だけでなく心の健康にも悪影響が出やすいとされています。
また、肥満の人はうつ病の発症リスクが約1.5倍高いことも分かっています。脳機能へのダメージや生活習慣の乱れが要因のひとつです。
肥満対策としては、主食(ごはんやパンなど)を減らし、野菜やたんぱく質を中心としたおかずを増やすよう心がけましょう。間食や夜食を控え、甘い飲み物をお茶や水に切り替えることも有効です。

「疲れたときには甘いものを食べたくなる」。これはごく自然な反応です。甘いものを食べると、脳内で“幸福ホルモン”とも呼ばれるドーパミンが分泌され、一時的に気分が良くなるためです。
しかし、甘いものの摂りすぎは体重増加や血糖値の乱れを引き起こし、結果的に糖尿病や心の病へとつながる恐れがあります。実際に、糖尿病を持つ人は、うつ病を発症するリスクが1.5倍高まると報告されています。
甘いものは、完全にやめる必要はありませんが「習慣化」しないことが重要です。
こうした行動に心当たりのある方は、まずは「買いだめをしない」「見えるところに置かない」など、小さな工夫から始めてみましょう。

甘いものと同様に、アルコールも一時的に脳内のドーパミンを増やし、リラックスした気分をもたらします。仕事終わりの一杯や、飲み会などは気分転換として効果的に思えるかもしれません。
しかし、アルコールが体内で分解される過程で生じる「アセトアルデヒド」という物質は、有害であり脳にも悪影響を及ぼす可能性があります。加えて、アルコールは非常に高カロリーであり、飲みすぎれば肥満を招きやすくなります。
特に注意すべきは「毎晩の晩酌が習慣になっている」ケースです。
厚生労働省によると、健康的な飲酒量の目安は以下の通りです:
心身の健康のためには、適量を守り、休肝日を設ける習慣も大切です。

現代の食生活では、野菜の摂取量が圧倒的に不足しがちです。しかし、野菜に含まれる食物繊維は、腸の健康を保ち、有害物質の排出を助ける働きがあります。腸は「第二の脳」とも呼ばれ、腸内環境が乱れると脳にも悪影響が及ぶことが明らかになっています。
野菜不足は、体の炎症を引き起こし、脳の機能にも悪影響を与えると考えられています。目安としては、
さらに、葉酸・ビタミンD・鉄・亜鉛などの微量栄養素の不足も、うつ症状と関係があるとされています。こうした栄養素は、サプリメントで摂るよりも、できる限り食品から自然に摂取することが推奨されます。例えば、

うつ病患者の食生活を分析した研究では、「朝食を抜き、夜遅くに間食や夜食を摂る」という傾向が多く見られました。このような食習慣は栄養バランスが崩れやすく、体内時計も乱れがちになります。
体内時計が乱れると、睡眠の質が低下し、それが気分の落ち込みにつながります。
そのため、
特に注目されているのが、日本食の力です。魚、豆類、野菜、海藻、発酵食品などをバランスよく取り入れた和食は、うつ病の予防効果があるとされています。私たちが古くから親しんできた日本の食文化には、心と体を整える知恵が詰まっているのです。
食事は、私たちの「心の栄養」でもあります。毎日の食生活を少し見直すだけでも、気分が前向きになったり、ストレスを感じにくくなることがあります。
うつ病の治療には医療的なアプローチが欠かせませんが、同時に生活習慣の改善も大切な柱です。今回ご紹介した内容が、みなさんの心と身体をいたわるヒントとなれば幸いです。
今日から少しずつ、自分の食生活を見直してみませんか?心と体の声に耳を傾ける時間を大切にしていきましょう。