大学に進学してから、これまでとは違った「生きづらさ」を感じるようになった――そんな声を聞くことがあります。自由なはずの大学生活なのに、なぜか毎日がつらい。特に、発達障害の特性を持つ人にとっては、このような変化を強く感じることがあります。
本記事では、大学生活で困難を感じやすい理由を発達障害の視点から丁寧に整理し、少しでも楽に過ごせるような工夫や対策についてご紹介します。
発達障害は、生まれつきの脳の働きの違いによって起こるものです。その特性は幼少期からあるものの、どのタイミングで目立ってくるかには個人差があります。環境の要求が変わったときに、はじめて「困りごと」として浮かび上がることも少なくありません。
特に大学生活では、高校までと比べて自由度が増し、そのぶん自己管理や判断力が求められます。こうした変化は、発達障害のある人にとって大きな負担となることがあります。
1. 履修登録の複雑さと、自己管理への負担
大学では、どの講義を受けるか自分で決めて時間割を作成します。これは一見自由に見えますが、同時に「情報を整理して計画を立てる力」「期限内に行動する力」が必要とされます。
発達障害、とくに注意欠如・多動症(ADHD)の特性を持つ人は、こうしたスケジュール管理や優先順位づけが苦手なことが多く、履修登録そのものが大きなストレスになります。
2. 固定のクラスがなく、孤立しやすい
高校まではクラスという枠組みの中で人間関係が築かれましたが、大学では講義ごとにメンバーが異なるため、自然に知り合う機会が減ります。
社会的なやりとりが苦手な発達障害の人にとっては、「知り合いをつくる」「輪に入る」といった行動がとても難しく、気づけば一人でいる時間が増えてしまうこともあります。
3. 授業や試験は「情報を持っている人」が有利
大学の講義では、単に出席しているだけでは不十分で、過去の試験内容や先生の癖、レポートのポイントなど、細かい「裏の情報」が成績に影響することがあります。
これらの情報は友人とのつながりやサークル活動を通じて共有されることが多く、孤立しているとそうした情報が入らず、不利に感じる場面が増えてしまいます。
加えて、発達障害のある人は「予定の変更」や「イレギュラーな指示」が苦手なことが多く、突然の授業変更や提出課題の追加に対応しきれないということも起こります。

4. 日常生活そのものが大きな課題になる
大学生になると、一人暮らしを始める人も多く、食事や掃除、金銭管理、健康管理などすべてを自分でこなす必要があります。
しかし、発達障害のある人は、複数のタスクを整理して同時に進めることや、毎日のルーティンを維持することが難しい傾向があります。そのため、「普通の生活」が想像以上にハードルの高いものになり、自信を失いやすくなってしまいます。
5. アルバイトが続かない
大学生の多くが経験するアルバイトですが、接客や臨機応変な対応が求められる職場ではストレスが大きくなりやすく、すぐに辞めてしまうという人もいます。
指示があいまいだったり、忙しさの波が激しかったりする職場では、混乱したり、疲れ切ってしまったりすることも。自分に合った仕事を見つけるまでに、何度も挫折を味わう人も少なくありません。
6. 自分に合った進路がわからず、就活に戸惑う
就職活動では、自己分析や企業研究、エントリーシートの作成、面接といったさまざまなプロセスを乗り越える必要があります。
しかし、「自分に向いている仕事がわからない」「自分をうまく言語化できない」という感覚を持つ人にとっては、就活そのものが非常に負担になります。
1. 支援室やカウンセラーを利用する
多くの大学には、障害のある学生のためのサポート窓口があります。支援室では、履修の相談、学習上の配慮、生活面のアドバイスなどが受けられることがあります。
困っていることを一人で抱え込まず、信頼できる人に話してみることが第一歩です。
また、大学を選ぶ段階であれば、「発達障害の学生への支援体制が整っているか」を事前に確認しておくと安心です。
※注意:大学生は福祉制度の「就労移行支援」を原則として利用できないため、学内での支援がとても重要になります。
2. 発達障害の診断を検討する
「もしかして自分は発達障害かもしれない」と感じている場合、医療機関で検査を受けるという選択肢があります。
診断がつくことで、自分自身の特性を理解しやすくなったり、必要な支援を受けられるようになったりする可能性があります。地域の精神科や心療内科、発達障害に対応したクリニックに相談してみましょう。
3. 自分に合ったアルバイトを選ぶ
続かないバイトに悩むのではなく、「どんな職場ならストレスが少なく働けるか」を基準に仕事を選ぶことが大切です。
たとえば、静かな環境で黙々と作業できる業務や、ルールが明確な仕事内容のバイトなど、自分に合った条件を考えてみるとよいでしょう。
周囲の「普通」にとらわれず、自分なりの働き方を見つけることが、安心して働く近道です。

4. 人間関係は「無理に作らなくてもいい」
「友達がいないとダメなんじゃないか」と思う必要はありません。人付き合いが苦手な人にとっては、無理に人間関係を築こうとすること自体がストレスになることもあります。
気の合う人が一人でもいれば十分ですし、ひとりの時間を大切にするという選択肢も、立派な「大学生活のあり方」のひとつです。
大学での生活がつらく感じられるとき、その原因は「自分の努力が足りない」からではなく、「環境があなたの特性と合っていない」ことにあるかもしれません。
大切なのは、自分の感じている「つらさ」を否定せず、少しずつ自分に合った生き方を見つけていくことです。
自分らしく大学生活を送るために、まずは自分を知ること、そして必要に応じて誰かに頼ること。そんな小さな一歩から、きっと未来が変わっていくはずです。