近年、ADHD(注意欠如・多動症)に関する理解が進み、診断を受ける大人が増えています。子どもの頃から何かしらの違和感を抱えていたものの、それが発達特性だと気づかずに過ごしてきた人が、社会生活を送る中で自分の困難さに向き合い、初めてADHDであると知るケースも少なくありません。この記事では、大人になってからADHDに気づく人が多い理由と、子どもの頃に見られがちな特徴について解説します。
1. 子どもの頃に特性が目立たなかった
ADHDは先天的な脳の特性によるもので、実際には子どもの頃からその兆候が現れていたと考えられています。しかし、すべての人が小さな頃から問題行動を起こすわけではありません。家庭や学校など、比較的単純で安定した環境の中では、本人の特性が目立ちにくいこともあります。
小学校時代は、日々の生活がある程度決まっており、付き合う相手も家族や限られた友人、教師が中心です。そのため、多少の不注意や多動傾向があっても、周囲が自然にカバーしていたり、問題視されなかったりする場合が多く、本人や保護者が発達特性に気づく機会が少なかったのです。
また、ADHDの中には知能が高く、学業成績に問題が見られないタイプの子どもも存在します。学校の成績が良ければ、特性に気づかれる可能性はさらに下がるでしょう。
2. 発達障害に対する認知度の低さ
現在では「発達障害」という言葉が社会に浸透し、教育現場でも比較的早期に支援につながるようになってきました。しかし、今の大人たちが子どもだった時代は、そうした認識が社会全体で浸透していなかったのが現実です。
当時は、不注意や衝動性、多動といった行動があったとしても、それを「個性」と見なす風潮が強く、診断につながることはほとんどありませんでした。周囲の大人も発達障害の存在を知らなかったため、困った行動を「しつけの問題」や「性格の問題」と捉えてしまうことも多くありました。
実際、国の調査でも、ここ10年ほどで発達障害の診断を受ける子どもの数が急増しています。しかし、これは障害を持つ子どもの数が急に増えたということではなく、発達障害という概念が社会に認知され、正しく理解されるようになった結果、診断につながるケースが増えたことを意味しています。
3. 社会生活の中で特性が顕在化した

子どもの頃はあまり目立たなかった特性でも、成長するにつれて問題として表面化することがあります。中学、高校、大学、そして社会人になると、求められる社会的スキルやコミュニケーション能力が高度化します。環境が複雑になることで、ADHD特有の不注意や衝動性、時間管理の困難さなどが顕著になり、生きづらさを感じるようになるのです。
仕事や人間関係でつまずく経験を繰り返す中で、「自分はなぜうまくいかないのか」と悩むようになり、結果として病院やカウンセリングを受け、ADHDであると判明することが多くあります。
実際に、多くの当事者が「もっと早く知っていれば」と語るように、発達障害の特性は年齢とともに強まるというよりも、環境とのミスマッチが大きくなることで、問題として認識されやすくなる傾向があります。
ここでは、ADHDの子どもによく見られる行動や特徴を7つ紹介します。これらの特徴がすべて当てはまるわけではありませんが、複数の項目に心当たりがある場合は、専門機関への相談を検討してもよいかもしれません。
1. ケガをしやすい、ケガをさせてしまう
ADHDの子どもには、身体を思い通りに動かすことが難しいタイプが多く見られます。たとえば、細かい作業が苦手だったり、運動に対する不器用さがあったりします。そのため、走っていて転倒してしまったり、勢いよく動いた結果として他の子にぶつかってしまったりと、事故やケガが起きやすい状況が生まれやすくなります。これらは本人の不注意というよりも、身体操作に関する発達の凸凹が影響しているケースが多いのです。
2. 授業に集中できない
小学校に入ると、45分ほどの授業時間をじっと座って過ごすことが求められます。年齢とともに集中力が育まれていくのが一般的ですが、ADHDの子どもにとってはこの「静かに座って話を聞く」という行動自体が困難です。授業中に周囲の子へ話しかけたり、突然手元のおもちゃや筆記用具に気を取られたりということもあります。中には、教室内を歩き回る、突然外へ出て行くなど、じっとしていること自体が難しい子もいます。
3. 質問が終わる前に答え始めてしまう
先生が「この問題、分かる人はいますか?」と問いかけると、手を挙げるどころか質問が終わる前に答え始める子がいます。これは衝動性の表れのひとつです。答えたいという気持ちが強すぎて、ルールよりも「思いついた瞬間に口に出す」という行動が優先されてしまうのです。これには社会性の未熟さも関係しており、「相手が話している間は聞く」「順番を守る」という場面でのコントロールが難しいのが特徴です。
4. 順番を待つことが難しい
友達と遊ぶときや、テーマパークなどで列に並ぶ場面で、順番を待つという行動ができない子も少なくありません。「自分が先にやりたい」「早く目的を達成したい」という気持ちが行動として先行してしまい、割り込みをしてしまうこともあります。また、会話の中でも相手の話を待てずに割り込んでしまい、一方的に話してしまう傾向が見られます。コミュニケーションにおけるキャッチボールの感覚が育ちにくいことも背景のひとつといえるでしょう。
5. 忘れ物が多い
小学校に上がると、持ち物の管理を自分で行う必要が出てきます。たとえば、教科書やノート、上履きや体操服など、毎日の準備は自分の責任となります。しかしADHDの子どもは「必要なものを覚えておく」「先の予定に合わせて準備する」といった見通しを立てることが苦手な傾向があります。その結果、忘れ物が多くなりやすく、親や先生からの注意が増える原因にもなります。
6. 片付けが苦手で物をよくなくす

生理整頓が難しいという点もADHDの特徴のひとつです。学校の机の中が散らかっていたり、家の部屋に物があふれていたりする様子がよく見られます。「どこに何をしまえばよいのか」がわからない、また「しまう」という行動自体を継続することが難しいということもあります。そのため、物の紛失が頻繁に起こることにつながります。片付けの仕組みが頭の中で整理されにくいことが根本的な原因といえるでしょう。
7. ケアレスミスが多い
文章問題をよく読めば解けたはずの問題を間違えたり、漢字の一部を書き忘れたりといったミスも目立ちます。これは注意力の持続が困難なため、細部にまで気を配ることができないという特性に起因しています。問題文を読み飛ばしたり、書き終わった後に見直すことを忘れたりすることで、結果として本来の能力が正しく評価されにくくなってしまうこともあります。
ADHDは、生まれつきの特性によって日常生活に困難が生じる状態ですが、その特性がどのように現れるかは年齢や環境によって変化します。子どもの頃に特性が目立たなかった人でも、大人になってから困難を感じ、自分の特性に気づくことがあります。
子どものうちに周囲が正しく理解し、適切なサポートを受けられれば、本人の自己肯定感を保ちながら成長することが可能です。また、大人になってから気づいた場合でも、支援の方法はたくさんあります。まずは自分を知ることから始めてみましょう。