発達障害を抱える人々と定型発達の人々との間では、日常的なコミュニケーションや仕事の進め方においてすれ違いが生じることがあります。特に職場では、何気ない一言や行動が誤解を生み、関係にヒビが入ってしまうこともあります。
本記事では、コント形式で描かれた3つの職場シーンを通して、発達障害の特性がどのように職場でのコミュニケーションに影響を及ぼすのかを解説していきます。

コントの概要:
朝の職場で、落ち込んだ様子の先輩に対して後輩が明るく話しかけます。しかし後輩は、先輩がそっとしておいてほしいというサインを出しているにもかかわらず、話しかけ続け、さらには落ち込んでいる原因をズバリ言葉にしてしまいます。結果として先輩をより不快にさせてしまう、という場面です。
解説:
このコントは、ASD(自閉スペクトラム症)の人によく見られる「空気を読むのが難しい」という特性を表しています。ASDの人は、相手の表情や態度から感情を読み取るのが苦手であったり、たとえ読み取れたとしてもその気持ちを配慮して発言をコントロールすることが難しい場合があります。
今回の後輩も、「落ち込んでいそうだ」ということ自体は認識していますが、それ以上に自分の好奇心や会話の流れを優先してしまい、結果的に相手を追い詰めてしまっています。
定型発達の人であれば、相手の様子を見て「今はそっとしておこう」「この話題には触れないでおこう」と判断しますが、ASDの人はそうした判断が苦手なため、悪気なく相手を傷つけてしまうことがあります。

コントの概要:
明後日に迫ったプレゼンについて、先輩が後輩に進捗を確認します。後輩は「明日やるので大丈夫」と答えますが、実際には資料が未完成であり、チェックする上司も不在ということが発覚します。先輩は焦りますが、後輩は「難しいこと言わないでください」と楽観的な姿勢を崩しません。
解説:
この場面では、「見通しを立てる力」の弱さが表れています。ASDの人は、タスクの進捗管理や優先順位づけ、他者との調整など、複数の要素を同時に考える作業が苦手な傾向があります。
後輩は「明日やれば大丈夫」と考えていましたが、資料作成にはデータの準備や確認作業があり、さらには課長のスケジュールも考慮しなければならない状況です。このように、タスクの全体像を把握し、それに基づいて逆算して行動するという段取りの力が求められる場面で、ASDの特性によるつまずきが発生しやすいのです。
一方で、定型発達の人は「この資料は誰が確認するのか」「確認までにどのくらい時間がかかるか」など、他者や時間の要素も含めて計画を立てることが比較的自然にできます。こうした違いが、仕事の進め方における認識のズレを生んでしまいます。

コントの概要:
部下が電話を受けているシーン。上司が席を外している理由として「トイレとタバコに行っている」と正直に答えてしまい、相手の印象を損ねます。さらに、得意先からの急な追加注文に対して「締切を過ぎているので無理です」と対応し、相手を怒らせてしまいます。
解説:
このシーンでは、「臨機応変な対応」が難しいという点が際立っています。ASDの人は、「ルール通りに対応する」ことに強いこだわりを持つ場合があり、その一方で、状況に応じて柔軟に対応するというスキルが苦手なことがあります。
今回の部下は、マニュアルに従って「締切を過ぎた注文は受け付けない」と判断しました。しかし、実際にはその得意先は重要な取引先であり、多少の無理をしてでも関係を優先する判断が求められていた場面でした。
また、上司が不在である理由も、相手への印象を考慮して「席を外しております」と曖昧に伝えるのが一般的ですが、事実をそのまま伝えてしまい、結果的に相手に不快感を与えることになりました。
このように、事実と適切な対応のバランスを取ることが難しいという特性が、ASDの人には見られることがあります。
以上の3つの場面から見えてくるのは、発達障害のある人が悪気なく周囲を困惑させてしまうこと、そしてその背景には認知の特性があるということです。
誤解を避けるためには、本人が努力するだけでなく、周囲の理解や支援も不可欠です。例えば、
などの工夫によって、トラブルを未然に防ぐことができます。
定型発達の人にとっては「当たり前」と思える言動が、発達障害のある人にはそうではないという視点を持つこと。それが、多様な人材が共に働く職場づくりの第一歩となります。