発達障害のひとつであるADHD(注意欠如・多動症)は、子どもに多い障害と思われがちですが、実は大人になってから診断されるケースも少なくありません。特に「不注意」に関する症状は、社会生活や仕事の場面で目立つようになり、本人が困りごとを抱えたり、周囲とのトラブルに発展したりすることもあります。
この記事では、大人のADHDで特に見られる「不注意」の症状5つについて詳しく解説し、それぞれの背景や対策についてもご紹介します。

ADHDは「注意欠如・多動症(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)」の略で、不注意・多動性・衝動性の3つの主な症状が特徴です。発達障害の一種で、生まれつき脳の機能に特性があり、子どものころに診断されることが多いですが、大人になってから「生きづらさ」や「不適応」として表面化し、診断に至ることもあります。
なかでも「不注意が優勢」のタイプ(不注意優勢型)は、大人になってから見つかるケースが多いと言われています。学生時代には周囲がカバーしてくれていた不注意の傾向が、就職や家庭などで自立が求められるようになると、問題として表れやすくなるのです。

ADHDの不注意症状には、脳内の「実行機能系」と「報酬系」の働きが関係しています。
これらの特性が日常生活や職場での困りごととして現れてくるのです。

ADHDの不注意症状で最もよく見られるのが「気が散りやすさ」です。周囲の音や人の話し声、スマホの通知など、外部の刺激にすぐ反応してしまい、本来集中すべきことに意識を向け続けるのが困難です。
興味のない話題や単調な作業には集中できず、会議中に話を聞き漏らしたり、仕事中に何度も脱線してしまったりすることがあります。
「見直せば防げるはずのミス」が繰り返されるのも、不注意の大きな特徴です。必要な注意がそれてしまい、確認不足や記入ミスが頻発します。
これにより、職場では信頼を失う要因となり、テストや事務処理でも高得点・正確性を求められる場面では特に不利になる可能性があります。
鍵、財布、スマホなどの必需品をよく忘れる、持っていたはずのものを紛失してしまう、こうした行動もADHDの不注意症状の一部です。
必要な注意が持続できないことで、「どこに置いたか覚えていない」「そもそも持ち出すのを忘れた」などの状況が頻繁に起こります。
長時間にわたる作業や段階を踏むタスクになると、集中力を維持することが難しくなります。最初は意欲的でも、途中で注意がそれてしまい、最後までやり遂げられないことも多いです。
一方で、「過集中」と呼ばれる状態になることもあります。これは、興味があることに対して極端に集中しすぎてしまい、周囲が見えなくなる現象です。
「何をどの順番でやるか」「時間通りに行動する」など、段取りや時間管理が必要な場面でうまく立ち回れないのも、大人のADHDにおける特徴です。
片付けが苦手で部屋やデスクが散らかっていたり、時間を読み違えて遅刻してしまったりすることが多く、仕事や人間関係に支障をきたすこともあります。
実際の影響例:

ADHDの特性は「完全に治す」ものではなく、「特性を理解し、それに合った対応をとる」ことが基本となります。以下の3つが主な対策です。
医師による診断のもと、脳内の神経伝達物質のバランスを整える薬が処方されることがあります。これは根本的な「特性をなくす」ものではなく、あくまで症状の緩和や集中力の改善を目的とした補助的な手段です。
こうした生活上の工夫は、ADHDにおけるセルフマネジメントの土台となります。
支援機関やカウンセリング、就労支援サービスなど、公的なサポートを活用することで、生活や仕事への不適応を軽減することができます。無理せず「頼れるものには頼る」姿勢が重要です。

大人のADHDでは、特に不注意の症状が社会生活に大きく影響します。今回紹介した5つの症状──
──は、多くの方が「ただの不注意」として見過ごしがちですが、積み重なることで本人の自信や生活の質に影響を及ぼします。
しかし、特性を知り、薬や環境調整、社会的なサポートを取り入れることで、日々の困りごとを軽減し、自分らしい生活を築くことは可能です。もし「もしかしたら自分も…」と感じた方は、専門機関に相談し、正しい理解と対応を始めてみてはいかがでしょうか。