ADHD(注意欠如・多動症)は、従来は子どもに
多く見られる発達障害として認識されてきました。
しかし、特に「不注意」が主な特徴として現れるタイプの場合、
幼少期には目立ちにくく、大人になってから初めて気づかれるケース
も少なくありません。
こうした成人後に気づかれるADHDの多くは、
日常生活の中でも特に「職場」において、
その特性が際立って表面化することがあります。
本稿では、なぜ職場でADHDが目立ちやすいのかを整理しつつ、
職場で顕著に現れるADHDの特徴を5つ取り上げて詳しく解説します。

ADHDの本質は「不注意」「多動性」「衝動性」という3つの特性に集約されます。
これらは、子どもの頃には活動的な性格や多少の失敗として見過ごされることもありますが、大人になるにつれてその影響が生活全般に強く及び始めます。
特に職場では、次のような理由からADHDの特性が顕著に現れやすくなります。
学校に比べ、職場では遅刻や期限の遵守などが厳格に求められます。
同じような行動であっても、評価に直接影響する点が職場での違いです。
そのため、ADHD特有の遅刻や先延ばし傾向が、強く問題視されることになります。
職場では、複数の業務を同時に進行しなければならないことが多く、マルチタスクやスケジュール管理の負担が重くのしかかります。
これにより、不注意型ADHDの人は特に困難を抱えやすくなります。
学校生活では、家族や教師などの支援によりある程度困難を乗り越えることができますが、職場ではそのようなサポート体制は期待しにくく、自己管理能力が問われる場面が増えます。
このような要因により、学生時代には見逃されていたADHDの特性が、社会に出てから明らかになるケースが増えています。

次に、職場においてADHDの人に特に見られやすい特徴を5つ紹介し、それぞれの背景や対応策について述べます。
ADHDの「衝動性」によって、思ったことをそのまま口にしてしまい、職場での失言として問題視されることがあります。
例えば、上司や同僚の意見に対して批判的な言葉を感情的に発してしまったり、相手の話に割り込んでしまうことが見られます。
これにより、チーム内の人間関係に悪影響を与えることもあります。
対応策としては、発言前に一呼吸おいて「これは今言うべきか」「相手を傷つけないか」と自問する習慣をつけることが有効です。
ADHDの「不注意」の特性から、業務の開始が遅れがちになり、結果として提出物や報告の期限に間に合わないことが多く見られます。
これは、物事に着手するまでに時間がかかる、注意が散漫で集中が続かない、全体の段取りを組むことが苦手などが原因とされています。
仕事の遅延は評価の低下や信頼喪失につながるため、重要な課題となります。
対応策としては、タスクを小さく分けてチェックリスト化し、こまめに進捗確認を行うことなどが挙げられます。
職場でのデスクが常に散らかっている、書類や備品の管理が
できていないといった状況もADHDの特徴のひとつです。
これも「不注意」に起因するもので、整理の優先順位をつけられない、
途中で気がそれて作業が中断する、といった背景があります。
重要書類の紛失や破損などのリスクもあり、業務に大きな支障をきたすことがあります。
定期的な整理の時間を設ける、収納ルールを簡素化するなどの工夫が必要です。
会議中に話の内容を把握できなかったり、じっとしていられずそわそわしたり、不適切な発言をしてしまうことがあります。
これは、ADHDにおける「不注意」「多動」「衝動性」の3つすべての特性が関係しています。
まず不注意により話の筋を追うことが難しく、多動によって長時間座っていることが苦痛になります。さらに、発言を抑えることができず、空気を読まない発言をしてしまうこともあります。
これを防ぐためには、会議前に議題を確認し、メモをとりながら参加すること、あるいは事前に要点を把握しておくなどの準備が役立ちます。
ADHDの人は、時間の感覚や自己管理が苦手な傾向にあり、しばしば遅刻を繰り返します。
これは単なる怠慢と誤解されやすいのですが、実際には「今から準備にどれだけ時間がかかるか」を正確に把握することが難しいためです。
また、準備中に別のことに気を取られてしまい、出発が遅れることも少なくありません。
さらに、早く着きすぎて時間をもて余すことに対する不安から、わざとギリギリを狙う人もいます。
このような傾向には、出発のタイマー設定やスケジュール管理アプリの活用、余裕を持った計画の習慣化などが推奨されます。

ADHDの特性によって職場での適応が困難になると、いわゆる「不適応状態」に陥る可能性があります。これが慢性化すると、うつ病や不安障害といった二次障害を引き起こす恐れがあり、最悪の場合は出勤困難や離職に至るケースもあります。
したがって、職場においてADHDが疑われるような特徴が見られた場合には、早めに専門機関で相談し、必要に応じて診断・支援を受けることが重要です。

大人になってから気づかれることの多いADHDは、特に職場での負担が増すことでその特徴が浮き彫りになります。
以下に、今回取り上げた職場での主な特徴を再掲します。
これらの特性により、職場での評価や人間関係に課題を抱えることがある一方、適切な理解とサポートがあれば、十分に能力を発揮できるケースも多くあります。
少しでも心当たりがある場合は、早期に専門的な支援を受けることで、本人の負担を軽減し、職場での活躍を後押しする道が開かれます。