本日は、「引きこもりは精神疾患に該当するのか?」というご質問について、丁寧に解説してまいります。
まず、結論から申し上げると「引きこもりは精神疾患そのものではありません」が、「精神疾患と合併しているケースは非常に多い」というのが実情です。
引きこもりとは、一般的に「長期間にわたり、家庭にこもって社会的な交流をほとんど行わない状態」を指します。2018年の厚生労働省白書では、「6か月以上の期間、就学・就労・社会参加を避け、自宅にとどまっている状態」とされており、これを一つの目安としています。
引きこもりは一人ひとりの生活や心理状態に大きな影響を及ぼし、また家庭や社会全体にも深刻な影響を与えることから、現代日本において大きな社会問題のひとつとなっています。
● 国内の推定人数と傾向
2023年に内閣府が行った調査によれば、日本には約150万人の引きこもり状態にある方がいると推計されています。この数字は、今や若年層に限らず中高年層にまで広がっており、特に40歳以上の方が全体の4〜5割を占めているという調査結果もあります。
また、引きこもりの期間についても、単なる一時的な状態ではなく、「年単位で持続しているケース」が多く、10年以上引きこもっている方も珍しくありません。

引きこもりは、精神疾患の診断名ではありません。したがって、「引きこもっている=精神疾患」とは限りません。
引きこもりに至る理由は非常に多様で、心理的・身体的・社会的な要因が複雑に絡み合っています。中には、自主的に引きこもる選択をした方や、インターネットなどを通じて社会と関わっているため、対面での人付き合いを必要としない方もいます。また、持病など身体的な問題によって外出が困難な方もいらっしゃいます。
● 精神疾患が関係ないケースの例
一方で、引きこもりの背景には精神疾患が存在する場合も非常に多いです。特に次のような精神疾患は、引きこもりを引き起こす大きな要因となります。
● うつ病
うつ病は、落ち込みや意欲の低下が持続する脳の不調で、「外に出て人と話す気力すら起きない」といった状態に陥ることがあります。適切な治療により、改善する可能性は十分にあります。
● 社会不安障害
人前に出ることや人の集まりに対して極端な不安を感じ、それを避ける傾向が強くなる病気です。この「回避行動」が日常生活全般に広がり、外出や人との関わり自体が困難になることがあります。抗うつ薬などによって不安症状を緩和できる可能性があります。
● 発達障害(ASD・ADHD)
発達障害のある方は、対人関係に苦手さを抱えていることが多く、学校や職場などでの人間関係がうまくいかず、それがストレスや二次障害(うつ・不安など)につながり、引きこもるケースもあります。ここでは、薬だけでなく心理的サポートや生活支援など、複数のアプローチが必要になります。
● 統合失調症
統合失調症は、幻聴や妄想といった「陽性症状」、そして意欲の著しい低下や無関心などの「陰性症状」が見られる病気です。特に「被害妄想」があると、「外に出ると狙われる」と感じてしまい、家から出られなくなる方もいます。幻覚や妄想には抗精神病薬が有効な場合がありますが、陰性症状は治療が難しいこともあります。
精神疾患が引きこもりの背景にある場合、精神科での受診・診断・治療が非常に重要です。たとえば、うつ病であれば抗うつ薬、統合失調症であれば抗精神病薬など、病気の種類に応じた適切な治療が行われることで、症状が改善し、引きこもりからの回復が見込まれる場合があります。
● 精神科治療と引きこもり改善の流れ

もちろん、全てのケースで劇的に改善するとは限りません。たとえば、生まれつきの特性に起因する発達障害の場合、薬物療法では根本的な部分を変えることは難しく、長期的な支援や生活環境の調整が必要となります。また、統合失調症などでは、薬が効きにくい「陰性症状」が残り、行動のパターン自体が固まってしまっていることもあります。
それでも、まず一度、専門機関に相談し、治療の選択肢を試みることには大きな意味があります。少しでも改善の糸口をつかむためにも、医療との接点を持つことは重要です。
今回のご質問「引きこもりは精神疾患なのか?」に対する回答としては、「引きこもり自体は精神疾患ではないが、精神疾患と深く関係していることが多い」ということになります。
社会的なつながりを絶ち、長期間自宅にこもってしまう状態にはさまざまな背景があり、一人ひとりの状況に応じた理解と支援が必要です。特に精神疾患が関与している場合、専門的な治療や支援を受けることで、状態の改善につながる可能性は十分にあります。
引きこもりで悩んでいる方、そのご家族や周囲の方々にとって、今回の内容が少しでも理解の助けとなれば幸いです。