抗うつ薬SSRIを使う主な精神疾患5つ

抗うつ薬SSRIを使う主な精神疾患5つ ~その働きと適応疾患を解説~

抗うつ薬の中でも広く使われている「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」は、うつ病治療を中心に、不安障害などさまざまな精神疾患に用いられています。本記事では、SSRIの基本的な特徴とともに、主に使われる5つの精神疾患についてわかりやすくご紹介します。

1.抗うつ薬SSRIとは?

セロトニンの働きを補う薬

SSRIとは「Selective Serotonin Reuptake Inhibitor」の略で、日本語では「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」と訳されます。脳内の神経伝達物質である「セロトニン」の働きを高めることによって、うつや不安を和らげる効果が期待されます。

うつ病や不安障害では、セロトニンの分泌や働きが低下していると考えられており、SSRIはこのセロトニンの再取り込みを阻害することで、脳内のセロトニン濃度を高める仕組みになっています。

SSRIの特徴

SSRIの大きな特徴は、効果が現れるまでにやや時間がかかることです。多くの場合、服用を開始してから2~4週間ほどで徐々に効果が現れてきます。その一方で、服用初期に副作用が先に現れることがあるため、医師の指導のもとで継続的に使うことが大切です。

2.SSRIの副作用と注意点

主な副作用

SSRIには以下のような副作用が知られています。

  • 吐き気・下痢などの胃腸症状:服用開始初期に出やすく、時間とともに軽減することが多いです。
  • めまいや眠気:これも一過性のことが多く、服用を続けるうちに改善します。
  • 離脱症状:急に服用を中止すると「めまい」「しびれ」「不安」などの離脱症状が出ることがあります。そのため、減薬する際は徐々に量を減らしていく必要があります。

なお、ベンゾジアゼピン系薬剤とは異なり、SSRIには「依存性」は基本的にないとされています。

長所と短所

長所

  • 比較的副作用が少なく、効果が安定している
  • 運転制限が少ない
  • 妊娠・授乳中も比較的安全に使用できる(薬剤による)

短所

  • 効果が現れるまで時間がかかる
  • 初期に副作用が目立つことがある
  • 長期的な使用が必要
  • 個人によって「相性」の違いがある

3.SSRIが使われる主な精神疾患5つ

うつ病

SSRIが最も広く使われる疾患の一つです。うつ病は「気分の落ち込み」「意欲の低下」「睡眠障害」などが続く脳の不調であり、セロトニンの不足が原因の一つとされています。

SSRIは、うつ症状だけでなく、同時にみられることが多い「不安」にも効果を発揮します。また、症状が改善した後も再発を防ぐ目的で、一定期間継続して服用することが推奨されます。

治療はSSRIだけにとどまらず、「休養」や「精神療法(認知行動療法など)」も並行して行うことが重要です。

適応障害

適応障害は、特定のストレス要因によって一時的にうつ状態や不安症状が出る状態を指します。うつ病との違いは、ストレスの原因が明確で、脳の構造的な不調が必ずしも伴わないことです。

SSRIはこのようなストレスが取り除けない場合や、うつ病に移行しそうな際の予防目的で使われることがあります。主剤というより「補助的」に用いられるケースが多いです。

治療の基本は「環境調整」や「ストレスマネジメント」です。SSRIは、その支援として活用されます。

パニック障害

パニック障害は、突然の激しい動悸や息苦しさなどの「パニック発作」を繰り返す疾患です。発作がまた起きるのではないかという「予期不安」が日常生活に大きな支障を与えることがあります。

このような症状に対して、SSRIは治療の「主剤」として広く使われています。発作の頻度を抑えたり、予期不安を軽減する効果が期待されます。頓服として抗不安薬を併用したり、脱感作法(苦手な状況に少しずつ慣れる)などの行動療法を組み合わせて治療を進めることが一般的です。

社会不安障害(社交不安障害)

社会不安障害は、人前で話す、食事をする、視線を浴びるなどの場面で過剰な緊張や不安を感じる疾患です。このような不安を避けるため、学校や職場などの社会的な場面から逃げてしまうことがあります。

SSRIはこの病気においても「主剤」として使われ、強い不安をやわらげることが目的です。SSRIで不安が軽減されると、「脱感作法」などの行動療法にも取り組みやすくなります。

日常的な緊張を緩和するために、リラックス法や頓服薬の併用が行われることもあります。

強迫性障害(OCD)

強迫性障害は、「手が汚れている気がして何度も手を洗う」「鍵をかけたか不安で何度も確認する」など、強迫観念とそれに対処する行動(強迫行為)を繰り返してしまう疾患です。

SSRIは、この疾患でも主な治療薬として使われますが、他の疾患と比べて効果が出るまでに時間がかかることもあり、やや高めの用量が必要になる場合もあります。

併用される治療法としては、「暴露反応妨害法(ERP)」といって、不安な状況にあえて身を置いて、強迫行為を我慢する練習を行う方法があります。また、ストレスを減らすための環境調整や、家族への影響を抑える支援も重要です。

まとめ

SSRIは、脳内のセロトニンの働きを高めることで、うつや不安を改善する薬です。比較的副作用が少なく、再発予防にも有効な点から、うつ病やパニック障害をはじめとする多くの精神疾患において広く使われています。

今回ご紹介した「SSRIが主に使われる精神疾患5つ」は以下の通りです。

  1. うつ病
  2. 適応障害
  3. パニック障害
  4. 社会不安障害
  5. 強迫性障害

ただし、SSRIのみで症状が完全に治るわけではありません。生活環境の見直しやストレス対策、精神療法、行動療法など、他の治療的取り組みを併せて行うことが、回復のためには非常に重要です。

精神的な不調を感じた際は、一人で抱え込まず、専門の医療機関に相談することをおすすめします。適切な診断と治療によって、少しずつでも心の調子を整えていくことは十分可能です。