私たちの周りには、「もしかして発達障害の傾向があるかも?」と感じつつも、日常生活や仕事に大きな支障を感じていないために、医療機関を受診することなく過ごしている方が多くいます。
そうした人たちは「隠れ発達障害」と呼ばれることがあります。
本記事では、「隠れ発達障害」とは何か、そしてその代表的な傾向である「隠れADHD(注意欠如・多動症)」と「隠れASD(自閉スペクトラム症)」の特徴についてご紹介するとともに、必要な場合の相談先についてもご案内します。

「隠れ発達障害」とは、医学的な正式診断を受けていない、あるいは診断基準を完全には満たさないものの、発達障害の特徴を強く持っている人のことを指します。
こうした方々の中には、ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)の傾向がありながらも、自分自身ではその認識がなく、「ちょっと不器用なだけ」と捉えていることも少なくありません。
実際に診断を受けると発達障害とされる人もいれば、診断基準をすべて満たさない「グレーゾーン」の方もいます。
いずれの場合も、日常生活に大きな支障を感じていない限り、医療機関に行く必要性を感じない人も多く、「隠れ」たまま生活しているケースが多く見られます。

ADHDの人には、「衝動性」が強く現れる傾向があります。たとえば、考えるよりも先に行動してしまい、ついつい不要なものを買ってしまう衝動買いが頻繁に起こることがあります。
これが続くと、給料日前にお金が足りなくなったり、金銭管理がうまくできずに生活に支障をきたすこともあります。
時間管理が苦手というのも、ADHDの典型的な特徴です。
予定を立てて行動することが難しく、朝の準備に手間取り遅刻することが多かったり、忘れ物が頻発したりします。
とくに、日々のルーティンが定まっていない人にとっては、毎朝がバタバタしてしまいがちです。
ADHDの傾向がある人は、強い興味を持った対象にのめり込みやすく、「依存傾向」が出ることがあります。
ギャンブルやアルコール、買い物、ゲームなどにはまり、生活に少しずつ影響が出ることも。
これは病的な依存ではないにせよ、自分でコントロールが難しいと感じることがあるかもしれません。

ASDの傾向がある人は、抽象的な表現や曖昧な言い回しを理解するのが苦手です。
たとえば、「早めに来てね」や「いつも通りにしてね」といった表現に対して、「具体的に何時?」「いつもってどのくらい?」と戸惑ってしまうことがあります。
このようなすれ違いから、仕事上の指示ミスやトラブルにつながることもあります。
「自分はこうしたい」というマイルールや独自のこだわりを強く持っていることも、ASDの大きな特徴です。
自分のこだわりが組織や他人のルールとぶつかると、人間関係の摩擦が生じやすくなることもあります。
音や光、匂いなどに対して過敏に反応する「感覚過敏」もASDの特徴のひとつです。
一般的には気にならない程度の照明の明るさや、空調の音、においなどに強いストレスを感じてしまう人もいます。
これは本人にとってはかなりの負担となり、集中力の低下や体調不良にもつながる場合があります。
ASDの人は、建前やお世辞といった「間接的なコミュニケーション」が苦手です。
自分の思ったことを率直に伝えるため、相手の気持ちを考慮しない発言になってしまい、無意識のうちに人を傷つけてしまうこともあります。
「悪気はないけれど、人間関係がうまくいかない」という悩みを抱えるケースも少なくありません。

ここまでの特徴を読んで、「自分にも当てはまる」と感じた方もいるかもしれません。
しかし、発達障害の傾向があるからといって、必ずしも医療機関を受診しなければならないわけではありません。
発達障害の診断は、生活や仕事に明確な困難を抱えている場合に必要とされるものであり、日常生活に大きな支障がなければ、特に医療的な介入は必要ないケースも多いです。
一方で、「日常生活に支障をきたしていてつらい」「仕事で繰り返しトラブルが起こる」など、困りごとがある場合は、適切な相談先を探すことをおすすめします。

発達障害の正式な診断を希望する場合は、精神科や心療内科などの医療機関を受診しましょう。
ただし、大人の発達障害の検査を行っているクリニックは限られているため、事前にインターネットなどで調べて予約を取ることが重要です。
各地域には「発達障害者支援センター」が設置されており、発達障害やその傾向に関する包括的な相談を受け付けています。
どこに相談すればよいかわからないという方は、まずこのような機関を訪れてみるとよいでしょう。
また、仕事に関する悩みがある場合は「障害者職業センター」など、専門の支援機関も活用できます。自分の困りごとに応じて、最適な窓口を選びましょう。

隠れ発達障害の人は、周囲から「ちょっと変わっている人」と見られることが多く、自分でも「なぜうまくいかないのか」が分からないまま苦しんでいることがあります。
もし今回ご紹介した特徴のいくつかに心当たりがあり、なおかつ日常生活や仕事に困難を感じているようであれば、一度相談先を探してみるのも一つの選択です。
大切なのは、「困っているかどうか」。
自分自身の特性とうまく付き合いながら、必要なときに支援を受けることで、より快適に生きられるようになるはずです。