女性のASD(自閉症スペクトラム)のしんどさ5つ 

自閉スペクトラム症(ASD)は、社会的なコミュニケーションの困難さや
強いこだわりといった特性をもつ発達障害の一種です。

ASDの診断や研究はこれまで男性中心に進められてきた側面があり、女性の場合は症状が目立ちにくく、発見が遅れることが少なくありません。

しかし、その“目立ちにくさ”の陰には、独自の困難が存在しており、
見過ごされがちな苦しみが潜んでいます。

本稿では、特に女性に見られやすいASDの特徴や困難に
ついて整理し、5つの観点からその「しんどさ」とその対処法について考察します。

女性のASDの基本的特徴

女性のASDの基本的特徴

ASDは一般に、幼少期に発見されるケースが多いものの、
女性においては社会的な適応能力や模倣の高さから、
診断が成人以降にずれ込むことが珍しくありません。

男性と比較して、女性のASDには「受動型」が多く、
これは周囲に合わせすぎる傾向を示します。

結果として、表面的には問題がないように見えても、
内面に強いストレスを抱え込みやすく、うつ病や対人不安などの
二次的な精神疾患(以下、二次障害)を併発するリスクが高くなります。

ASDの主要な特徴としては、以下の3つが挙げられます。

  1. 社会性の障害:場の空気を読むことが苦手で、言動が不自然と見なされる場合があります。
  2. 強いこだわり:些細な事柄への執着や、状況に応じた柔軟な対応の困難さが見られます。
  3. 二次障害のリスク:ストレスの蓄積により、抑うつ状態や不安障害、摂食障害などを引き起こす可能性があります。

女性のASDに特有の現れ方を踏まえ、ここからは特に重要とされる5つの「しんどさ」について詳述していきます。

1. 自己表現の困難さ

1. 自己表現の困難さ

女性のASDでは、自己の思いや感情をうまく言語化し、
人に伝えることが難しいという特徴があります。

これは、生まれ持った言語処理の特性や感情認知の困難さに加えて、
社会的に「適応すること」を過剰に求められた結果、自分を抑え込むことに
慣れてしまっているためです。

さらに、過去に自己表現を試みた際の失敗体験(否定された、無視されたなど)から、
「言わない方が安全だ」と学習してしまうケースも見受けられます。

その結果、内に抱えたストレスが蓄積し、やがて抑うつ状態に至ることもあります。

対策としては、まずは自己理解を深めることが大切です。
そして、感情を小さくてもいいので言語化する練習を始めること。

日記やメモを書くなど、話す以外の手段でも「表現すること」
意識的に積み重ねることで、少しずつ自己表現の力を育むことが可能です。

2. 自己肯定感が下がりやすい

2. 自己肯定感が下がりやすい

ASDの女性にしばしば見られる「過剰適応」

――すなわち、無理をして周囲に合わせる行動は、
一見うまく社会に適応しているように見えます。

しかしそれは、自分自身を否定して他人の期待に従っている状態であり、
内面では「本当の自分は受け入れられない」と感じる要因になります。

また、逆にうまく適応できなかった場合には、社会からの疎外感や
失敗体験が自己否定につながり、結果として自己肯定感の著しい低下を招くことがあります。

この問題への対策は、「小さな成功体験の積み重ね」です。
無理のない範囲で「できた」と思える行動を日常に取り入れ、それを意識的に認識し
記憶として上書きしていくことが重要です。

その際、自分に合った環境や人間関係を見極め、
適切な判断のもとで行動する力を育てることも自己肯定感の回復に寄与します。

3. サポートを受けづらい

3. サポートを受けづらい

女性のASDは、幼少期に特徴が目立ちにくいため、診断が遅れがちです。
これにより、早期に受けられるはずだった療育支援や環境調整の機会を

逃すことになり、適応力の向上やストレス予防の面で
大きなハンデを抱えることになります。

療育とは、発達障害の特性に応じた専門的な支援であり、社会性や
コミュニケーションスキルを学ぶための重要な訓練でもあります。

この機会を逸すると、ASDの特性と日常生活とのギャップに
より苦しむ場面が増え、二次障害の発症につながる可能性が高くなります。

自らの手で補っていくためには、自己理解と対処スキルの学習が重要です。
自身の特性に向き合い、少しずつでも「自分を扱う技術」を習得することが求められます。

ただし、受動的な特性が強い場合、この自主的な取り組み自体が
困難になるため、自己肯定感の改善と並行して行うことが望まれます。

4. 二次障害が出やすい

4. 二次障害が出やすい

前述のように、ASDの特性だけでなく、それに伴うストレスや
適応困難が続くことで、抑うつ状態や対人恐怖症、摂食障害といった
二次的な精神障害を引き起こすリスクが高まります。

女性の場合、感情を内にため込みやすく、周囲には気づかれにくい形
で症状が進行することが多いため、気づいたときにはすでに深刻な
状態になっていることも少なくありません。

そのため、予防的な視点が極めて重要です。
ストレスをため込まないためのスキル(アサーションやリラクゼーション)
を身につけること、自分に合った環境を選択すること、

そして必要に応じて精神科的なサポート(薬物療法や心理療法)
を活用することが勧められます。

5. 自発的な取り組みの困難

5. 自発的な取り組みの困難

受動型のASD傾向を持つ女性にとっては、自ら何かを計画し、行動に移す
というプロセスそのものが高いハードルとなることがあります。

そのため、ASDに対する理解や対処スキルの習得、あるいは社会参加
といった活動においても、受け身のままでいることで取り組みが難しくなるのです。

これに対しては、まず「自分の軸」を持つことが鍵となります。

「何が好きか」「何が嫌か」「何を大切にしたいのか」

といった自己理解を深め、それに基づいた行動をとることによって、
自発性が徐々に育まれていきます。

また、行動そのものに自信が持てない場合には、
自己肯定感の回復を並行して行うことで、より安定した取り組みが可能になります。

おわりに

おわりに

女性のASDは、男性と比べて外から見えづらい形で現れることが多く、
支援の手が届きにくいことが少なくありません。

しかしながら、目立ちにくさの陰には

「自己表現の困難」
「自己肯定感の低下」
「支援の不足」
「二次障害のリスク」
「自発性の困難」

といった複合的な課題が存在しています。

こうした困難に対処していくためには、本人の努力だけでなく
周囲の理解と支援、そして適切な環境づくりが不可欠です。

社会全体がASDの多様性を認識し、一人ひとりに寄り添った支援を
行うことで、誰もが自分らしく生きやすい社会の実現につながることでしょう。