発達障害の特性の一つとして、「怒りやすい」「キレやすい」といったイメージを持たれることがあります。特に自閉スペクトラム症(ASD)と診断された方の中には、日常のちょっとした刺激や変化に過敏に反応し、怒りやすくなる傾向が見られることもあります。しかし、「怒りやすい=悪い人」「キレる=社会に適応できない」といった決めつけは、本人の苦しみを見落とす原因となりかねません。
今回は、発達障害のある方が「キレやすい」と言われてしまう背景やその原因、そして適切に感情をコントロールするための工夫や、周囲に求めたい配慮について詳しく解説していきます。
まず初めに確認しておきたいのは、「怒る」という感情そのものが悪いわけではないということです。誰しも、不快なことや理不尽なことがあれば怒りの感情が湧くのは自然な反応です。ただ、発達障害のある方の場合、その怒りの表現が突発的だったり、感情のコントロールが難しかったりすることがあるため、周囲から「キレやすい」「感情的」と受け止められてしまうことがあります。
特にASDの方は、脳の中でも感情の制御をつかさどる前頭葉の働きが弱まっているとされており、そのために感情の抑制が難しくなる場合があります。感情を処理したり、論理的に整理したりするための「ワーキングメモリ」も限られているため、情報の過負荷に陥りやすく、結果として感情が爆発するということが起こり得ます。

ASDといってもそのタイプはさまざまで、性格や対人関係のスタイルによって「怒り」の出やすさには差があります。
このように、「怒りやすい」とされる背景には、もともとの性格傾向やコミュニケーションスタイルの違いが関係しています。
では、発達障害のある方がどのような場面で「怒り」を感じやすくなるのか、代表的な特徴を4つ紹介します。
前述のとおり、前頭葉の機能低下などにより、感情の制御が難しいという生理的な要因があります。そのため、刺激やストレスに対して反応が過敏になりやすいのです。
ASDの方は「いつも通り」に安心を感じる傾向があります。そのため、急な予定変更や環境の変化に対して強い不安や怒りを覚えることがあります。変化を受け入れるのに時間が必要なのです。
自分なりの「こうあるべき」という価値観が強く、それから外れることに対して違和感や拒否感を抱きやすくなります。たとえそれが社会的に問題のない行動であっても、自分のルールに反していると感じると、強い怒りに変わることがあります。
冗談や皮肉、遠回しな表現が理解しづらく、相手の意図を誤解してしまうことがあります。結果として、悪意がないにもかかわらず「バカにされた」「攻撃された」と受け取ってしまい、怒りにつながることがあるのです。

怒ってしまった本人が「自分が悪い」と責めてしまうことも少なくありません。しかし、怒りを感じる場面そのものを減らすために、周囲の理解と配慮が大きな助けになります。
たとえば、以下のような配慮が有効です。
このような配慮があるだけで、「キレやすい」場面を未然に防ぐことができるのです。
怒りの感情は、完全に消すことはできませんが、上手に付き合っていくことは可能です。以下のような「アンガーマネジメント」の方法を活用することで、自分の怒りと向き合いやすくなります。
● 6秒ルールを実践する
怒りのピークは最初の6秒と言われています。カッとした瞬間に深呼吸をするなど、6秒だけ気持ちを落ち着ける工夫をしてみましょう。
● アンガーログをつける
「何に」「どんな状況で」怒りを感じたかを記録することで、自分の怒りのパターンに気づくことができます。
● 気持ちを落ち着けるルーティンを持つ
例えば、音楽を聴く、コーヒーを飲む、5分散歩するなど、自分なりのリラックス法を決めておくと、怒りが湧いたときの対処がしやすくなります。
「発達障害だから怒りやすい」「感情的だから問題だ」と短絡的に捉えてしまうのではなく、その背景には認知や感情の処理の特性があることを理解することが大切です。
怒りは誰しもが持つ自然な感情です。それを否定せず、適切な表現で伝える方法を身につけること。そして、周囲の理解や配慮があれば、「怒りやすさ」は大きなトラブルにならずに済むはずです。
ご自身や身近な人が怒りのコントロールに悩んでいると感じたら、まずは「怒ってしまう背景」を冷静に見つめ直してみてはいかがでしょうか。