うつ病や適応障害などのメンタルヘルスの問題について、近年は社会的な理解が進みつつあります。しかしながら、心の症状にばかり目が向けられ、身体に現れるサインが見逃されてしまうこともしばしばあります。今回は、「うつ病の主な身体症状」をテーマに、代表的な5つの症状をご紹介しながら、早期発見のヒントとしてご活用いただけるよう、わかりやすく解説いたします。

うつ病は、落ち込みや意欲の低下などが続く「心の病気」としてよく知られていますが、実際には脳の働きに関わる“不調”として捉えられています。特に、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの不足が関与しているとされ、心の症状だけでなく、身体にも多様な不調を引き起こすことがあるのです。
治療の基本は、「休養」「薬物療法」「精神療法」の三本柱が挙げられますが、早期に適切な対応を行うためにも、身体症状への理解が重要となります。

うつ病では、心の症状が注目されがちですが、実際には「不眠」「倦怠感」「めまい」など、身体にもさまざまな症状が現れます。これらは自律神経の乱れによって引き起こされることが多く、いわゆる「自律神経失調症」のような形で出現することもあります。
こうした身体症状は一見すると内科的な問題のように見えますが、検査をしても明確な異常が見つからないことが多いため、見過ごされたり誤診されたりするリスクがあります。
また、「仮面うつ病」と呼ばれる状態では、落ち込みや気分の変化といった典型的なうつ症状が表に出ず、身体の不調が前面に出てくるため、本人や周囲がうつ病であることに気付きにくいこともあります。

ここからは、うつ病の早期発見のヒントともなる「主な身体症状」について、代表的な5つを詳しく見ていきましょう。
① 食欲の低下・体重の減少
うつ病では、しばしば食欲が著しく低下します。これにより食事の量が減り、結果として体重が減少してしまうことがあります。
特に、「食事が美味しく感じられない」「何を食べても味がしない」「食べることが面倒に感じる」といった感覚が強くなるのが特徴です。こうした変化は、本人よりも周囲の人が先に気づくこともあり、重要なサインとなり得ます。
【影響】
② 不眠(眠れない)
うつ病における不眠は、極めて一般的な症状のひとつです。寝付きが悪い(入眠困難)、何度も目が覚める(中途覚醒)、早朝に目覚めてしまう(早朝覚醒)など、そのタイプは多様です。
不眠は単なる症状ではなく、うつ病を悪化させる要因にもなるため、軽視することはできません。
【影響】
③ 倦怠感(だるさ)
「朝起きても疲れが取れない」「体が重くて動けない」といった、持続的なだるさは、うつ病の症状としてしばしば見られます。これは「精神的な疲れ」が身体感覚として現れている状態とも言えます。
【影響】
④ 疲れやすさ(易疲労感)
わずかな活動でも「すぐに疲れてしまう」「集中力が続かない」という感覚も、うつ病の典型的な身体症状です。特に、「休んでも疲れが取れない」という特徴があります。
【影響】
⑤ 多様な身体症状(自律神経症状)
うつ病による自律神経の乱れから、さまざまな身体的不調が現れることがあります。これは「自律神経失調症」とほぼ同様の症状を呈することが多く、部位や症状の種類は人によって異なります。
【主な例】
【影響】

うつ病の診断において、以下のような状況に心当たりがある場合は、身体症状をきっかけとして早めに心療内科や精神科で相談することをお勧めします。
うつ病における身体症状は、目に見える“こころのサイン”であるとも言えます。見落とされがちな身体の声に耳を傾けることで、より早期に適切な支援や治療へとつなげることができます。ご自身やご家族・ご友人の中で、上記のような症状に心当たりがある方がいらっしゃいましたら、どうか一人で抱え込まず、医療機関に相談することをおすすめいたします。