心療内科や精神科で比較的よく診断される「適応障害」。この病気は、ある特定のストレスをきっかけに心身の調子を崩してしまう精神疾患の一つです。しかし、実際になったことがある人でないと、そのしんどさはなかなか伝わりづらいものです。症状だけでなく、社会的、心理的な側面からも人知れず苦しむ場面が多く存在します。
今回は、「適応障害のしんどさ」を5つの視点から丁寧に解説します。ご自身が悩んでいる方だけでなく、身近に適応障害の方がいる方にも、ぜひ読んでいただきたい内容です。

適応障害とは、生活の中で大きなストレスがかかったときに、そのストレスにうまく対処できず、こころや身体にさまざまな症状が現れる病気です。うつ病と似た症状がみられますが、うつ病のように脳の機能に直接的な不調が起こっているわけではなく、あくまで「ストレスへの反応」が中心となります。
適応障害は、気分の落ち込み、不安、意欲の低下といった「うつ症状」が現れるという点で、うつ病と非常によく似ています。しかし、脳の機能そのものが変化しているうつ病とは異なり、適応障害はストレスへの反応であり、ストレスが軽減されれば改善する可能性が高いとされています。そのため、うつ病で使用される抗うつ薬が必ずしも有効とは限らず、治療の柱は「ストレスの対処」にあります。
「ただのストレス反応では?」と思われることもありますが、適応障害ではストレスに対しての反応が非常に強く、日常生活や社会生活に著しい支障が出てしまう点が大きな違いです。
治療の中心は、環境調整(ストレス要因から離れる)とストレスマネジメント(ストレス対処力の強化)です。これらを通じて回復を目指しますが、同じストレス環境に戻ったときや、似たストレスを再び受けたときに、再発する可能性もあります。
適応障害は、単に気持ちが落ち込む病気ではありません。以下のように、多角的な苦しみが重なります。
こころだけでなく身体にも多様な症状が現れます。具体的には以下のようなものがあります。
・心の症状:落ち込み、不安、焦り、イライラ、意欲の低下など
・身体の症状:吐き気、めまい、頭痛、食欲不振、不眠、倦怠感など
・行動面の変化:集中力の低下、人との関わりを避ける、急に怒りっぽくなるなど
働いている方では、月曜日の朝に最も症状が強く出るという「サザエさん症候群」のようなリズムが見られることもあります。これらの症状が強くなると、出勤できなくなったり、日常生活をこなすことすら難しくなってしまうこともあります。
適応障害の方は、自分の変化に対して「こんな自分はダメだ」「弱い人間だ」と自分を責めてしまう傾向があります。
・休職してしまったことへの罪悪感
・家族や職場に迷惑をかけているという思い
・他人からの「甘えじゃないの?」という無理解な声
こうした要素が、自責の念を強め、さらに状態を悪化させてしまう悪循環を生みます。
適応障害の厄介なところは、再発のしやすさです。一度回復しても、同じ職場に戻ったり、以前苦しめられた相手と再び関わると、再発してしまうケースもあります。
また、「また同じことになるのではないか」という予期不安が生まれ、新しいことに挑戦できなくなることもあります。再発予防のためには、
・環境調整:異動や転職などでストレス源を減らす
・ストレスマネジメント:感情のコントロールやリラクゼーションなどの対処法を身につける
ただし、これらを行っても完全に再発を防ぐことはできないため、「再発のリスクと共に生きる」姿勢も必要です。
適応障害の治療では「環境を変える」ことが有効とされますが、実際にはそれができないことも少なくありません。
・経済的に転職や休職が難しい
・家族関係のストレスが原因で、離れることができない
・環境を変えても別のストレスにさらされてしまう
このような場合、「環境を変える」という正攻法が通じず、本人にとっては非常に苦しい状態になります。そのため、
・現実を受け入れ、完璧を求めすぎない
・心理的に距離をとる(感情を切り離す)
・ストレスマネジメントを重視する
といった現実的な対応が必要になってきます。
適応障害は、外見上は普通に見えることも多く、周囲の理解を得ることが難しい場合があります。実際に耳にすることが多い言葉は、
「ただの甘えじゃないの?」
「そんなの気の持ちよう」
「前は元気だったのに、どうしたの?」
このような偏見や無理解は、本人にとって非常に辛いものです。症状そのものに加えて、「理解されないことによるストレス」が重なり、二重の苦しみになります。対策としては、
・無理にすべてを説明しようとせず、理解してくれる人を大切にする
・信頼できる医療者やカウンセラーに気持ちを吐き出す
・自分が元気になったら、同じように苦しむ人の理解者になる
といった方法で、少しずつ周囲との関係を整えていくことが大切です。

適応障害は、「うつ病ほどではない」と誤解されがちですが、決して軽い病気ではありません。
①症状のしんどさ
②自責の念
③再発への不安
④生活との板挟み
⑤周囲の無理解
こうした多角的な苦しみを抱えているため、丁寧な理解と対応が求められます。
大切なのは、「誰かに理解してもらうこと」「無理をせず、自分を大切にすること」です。そして、回復したあとは、同じように苦しんでいる人の理解者として手を差し伸べられる存在になることも、社会全体の優しさにつながります。