近年、心療内科や精神科の外来で「パニック障害」の相談が増えています。中でも代表的なのは、突然襲ってくる強烈なパニック発作ですが、それだけにとどまらず、日常生活のあらゆる場面で多角的なしんどさが存在します。本記事では、パニック障害の概要とともに、その「しんどさ」を6つに分けて詳しくご紹介します。
パニック障害とは、突発的に心身の激しい不調を引き起こす「パニック発作」を繰り返す精神疾患です。発作の経験が強烈であるために、「また起きたらどうしよう」という不安(予期不安)が常に心を支配し、その結果、日常生活にも大きな影響を及ぼします。
さらに、発作の起こりそうな場面を避けようとする「回避行動」が始まると、生活の自由度がどんどん狭まってしまうのも特徴です。
治療は大きく分けて2つの柱があります。
治療は「発作の安定 → 脱感作による慣れ → 薬の減量と中止」と三段階に分かれて進められることが多く、個人差はありますが、寛解(症状が目立たなくなる状態)を目指せる疾患です。

① 発作の強烈さ
パニック障害の中心的な症状である発作は、その突発性と激しさから「このまま死ぬのでは」と思うほどの恐怖を伴います。発作の背景には、自律神経(特に交感神経)の過剰な興奮があります。
身体的には、動悸、呼吸困難、めまい、吐き気、手足のしびれ、冷や汗といった症状が同時に出現するため、まるで重大な疾患に襲われたかのように感じられます。精神的にも、極度の緊張状態、恐怖、混乱が起こり、重度の場合は過呼吸や一過性の失神に至ることもあります。
② 普段からの不安
発作を一度でも経験すると、その記憶が鮮烈に残り、「また起きるのでは」という予期不安に常に悩まされるようになります。これにより、日常生活でも常に気が抜けず、リラックスできなくなります。
さらに、この不安自体が発作を誘発する原因になってしまうため、「不安→発作→さらに不安」という悪循環が形成されやすくなります。
③ 生活の制限
予期不安が強まると、人は自然と「発作が起きそうな場所」や「不安を感じる場面」を避けるようになります。これが回避行動です。
例えば、電車に乗れない、人混みに行けない、会議や授業に出られないなど、生活のあらゆる場面に支障が出ることがあります。しかも、一つ避けると似たような場面も避けるようになり、生活の幅がどんどん狭まってしまうという悪循環に陥ることも少なくありません。
④ 脱感作の大変さ
脱感作法は治療の要ですが、苦手な状況にあえて身を置くことを繰り返す必要があるため、相当な心理的ストレスを伴います。
体調や精神状態に合わせて無理のない範囲で進めること、目標を明確に持つこと、自己暗示(アファメーション)などの工夫も求められます。
⑤ 再発の不安
治療が進み、薬の服用を終えて一時的に症状が落ち着いても、「また再発するのでは」という不安は残ります。パニック障害は再発することもあり、その多くはストレスや疲労がたまったときに突如として起こる傾向があります。
一回の発作で終わる場合もありますが、繰り返し起こるようになると、再び治療が必要になることもあります。日ごろからストレスをため込まない、生活リズムを整えるなど、再発予防の意識も重要です。
⑥ 理解されにくい
最後のしんどさは「人から理解されにくい」ことです。普段は元気そうに見えるため、「気のせいでは?」「性格の問題では?」と誤解されたり、「気合で何とかなる」と言われてしまうこともあります。
確かに脱感作という意味では「慣れ」が治療方針になるのですが、それはあくまで本人の意思で行うものであって、周囲が強制するべきものではありません。理解者がいない孤独感や、自分を責めてしまう心の負担は、症状とは別の形で患者さんを苦しめます。
そのため、誤解や偏見に対しては、
といった対応が必要となる場合もあるでしょう。

パニック障害は、単なる「緊張しやすい性格」や「甘え」では決してありません。強烈なパニック発作に始まり、普段からの不安、生活の制限、治療の難しさ、再発への不安、そして周囲の無理解──多面的なしんどさが日々付きまといます。
一方で、標準的な治療法が確立されており、時間とともに寛解を目指すことも可能です。「もし自分や身近な人が苦しんでいるかもしれない」と感じたら、早めに心療内科や精神科へ相談することが、回復への第一歩になります。