近年、「自閉スペクトラム症(ASD)」という言葉は、かつての「自閉症」や「アスペルガー症候群」といった診断名が一本化されたことにより、社会に広く浸透するようになりました。中でも「軽度のASD」とされる方々は、その特性が目立ちにくいために見過ごされがちでありながら、日常生活や人間関係の中で独特の困難を抱えることが少なくありません。
本稿では、「軽度のASD」の特徴とされる5つの傾向について詳しく解説し、実生活における困りごとや、それに対する具体的な対策について考察していきます。
自閉スペクトラム症(ASD)は、「社会性の障害」と「こだわり」を中心とする発達障害の一つです。DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)では、従来の複数の診断名を統合し、より広い概念としての「スペクトラム」として再定義されました。その結果、軽度とされるケース、いわゆる「グレーゾーン」も診断対象に含まれるようになっています。
軽度の場合、IQは一般的水準以上で、学校や職場で一定の適応が見られることもありますが、人間関係の摩擦や社会的な行動様式の中で悩みを抱えやすく、成人後になってから気づく例も少なくありません。

軽度ASDの方は、相手の立場や気持ちを汲むことが苦手で、「その場にふさわしくない発言」を無意識にしてしまうことがあります。たとえば、デリケートな話題を直接的かつ強い言葉で話したり、会話の流れにそぐわない自分の関心事を一方的に語ってしまう傾向があります。

ASDの特性のひとつに「こだわり」があります。特定の手順やルール、興味関心への強い固執があり、環境や予定の変化にストレスを感じやすい傾向があります。周囲から見れば「些細なこと」に見えても、本人にとっては重要なことなのです。
言葉の使い方や話し方にもASD特有の傾向が表れます。例えば、声の抑揚が乏しい、言葉が機械的、細かいことにこだわりすぎる、などです。こうした話し方は、周囲に誤解を与えたり、第一印象で損をする原因となり得ます。

ASDの方の中には、表情が硬く感情が読み取りにくい、服装や髪型に無頓着で場にそぐわない印象を与えてしまうなど、非言語的な要素で誤解されるケースがあります。結果として、能力があるにもかかわらず評価されにくいこともあります。

軽度ASDの方は「具体的な情報」を好み、「曖昧な指示」「暗黙のルール」が非常に苦手です。例え話や比喩をそのまま文字通り受け取り、指示の意図がつかめず動けなくなることがあります。職場や学校での誤解や孤立の原因にもなります。
「軽度」という言葉から、困りごとが少ない、支援が不要だと誤解されがちですが、実際には軽度なASDであっても特有のしんどさがあります。むしろ、支援の網からこぼれ落ちやすく、自分の困難を見過ごされがちな立場にあるとも言えるでしょう。
とはいえ、自身の特性を理解し、対策を講じていくことは可能です。セルフモニタリングやモデリング、環境調整といった工夫を通じて、社会とのより良い関わり方を築いていくことができるのです。
軽度ASDの特徴は以下の5つに集約されます。
「軽度だからこそ見えにくい」そんな困難に目を向け、対話と理解を通じて、より生きやすい社会を築いていくことが、今後ますます求められていくでしょう。