
ADHD(注意欠如・多動症)は、不注意・多動性・衝動性といった特徴を持つ発達障害のひとつです。近年では、子ども時代に診断されるケースだけでなく、大人になってから「なんだか周囲とうまくいかない」「会話がかみ合わない」といった違和感から、ADHDと気づく人も増えています。
今回は、そんなADHDの特性が“話し方”にどう影響するのか、特に大人のADHDに見られやすい「話し方の特徴」を5つに分けてご紹介していきます。

ADHDの「不注意」の傾向は、会話中にもはっきりと表れることがあります。その代表的なものが「話題があちこちに飛んでしまう」ことです。
たとえば、あるテーマについて話していたはずなのに、いつの間にか全く別の話に移ってしまい、元の話題に戻らないことがよくあります。これは、周囲の刺激に気を取られやすい性質や、思考の多動性が背景にあると考えられます。
このような話し方は、聞いている相手にとって「要点が見えない」「何を伝えたいのかわからない」と感じさせてしまうことがあります。また、会話が脱線してばかりだと、時間を無駄にしたような印象を与えてしまうこともあります。
類似する特徴としては、話の途中で突然止まってしまったり、細かい部分を飛ばしてしまったり、同じ話を何度も繰り返すといったことも見られます。

ADHDの「多動性」は身体の動きだけでなく、言葉にもあらわれます。話し出すと止まらなくなったり、非常に早口になったりするのがその特徴です。
特に、頭の中で次々と考えが浮かび、それをすぐに言葉にしようとするため、話すスピードが自然と上がります。加えて、声が大きくなったり、身振りが大きくなるといったオーバーリアクションも見られることがあります。
このような話し方は、一見すると活発でエネルギッシュな印象を与えるかもしれません。しかし、相手の話を遮ってしまうことが多くなるため、一方的に話してしまっている状態になることもあります。
また、話の流れが急に変わる、感情が表に出やすくなる、声が大きくて威圧的に見えるといった点も注意が必要です。

ADHDの「衝動性」は、会話の中でとても顕著に表れます。そのひとつが、「思ったことをすぐに口に出してしまう」という行動です。
何かを考えるよりも前に言葉が先に出てしまうため、つい不用意な発言をしてしまうことがあり、それが「失言」と受け取られることも少なくありません。これにより、誤解を招いたり、相手の気分を害してしまうリスクが高まります。
また、その場の勢いや気分で話しているために、過去の発言と矛盾してしまったり、言った内容を覚えていないといった事態も起こります。相手からすると「信頼しにくい」「話が噛み合わない」といった印象を持たれる原因になります。

ADHDの特性を持つ方の中には、「聞く」ことが極端に苦手な方もいます。相手が話している間にも、自分の考えが次々と浮かんできて、それを我慢できずに話し出してしまうことがあります。
また、質問をしたのに相手の答えをちゃんと聞かず、同じことを聞き返してしまうこともありえます。これは不注意、多動、衝動性が複雑に絡み合った結果で、本人に悪意があるわけではありません。
しかし、こうした行動は「相手の話を軽んじている」「無礼な態度だ」と受け取られることがあり、人間関係のトラブルにつながることもあります。
この傾向が強くなると、指示や助言を忘れてしまったり、会話の内容が理解できずについていけなくなり、自分の話ばかりをしてしまう傾向が出てきます。結果として「興味を押しつける人」「空気が読めない人」と思われてしまうこともあるのです。

ADHDでは感情のコントロールが難しい場面も多くあります。特に会話の中で不快に感じることがあった場合、急にかっとなったり、怒りを爆発させてしまうことがあります。
これは衝動性によるもので、本人の意志とは関係なく感情が一気に表出してしまうことが多いです。周囲の人にとっては「突然キレた」「豹変した」と感じられ、怖がられたり避けられたりする原因になります。
さらに、感情移入をしすぎて相手の話に入り込みすぎたり、逆に不機嫌さで相手をコントロールしようとしてしまう場面もあります。怒りの反対で、突然落ち込んでしまうことがあるのもこのタイプの特徴です。
今回は、ADHDの話し方に見られる5つの特徴についてご紹介しました。
これらの特徴は、すべてADHDの基本的な特性である「不注意」「多動」「衝動性」に由来しています。そして、多くの場合、本人は無意識にやっていることがほとんどです。

大切なのは、こうした傾向に「気づく」ことです。気づいたうえで、「あえてその逆を意識する」――たとえば、会話の流れを一度頭の中で整理する、相手の話を最後まで聞くよう努力する、深呼吸して感情をコントロールする――といった対策を少しずつ試していくことが、円滑なコミュニケーションへの第一歩になります。
ADHDを持つ方にとって、会話はチャレンジの連続かもしれません。しかし、工夫と意識で、その話し方はきっとより良い方向へと変わっていくことができます。