統合失調症の治療は、発症時の急性期に対処するだけで終わりではない。
回復後の生活においても再発を防ぎながら、自己実現を目指す
「リカバリー」という重要な視点が求められる。
本稿では、統合失調症のリカバリーに向けて本人が気をつけるべき
5つのポイントを紹介しながら、再発予防と社会参加の両立を
どう築いていくかを考えていく。

統合失調症は、幻聴や妄想といった症状が顕著になる脳の病気であり、
ドーパミンと呼ばれる神経伝達物質の異常な働きが関与しているとされている。
このような症状を抑えるために使用されるのが抗精神病薬であり、
急性期を乗り越えた後も服薬を続けることが推奨されている。
再発率が非常に高い病気のため、症状が落ち着いた後も継続的な治療が必要である。
同時に注目されるのが「リカバリー」という考え方である。
これは、病気を抱えながらも
自分らしい人生を歩み、社会に参加する
ことを目指す過程を意味する。
リカバリーの一環として、就労や人間関係の構築を目指すことは重要だが、
これらの活動が過度なストレスを招くこともあるため、
再発のリスクを常に意識しなければならない。
このような背景をふまえ、統合失調症の本人が
避けるべき行動について詳しく見ていく。
統合失調症において、もっとも再発に直結しやすい行動が「服薬の中断」である。
改善したからといって自己判断で薬をやめると、1年以内に再発する確率は70〜80%と
非常に高い数値となる。
再発のたびに症状が悪化する傾向があり、陰性症状や生活機能の後退といった
「後遺症」が残る可能性もある。
薬をやめる理由は人によってさまざまだが、効果を実感しにくい、
あるいは副作用がつらいという理由で中断するケースも多い。
また、病気自体を受け入れきれず、治療への拒否感が強まることもある。
重要なのは、「目に見えない予防の効果」を理解し、
服薬がリカバリーの基盤である
という認識を持つことである。
薬はあくまで土台であり、そのうえでストレス管理や生活支援を
組み合わせることが、安定した生活と自己実現を可能にする。
統合失調症では現実と異なる体験、たとえば幻聴や妄想を経験することがある。
しかし、それらを「行動」に移してしまうと、周囲とのトラブルや
自他への危害といった深刻な問題が生じやすくなる。
たとえば、命令的な幻聴に従ってしまった場合、現実に即さない行動を
とる可能性が高まる。また、誰かに悪口を言われているという幻聴や、
監視されているという被害妄想が強くなると、
過剰な防衛行動や攻撃的な言動につながることもある。
そのため、「思う」ことと「行動に移す」ことの間には
大きな違いがあると認識しておく必要がある。
幻聴や妄想が強くなっても、それをそのまま行動に移さないよう、
まずは一歩引いて考える習慣を持つことが重要だ。
また、幻覚や妄想の内容が現実に即しているかどうかを
冷静に見極める視点を持つことも、行動化を防ぐ有効な手段となる。
それでも制御が困難な場合は、
自ら入院を申し出て安全を確保する
という選択も視野に入れておきたい。
統合失調症の陰性症状には、意欲の低下や
対人関係の回避が含まれ、人との関わりが減っていく傾向がある。
これにより社会的孤立が進むと、不調に気づく人が周囲におらず、
再発のリスクが見過ごされる恐れがある。
孤立状態では、生活が乱れやすくなり、幻聴や妄想に
囚われやすくなるという悪循環も生じやすい。
その一方で、人間関係を求めるあまり、搾取や支配を受ける
といった危険な関係に巻き込まれることもあるため、
関係性の質にも注意が必要である。
有効な対策としては、デイケアや訪問看護、
地域活動支援センターなどを活用する方法がある。
これらは専門職や他の利用者との安定した
つながりを生み出し、孤立を防ぐ役割を果たす。
社会復帰を目指す過程では、無意識のうちに過度な努力をしてしまうことがある。
とくに、病気を周囲に伝えない「クローズ就労」では、配慮を受けにくい
ために負担が増し、過剰な適応行動となることもある。
無理を重ねると、ストレスが蓄積し、再発の引き金になる場合がある。
社会復帰は重要な目標である一方で、自分の体調と生活のバランスを
見極めながら進めていく必要がある。
段階的なステップとして、まずは就労継続支援B型や作業所で
生活リズムと自信を整え、次に
就労移行支援を通じて職業訓練やマッチングを行う
ことが推奨される。
そのうえで、障害者雇用という形で働くことができれば、
適切な配慮を受けつつ安定した就労が可能となる。
生活リズムの崩れは、統合失調症の再発と深く関係している。昼夜逆転や
引きこもり状態が長引くと、体調の不安定さに加えて服薬の乱れが生じ、
再発リスクを一層高める。
また、衣食住が不安定になると、心身の疲労が慢性化し、
結果としてストレスが蓄積されやすくなる。
服薬も不規則になるため、治療効果を維持しにくくなる点も問題である。
生活の枠組みを整えるためには、デイケアへの定期的な通所が有効である。
また、訪問看護では看護師と日常生活について相談しながら支援を受けることができる。
必要に応じて、ホームヘルパーの利用によって家事や
日常生活のサポートを受けることも可能である。

統合失調症の治療では、急性期を乗り越えた後も継続的な再発予防と社会復帰を目指す「リカバリー」が重要な目標となる。その過程において、次の5つの行動は避けるべきである。
これらの行動を避けるためには、自身の病気への理解を深めることと、周囲の支援を活用する姿勢が不可欠である。自分ひとりで抱え込まず、必要な支援を受けながら生活を整え、未来への希望を育てていくことが、リカバリーの確かな一歩となる。