今回は「全般性不安障害(Generalized Anxiety Disorder)」について、症状や背景、治療法、そして周囲の人ができる支援までを丁寧に解説していきます。不安そのものは誰しもが感じるものですが、それが過度で長期間続くと、生活全般に深刻な影響を及ぼすことがあります。そうした慢性的な不安状態を特徴とするのが、この全般性不安障害です。

全般性不安障害とは、特定の対象に限らず、日常生活のさまざまなことに対して過剰な不安が6か月以上続く精神疾患です。例えば、職場での些細なミスをきっかけに「また失敗するのでは」「上司に叱られるのでは」などと強い不安を感じ、そこから健康、家族、人間関係などにも不安が広がっていき、心身ともに疲弊していきます。
実際の例を挙げてみましょう。Aさんは、もともとやや神経質な性格でしたが、仕事もこなし、日常生活を問題なく送っていました。しかし、ある仕事の失敗をきっかけに不安が強くなり、次第に仕事だけでなく私生活の細かなことまで心配するようになりました。夜も眠れず、常に緊張し、日常生活に支障をきたすようになったため心療内科を受診し、「全般性不安障害」と診断されました。
このように、全般性不安障害は、背景に脳内のセロトニン不足などの神経生理学的要因が関係していると考えられており、うつ病との関連性も指摘されています。

この病気の特徴は、単に「心が不安定になる」だけではなく、心身にさまざまな症状が現れることです。以下に代表的な症状を分類してご紹介します。
① 心の症状
② 体の症状
③ 行動の変化
全般性不安障害には、以下の3つの要因が複雑に絡み合っていると考えられます。
① 性格的要因
もともと慎重で几帳面、先読みして考えすぎる性格の方が発症しやすいといわれます。また、自己肯定感が低く、自分の判断や行動に自信が持てない場合、不安が持続しやすくなります。
② 経験的要因
幼少期の家庭環境や、失敗・挫折の経験が、不安を抱きやすい土壌となることがあります。過去の失敗経験から「どうせやっても無駄」という学習性無力感が根付いてしまうこともあります。
③ 生物学的要因
脳内のセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質のバランスが崩れることで、不安がコントロールしづらくなるケースもあります。そのため、抗うつ薬が効果を発揮することがあります。
全般性不安障害には、以下のような特有のつらさがあります。
① 幅広く、慢性的な不安
特定の出来事だけでなく、「家族が事故に遭ったらどうしよう」「病気になったらどうしよう」など、取り留めのない不安が長期間続きます。それに伴い、睡眠障害や慢性的な疲労感も加わり、日常生活に大きな支障をきたします。
② 周囲に理解されにくい
見た目では不調が分かりにくいため、「考えすぎ」「性格の問題」と誤解されがちです。結果として周囲から心無い言葉をかけられることもあり、さらに自己否定感が強まり、悪循環に陥ってしまうのです。
③ 人生への影響
慢性的な緊張状態により、本来の実力が発揮できず、新しい挑戦や成長の機会を逃してしまうことがあります。さらに、うつ病など他の精神疾患を併発するリスクも高くなります。

治療は主に以下の2つのアプローチに分かれます。
① 薬物療法
不安の根本にセロトニン不足が関係している場合、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬が有効とされています。薬が効果を発揮すれば、心の安定を得やすくなり、後述する心理療法の効果も高まる傾向があります。
ただし、薬の効き方には個人差がありますので、合わない場合は他の治療法の検討が必要です。
② 心理的アプローチ
心理療法では、以下のような手法が有効とされています。
全般性不安障害は、外から見えづらい分、周囲の理解と支援がとても重要になります。
① 本人のつらさを理解する
一見普通に見えても、心の中では強い不安と闘っている場合があります。「考えすぎじゃない?」「そんなことで悩まなくても」といった声かけは避け、心の病であることを認識して接する姿勢が求められます。
② ゆっくりと見守る
心理的な改善には時間がかかります。焦らせず、急かさず、進んでいること自体を評価し、温かく見守ることが本人の回復にとって非常に重要です。

不安を抱えることは誰にでもありますが、その不安に心が飲み込まれてしまうと、日常生活は一気に苦しくなります。全般性不安障害は決して「気の持ちよう」ではなく、きちんとした治療が必要な病気です。つらさを一人で抱え込まず、専門家の助けを借りながら、少しずつ回復を目指していきましょう。