今回は「うつ病」について解説いたします。
うつ病とは、気分の落ち込みや無気力などの「うつ症状」が長期間続く脳の不調による病気です。誰にでも起こり得るこの病気は、本人も気づかぬうちに進行することがあり、日常生活や仕事、人間関係に深刻な影響を及ぼすことがあります。
ここでは、うつ病の典型的な症状や原因、治療方法、そして周囲の人の関わり方について丁寧にご紹介していきます。
うつ病は、単なる「気の持ちよう」ではありません。
脳内の神経伝達物質、特にセロトニンなどの働きが乱れることで発症するとされており、れっきとした脳の病気です。気分の落ち込みや意欲の低下といった心の症状だけでなく、身体や行動面にも変化が現れることがあります。
【実例】Aさんのケース
Aさんは元々、明るく精力的に仕事に取り組む会社員でした。残業が続く多忙な日々の中で、徐々に落ち込みが目立つようになり、集中力も落ち、ミスが増えるようになりました。
やがて表情はうつろになり、家族の勧めで心療内科を受診。医師からうつ病と診断され、休職を勧められました。当初、Aさんは自分が「病気」だとは思えず抵抗を示しましたが、ご家族の説得もあり、渋々ながらも治療に入る決意をしたのです。
このように、本人がうつ病に気づけないことも少なくありません。そのため、周囲の気づきとサポートが非常に重要です。
うつ病の症状は、単なる気分の落ち込みだけにとどまりません。大きく「心の症状」「身体の症状」「行動の変化」に分けて見ていきましょう。
1. 心の症状(精神症状)
2. 身体の症状
3. 行動の変化
うつ病は、単なるストレス反応や一時的な落ち込みとは異なります。
診断において重要な点は、「症状が2週間以上持続しているか」、そして**「仕事や学校、家庭などの生活に支障をきたしているか」**です。
よく似た病態に「適応障害」がありますが、適応障害ではストレスの原因から離れると症状が軽減するのに対し、うつ病では原因から離れても不調が続くのが特徴です。

うつ病の発症には、複数の要因が関与していると考えられています。
1. 生物学的要因:脳の機能異常
主にセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどの神経伝達物質の働きが低下していることが知られています。これは、気分のコントロールや意欲に深く関係しており、薬物療法によって改善が見込まれます。
2. 心理的・環境的要因
適応障害を経てうつ病に移行するケースも多く、ストレスが蓄積されることで発症することがあります。

うつ病の本当のつらさは、症状そのものに加えて、「自分を責めてしまうこと」にあります。
1. 症状のつらさ
2. 自己否定と罪悪感
3. 周囲とのズレ

うつ病の治療は、以下の3つが柱となります。
1. 休養
最も重要なのは、「考えすぎず、頭を休めること」です。
仕事をしている場合は休職を勧められることが多く、目安としては3か月程度、以下のような3段階に分けて行います。
2. 薬物療法
主に使用されるのは**SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)**です。効果が現れるまでには2~4週間ほどかかるため、焦らず継続することが大切です。
また、睡眠障害には睡眠薬や抗不安薬などが補助的に処方されることもあります。
3. 精神療法(心理療法)

うつ病の方にとって、家族や身近な人の支えはとても大きな意味を持ちます。以下の点を心に留めていただけると幸いです。
1. うつ病は甘えではない
うつ病は「怠け」や「気の持ちよう」で治る病気ではありません。脳の不調であり、本人の意思だけでコントロールできるものではないのです。責めたり励ましたりする言葉が、かえって追い詰めることもあるため注意が必要です。
2. 家を「休める場所」に
本人は強い罪悪感を抱えており、「休んではいけない」と思い込んでいることが多いです。
そのため、家族には「ここで安心して休んでいい」と思える環境をつくることが求められます。見守る姿勢を大切にし、話したい時に話せる余白を作っておくことが重要です。
3. 慢性化しているときの対応
長期化している場合でも、責めたり急かしたりせず、穏やかに少しずつ行動を促すようにしましょう。イライラをぶつけることは逆効果であることを心に留めてください。
うつ病は誰でもなる可能性のある病気です。そして、きちんと向き合えば、必ず回復に向かうことができる病気です。本人も、そして周囲も、「一緒に乗り越えていく」姿勢を大切にしていきましょう。