「どうしても考えすぎてしまう」「考えても仕方がないのに止まらない」――このような悩みは、うつ病や不安障害の方に特によく見られます。悩みや問題に直面した時、つい頭の中で何度も同じことを考えてしまう。この「ぐるぐる思考(反芻思考)」は、実は気付かないうちに心を疲れさせ、不安や落ち込みを悪化させてしまう原因になることがあります。
今回は「何故考えすぎてしまうのか」「どうすればこの思考の悪循環から抜け出せるのか」について、分かりやすく解説していきます。
私たちは普段、「考える」ことを肯定的に捉えがちです。実際、問題を解決するために考えることは大切な力であり、時に自分を助けてくれます。しかし、その一方で「考えれば考えるほど状況が悪化する」という逆のパターンも存在します。
これは何かしらの課題や困りごとに対してどうすれば良いかを論理的に考え、前進や解決を目指すための思考です。結果として気持ちが軽くなったり行動に繋がったりする、有益なプロセスです。
一方ぐるぐる思考とは、同じことを繰り返し考えてしまいなかなか結論が出ない、もしくは出せない思考パターンのことです。この状態が続くと心が疲弊し、不安や落ち込みが強くなっていきます。いわば「考えるほどに悪化する」思考です。

この反芻思考には様々な悪影響があります。例えば以下のようなものです。
重症化すれば、日常生活に支障が出たり治療として入院を検討しなければならなかったりするケースもあります。これは「考えること=善」という認識が裏目に出てしまっている状態です。
では、どうすればこの反芻思考を少しずつでも手放していけるのでしょうか。ここでは実際に使われる3つの方法をご紹介します。
何かが気になり始めたら、意図的に別の行動や活動に集中する方法です。例えば料理や掃除、散歩など、五感を使う作業が効果的です。頭の中での考えを一旦脇に置き、外の刺激に意識を向けることで、思考の流れを遮断することができます。
「このことを今考えて、どんな良いことがあるのか?」と問い直す方法です。ぐるぐる思考に陥ると、思考自体が目的化してしまいがちです。その思考に意味があるかどうか客観的に分析することで、思考の不毛さに気付くことができます。
考えすぎることが逆効果であることを、自分に繰り返し言い聞かせる方法です。例えば「今は考えるよりも休むことが大切」「考えることが脳を疲れさせてしまう」といった言葉を自分に対して意識的に投げ掛けます。これは、自分の心と脳を守るための「精神的なギプス」のような役割を果たします。

これらの対策を知っていても、「でもどうしても考えてしまう」と感じる方は少なくありません。臨床の現場でもよくあるケースです。その背景には、思考に対する“信念”が深く関わっていることがあります。
多くの人が「問題があるなら考えて解決すべきだ」という考えを持っています。これは、学校教育や社会の評価システムの中で身についた「テスト思考」とも言えるものです。問題を解かなければ減点される、努力して正解に辿り着くことが正しい、という価値観です。
真面目で努力家の人ほど、この価値観が強く根付いています。だからこそ、「気になることを考えずに放っておく」という選択が難しくなるのです。
現実の世界では、「全ての問題に答えがあるわけではない」という事実があります。例えば、相手の性格を変えることや過去の出来事をやり直すことは、いくら考えても解決には繋がりません。
こうした“答えのない問題”については、「考えない」という選択が最も効果的で、かつ自分を守る行動になります。
ぐるぐる思考を手放す第一歩は、「気になること=考えるべき問題」という思い込みに気付くことです。そして、「これは本当に今、考える必要があるのか?」と自分に問い掛けてみましょう。
このような視点を持つことで、「考えることが必ずしも良いことではない」という新たな視点が育っていきます。

考えすぎてしまうこと、ぐるぐると思考が止まらなくなることは、心の不調がもたらす“よくある症状”です。それはあなたが弱いからではなく、むしろ一生懸命生きている証とも言えます。
しかし心を守るためには、“全てを考える必要はない”という柔軟な視点も大切です。考えることが悪いのではなく、「考えすぎないこと」もまた1つの知恵であり、回復への道筋です。
「これは本当に今、考えるべきことだろうか?」
その問い掛けを、日常の中で少しずつ意識してみてください。考えない勇気が、あなたの心を軽くしてくれるはずです。