今回は、「適応障害なのに、あの人はどうして元気そうに見えるのか?」というご質問について、医療的な視点からわかりやすく解説していきます。
まず結論から申し上げますと、「適応障害の方でも、ストレスの原因から離れた場面では元気に見えることがあります」。これは決して珍しいことではなく、適応障害の特徴の一つとも言えます。
適応障害とは、特定のストレス要因(例えば職場の人間関係や仕事のプレッシャーなど)に対して心と体が過剰に反応し、うつ状態や不安状態などの症状が出る病気です。うつ病のように脳の機能低下が主な原因ではなく、「原因となるストレスがあること」によって症状が現れるという点が大きな違いです。
そのため、ストレスの要因から距離を置くと、驚くほど早く回復することがあり、その姿が「元気に見える」と捉えられることがあります。
実際のケースをいくつかご紹介します。

このように、ストレスから一時的に解放されることで症状が軽減し、周囲から「元気そう」と思われる場面が生まれるのです。
適応障害とうつ病では、休職中の経過にも違いがあります。
うつ病の場合、休職が決まってもしばらくは強い倦怠感や不安感、罪悪感に苦しみ、なかなか体が動かず「ぐったり」してしまう方が多くいらっしゃいます。活動が徐々に戻ってくるまでには時間がかかり、回復には比較的長期間を要する傾向があります。
一方、適応障害の場合は、休職が決まった途端にストレスが軽減されるため、比較的早期に心身の状態が改善することがあります。「休んだらすぐ元気になった」といった印象を持たれるのは、このような回復のスピードの違いが背景にあるのです。
ここで、「では、適応障害はうつ病に比べて軽いのですか?」という疑問もよくいただきます。
実際には一概にそうとは言い切れません。確かに適応障害は一時的に回復が早いこともありますが、**復職が近づいたタイミングで再び症状が悪化する「再燃」**が起こりやすい特徴があります。
このため、復帰する際には「元の職場環境に戻る」だけでは再発のリスクが高く、異動や転職など環境の見直しが必要になるケースも多いのです。
適応障害の復職にあたっては、大きく分けて次の3つの方法があります。
① 異動・転職

ストレスの原因となっていた環境を離れることで、症状の再発を防ぐ方法です。うまく環境がマッチすれば、治療自体が不要になることもあります。ただし、それでも再発する場合には、環境以外の内面的な課題への取り組みも必要になります。
② 業務の調整
部署や職務内容を大きく変えることは難しくても、業務量や勤務形態などを柔軟に調整することで、本人の負担を軽減する方法です。ただし、企業側と本人の要望が合致しない場合は、関係が悪化するリスクもあるため注意が必要です。
③ 同じ職場への復帰
もっとも慎重な対応が求められる方法です。ストレス要因が改善されていないまま復職すると、再燃のリスクが非常に高くなります。そのため、十分な内省とストレス対策を事前に行うことが求められます。
1. 内省と振り返り
「復職後に同じようなストレスを感じた時、自分はどう対応するか」をあらかじめ考えておくことが重要です。また、そもそも「なぜこの仕事をするのか」「自分の軸は何か」といった、自己の価値観の見直しも大切になります。
2. ストレスマネジメント
ストレス対策には以下の3つの柱があります。

実は、仕事中に「元気に見える」場合でも、本人が無理をして明るく振る舞っているケースがあります。
いずれも心身に無理がかかっており、悪化のリスクが高いため注意が必要です。
今回は「なぜ適応障害なのに元気に見えるのか?」というテーマについてお伝えしました。
適応障害は、ストレスによってうつ状態になる疾患であり、ストレス源から離れることで比較的早く改善することがあります。しかし、これは「治った」わけではなく、元の環境に戻れば再発するリスクがあるため注意が必要です。
適応障害の回復と復職には、環境の調整と内面的な準備の両方が重要です。ご自身や周囲の人が適応障害と診断された場合には、「元気そうに見える」だけで判断せず、専門家の意見を聞きながら慎重に対応することをおすすめします。