「謝り方講座」(発達障害の方へ)

1,はじめに

 人に謝罪する、謝る機会は誰でもあると思いますが、発達障害がある人は、その機会が一般の人より多くあると思います。ADHDの人は、遅刻や忘れ物、不注意によるミスが多いですし、ASDの人はコミュニケーションの苦手さにより、謝る場面が多いでしょう。今回は、当時者である私(ADHD優勢で若干ASDが入っています)による、謝り方の解説です。

2,謝るのは何の為か

 まず、「謝罪」という行為の有用性について考えたいと思います。「謝るという行為」は基本的に、怒っている相手や落胆している相手の心を静める行為です。基本的に、「謝罪」が成功すれば、相手に許してもらえたり、相手の機嫌が直ったりします。「謝罪は一種のコミュニケーションツールに過ぎない」という見方もできますが、そういった側面がある一方で、心がこもっていない謝罪をすると、さらに怒られてしまうこともあります。

 では、どんな謝り方が良いのでしょうか?ケースバイケースで、ベストな謝り方をするのが大事ですが、アルバイトはじめたての人や、コミュニケーションが苦手で謝り方に不安がある人は多いでしょう。謝り方に「絶対的な正解」はありませんが、「謝罪のテクニック」をいくつか抑えておくと、「謝罪の成功率」がグンとアップします。

 本コラムでは、「ADHDで人の三倍は怒られてきた私」が、謝罪のよりよい方法をお伝えする内容となっています。皆様が、家族や友人、上司に、より許してもらえるような内容となっておりますので、どうぞご覧ください。

3,相手がそんなに怒ってない場合

 相手が友人であって、集合時間に二分遅れてしまったような時は、軽い謝り方で大丈夫です。もう少し長い時間、遅れる場合は、事前に連絡しておくと、寛大な人はもう少し待ってくれるでしょう。

「ごめん、待ったよね」

というように、まず、第一声で謝罪しましょう。

 それから、遅れた理由について、嘘をつかずにいうのが基本です。

「寝坊しちゃって」「電車まちがえちゃって」「道が混んでで」

など、待っていた人は、なぜ遅れたのか気になります。

 それで、集合時間に遅れたくらいでは、それくらいの謝罪で許してもらえるでしょう。もちろん、日頃、時間を守っていることも大事ポイントではあります。

 相手がそんなに怒っていない時は、

「まず謝る」「理由の説明」「日頃の行い」「明るく、丁寧に謝る」

などのポイントを守ると良いでしょう。

「遅刻したせいで大事な用事に遅れた」「お客さんや上司との集合時間に遅れた」

などの場合は、次の章で紹介します。

3,相手が結構怒っている場合

 相手が結構怒っている場合は、下手な謝罪をすると余計怒らせる可能性が高いですが、きちんとした謝罪なら受け入れてくれる可能性はあるでしょう。

「すみません」「ごめんなさい」

か、その上位版である

「申し訳ありません」「申し訳ございません」

をまず、相手の目を見て謝ったあと、頭を下げましょう。

それが、一番シンプルで、効果的です。

その時に、朗らかにしていると、怒らせてしまう可能性があるので、すこし真剣な顔か、申し訳なさそうな顔、あわてている様を見せましょう。

謝罪、という行為の真髄は、ここにあると思います。

 相手が結構怒っているケースでは、クレーム対応の場面なども挙げられます。

そのようなシチュエーションにおいては、たとえ自分が悪くなくても、謝罪しないといけないことがあると思います。そんな場合も、「私は悪くない」というのを顔に出さずに、会社やチームのためと思って、丁寧な言葉遣いでの謝罪と、申し訳なさそうな顔や真剣そうな顔といった「表情作り」が大事です。

毎回、クレーム対応で心の底から謝っていると疲弊しますし、さらに、直接自分のミスでない場合は特にですが、パフォーマンスとして、「丁寧な誠意ある対応」をとることだけ考えて、あまり深く考えないほうが良いでしょう。

日頃の業務の一環として、お客さんに謝罪する機会が多い人は、効果的かつ省エネに、申し訳なさそうな対応をする方法を、謝罪に慣れて体得すると良いでしょう。

4,相手がめちゃくちゃ怒っているとき

 この対応は一番コツがいります。まず念頭に置きたいのは、「謝っても完全には許してもらえないであろう」ということです。もちろん、エクセレントな謝罪をすれば、許してもらえる可能性はありますが、それでも、「謝ったのだから、許してもらえる」と思っていると、それが謝罪の際、自分の態度や雰囲気に出てしまうことがあります。それが相手に伝わって、相手がさらに怒る、というのはよくあることです。

 では、どうしたらよいのかというと、「相手の怒りを鎮める」「和らげる」ことを目指すべきです。相手がめちゃくちゃ怒っているときは、大抵自分にも非がある、もしくは部下や同僚がとんでもないことをした場合です。「表情作り」、とか「謝罪の際の心のコストパフォーマンス」とか考えずに、はにかんだりせず、誠意をもって謝罪しましょう。

 また、他のパターンにも言える事ですが、芸のない平謝りは厳禁です。これも、相手の怒りがさらに燃え盛ってしまう原因になります。なぜそうなるのかというと、平謝りしている人の「反省していない様子」や「とにかくその場をやり過ごそう」としているのが伝わってしまうからです。

 やはり、「相手がめちゃくちゃ怒っているとき」は「相手がなぜ怒っているか」「どこが一番頭にきたポイントか」を理解して、そこに対する答えとして、「自分たちのどこに問題があったか」(例 見通しが甘かった、意識が足りていなかったなどの問題)、また、それに対して深く反省していることが伝わるように謝罪しましょう。

 それでも、怒りが収まらない場合は、相手が

・友人や家族の場合→「時が解決してくれるのを待つ」

・お客さんの場合→「上司を呼ぶ」「揉めそうなら警察を呼ぶ」

・上司や自分の勤める会社の場合→「謝罪する機会が多いようなら、辞めてしまう」

など、柔軟に対応しましょう。

 6,その他の謝罪に関するあれこれ

 このコラムを書いていて思いましたが、「謝罪」というのは、実に奥深い文化です。

中国やアメリカでは、謝罪すると「罪を認めた」ことになり、裁判をふっかけられるという話もあります。また、イタリアなどでは、遅刻した程度で謝罪する人は少ないかも知れません。こんなに、謝罪する民族は日本人くらいではないでしょうか。

 私の見解では、謝罪する民族だからこそ、裁判がそんなに多くなく、事件や事故で「謝罪と反省」がないと憤るのでしょう。本コラムでは、「謝り方講座」と称して、謝罪のスマートな方法を紹介していましたが、人々の中には、共感性が薄い人や、自尊心が高い人は、びっくりするほど謝罪が下手、しない、できない人がいます。

そういった人は、無理に人に謝らなくてもいいのかもしれません。自分が悪いと思ったときだけ謝るというのが、一番、人間として自然でしょう。

また、謝り方が上手くても、それだけで世渡りはできないので、己を貫いてみるのも良いですね。

7,おわりに

 以上が、「謝り方講座」の内容になります。発達障害のある人は、謝る機会が多い半面、その分、謝り方を勉強する機会が多いということもできるかもしれません。

最初は自信がなくても、自然と謝り方が身につく場合もありますし、ご紹介したテクニックを実践するだけで、相手方の印象は良くなるはずです。

 その一方で、やはり、謝るというのは心理的にストレスにもなるでしょう。

発達障害をお持ちの方には、繊細な方もいらっしゃると思うので、謝り疲れた時には、ぜひ、リフレッシュしてくださいね。

どうしても無理な時は、休息のため、環境を整えるために、転職等を検討してみてもいいかもしれません。本コラムをご覧いただき、ありがとうございました。