うつ病や適応障害は、いずれも心の健康に大きく関わる疾患です。これらの病気では「早期発見」と「早期対策」がとても大切で、症状が本格化する前の“初期サイン”に気づくことが、悪化を防ぐカギになります。
しかし、初期症状は人によって異なり、本人も「これが病気の始まりだったのか」と後から気づくことも少なくありません。今回は、特に注意しておきたい“悪化の引き金になりやすい初期症状”を3つ取り上げ、対策のポイントもあわせて解説します。

まず、うつ病と適応障害の基本的な違いを簡単に確認しておきましょう。
● うつ病
うつ病とは、気分の落ち込みや意欲の低下、集中力の低下、不眠などの「うつ症状」が長く続く、脳の機能障害です。脳内の神経伝達物質である「セロトニン」の働きが弱まることが原因の一つとされています。自然に回復することは難しく、多くの場合は抗うつ薬などの治療を要します。
● 適応障害
適応障害は、「特定のストレス」によって、うつ症状や不安症状が一時的に強く出る状態です。脳の構造的な不調というよりも、ストレス反応としての心身の負担と考えられています。基本的にはストレスから距離をとることで改善する傾向にありますが、放置するとうつ病へ移行するリスクもあります。
これら二つの疾患に共通するのは、
です。
初期症状は人によって違います。ある人は「落ち込み」から始まり、ある人は「食欲低下」や「疲れやすさ」などから始まることもあります。同じ人であれば、毎回似たような初期症状が出る傾向がありますので、自分自身の“サイン”を知っておくことが重要です。
その中でも、特に放置すると悪循環に陥りやすい「要注意な初期症状」があります。以下に代表的な3つを挙げます。
1. 眠れない(不眠)
「最近、夜になってもなかなか眠れない」「途中で何度も目が覚める」「早朝に目が覚めてしまい、そのまま眠れない」などの睡眠の問題は、うつの初期によく見られる症状の一つです。
睡眠がしっかりとれないことで、身体的・精神的な疲労が蓄積し、翌日のパフォーマンスが低下します。さらに、眠れないことで「なぜ眠れないのか」と考え込んでしまい、ストレスが増し、また眠れなくなる……という悪循環に陥ることも少なくありません。
対策としては:
2. 楽しくない(興味・喜びの喪失)
以前は楽しかった趣味や遊び、食事などが「何も楽しく感じられない」となった場合、これはうつの代表的な症状の一つです。興味の喪失・快の減退と呼ばれるもので、初期段階で気づかないこともあります。
この状態が続くと、ストレスをうまく発散できなくなり、気分転換ができないまま精神的な疲労が蓄積されていきます。結果的に、うつの進行を早める可能性があります。
対策としては:
3. 考えすぎる(思考の堂々巡り)
「どうしてこんなにうまくいかないんだろう」「また失敗したらどうしよう」など、考えすぎてしまう思考の渦も、うつの初期症状としてよくあります。いわゆる“反芻思考”と呼ばれるもので、頭の中で同じことを何度も繰り返し考えてしまい、心が休まりません。
考えすぎることはストレスを溜め込むだけでなく、睡眠を妨げたり、自己否定感を強めたりと悪循環に直結します。
対策としては:

初期症状に気づいたときは、次の3つを基本に「生活面での対策」を意識しましょう。
1. しっかり休養をとる
仕事や家事の手を少し緩め、休日や平日の夕方以降にしっかり休むようにします。休息は“早期回復のための栄養”です。考えすぎる人は、あえて違うことに集中して思考をそらすのも有効です。
2. 自分に合ったストレス発散
「ストレスはため込まないこと」が大前提です。とはいえ、大きなストレスはすぐに解決しない場合が多いので、できる範囲での気分転換が大事です。ウォーキングや読書、映画、入浴、ペットと遊ぶなど、できることから少しずつ探していきましょう。
注意点としては、「発散しすぎて疲れる」と逆効果になるため、バランスを取ることが重要です。
3. 生活リズムの安定
日中はある程度活動し、夕方以降は意識的に休むという「メリハリ」を作ることで、自律神経が整い、心身の安定につながります。夜勤や不規則勤務などでリズムが崩れがちな人は、特に注意が必要です。
生活で工夫しても改善が見られない、または症状が悪化してきたと感じる場合は、以下の対応も視野に入れてください。
「こんなことで受診していいのかな」と遠慮する必要はまったくありません。初期の段階で受診することで、回復への道が早まることも多々あります。
以下の3つは特に注意したい初期症状です:
これらのサインに気づいたら、「しっかり休む」「ストレスを発散する」「生活リズムを整える」といった基本対策をとってください。そして、必要であれば遠慮せずに相談・受診を検討しましょう。
心の健康は、目には見えにくいけれど、確実に私たちの日常に影響を与えています。自分自身の変化に気づき、早めに対処することが、回復への第一歩になるのです。