今回は、発達障害の一つであるASD(自閉スペクトラム症)について、「どれだけ努力しても不自然さが残ってしまい、周囲から笑われてしまう」という悩みに焦点をあてて考えていきたいと思います。
結論から言えば、「笑いたい人には笑わせておく」という一見突き放すような姿勢も、ときに必要です。ですが、その言葉の裏には、積み重ねた努力と、自他の限界への理解、そして自己信頼の大切さがあることを丁寧に見ていきたいと思います。

ASDとは「自閉スペクトラム症」のことで、生まれつきの神経発達の違いにより、対人関係やこだわりの強さに特徴が見られる発達障害です。
幼少期に見つかることも多いですが、近年では10代や成人後に診断されるケースも増えてきました。ASDにはいくつかのタイプがありますが、今回は以下の4つのタイプについて扱います(尊大型は除外)。
これらはいずれも、「対人関係におけるズレ」を抱えてしまう傾向があり、ときにそれが相手を不快にさせたり、逆に傷つけられてしまう原因にもなります。

ASDの本質的な問題の一つは、「無意識のうちに他者から奪ってしまうこと」があります。
また、こだわりが強い場合は、次のような形で相手から時間やエネルギーを奪ってしまうことがあります。
このような「奪う関係」が続いてしまうと、社会適応は難しくなります。よって、ASDの人が社会の中で穏やかに過ごすためには、「できるだけ奪わず、可能であれば与える」姿勢が求められるのです。
ここで登場するのが「大仰型」のASDです。大仰型は、礼儀や表現力を意識的に磨くことで、他者に不快感を与えず、関係性の摩擦を減らしているタイプです。
特徴としては、以下のような努力が見られます:
こうした姿勢は、まさにASDの弱点を意識的にカバーする努力の結晶です。無礼な言動やこだわりの押し付けをやめ、最低限の交流と自己主張が可能になることで、生活のしやすさも改善されていきます。

しかし、いくら努力しても「不自然さ」が完全になくなるわけではありません。
これらは、ASDという障害の本質的な特性であり、完全に克服できるものではありません。努力しても、やはり自然な感覚との差が出てしまい、「変な人」「面白い人」と笑われることもあります。
ここで大切なのは、「同じできないでも意味が違う」という視点です。
例えば、外国語の習得を頑張っても、強いなまりが残ってしまう。あるいは、運動を努力しても才能の差に勝てず試合で負けてしまう。そうした状況を「笑えるか」と問うならば、誰もが「笑えない」と答えるのではないでしょうか。
ASDの方も同じです。不自然さが残ってしまっても、そこに至るまでの努力は、十分に尊重されるべきなのです。

そうした背景を踏まえて、最も大切なのは、「自己信頼」を持つことです。
これらを自ら認め、信じるということが、心の支えになります。
また、周囲の言葉すべてを真に受ける必要はありません。信頼できる人からの助言には耳を傾け、改善のヒントにすること。一方で、悪意や嘲笑には反応せず、受け流すこと。
この「聞くべき声」と「聞かなくていい声」の選別は、経験によって培われていきます。
笑われることに傷つくのは当然です。だからこそ、日常的に取り組める工夫も必要です。
1. 表現スキルのさらなる工夫
TPOに合わせた表現の練習を重ねることで、少しずつ違和感を和らげることは可能です。
2. ストレスケアの徹底
不自然さを笑われることは、大きなストレスです。あらかじめストレスがかかる前提で、自分に合った発散方法を持っておくことが大切です。
3. 自分の強みを活かす
不自然さがあるからといって、強みがないわけではありません。
迷惑をかけていないのであれば、あとは自分の得意なこと、興味のあることを活かして、自信を持って進んでいくことが大切です。
ASDは、対人関係や生活面に大きな影響を及ぼす発達障害です。中でも、「無意識に他者から奪ってしまうこと」への対策が大きなテーマとなります。
努力を重ねることで、不自然さをカバーする「大仰型」的な適応が可能になることもありますが、それでも残るズレを笑われてしまうこともあります。
そんなときこそ、自分の歩んできた道のりと努力を信じる「自己信頼」が何よりも大切です。
聞くべき言葉を選び、悪意は受け流しながら、自分の強みを活かしていく――それが、ASDと共に生きるうえでの現実的で健全な道なのかもしれません。