本日は、女性に見られるASD(自閉スペクトラム症)の特徴について、特に代表的な5つの側面に焦点を当ててご説明いたします。ASDは発達障害の一種ですが、一般的に女性においてはADHD(注意欠如・多動症)よりも診断頻度が低いとされております。しかし、臨床の現場では、いわゆる「グレーゾーン」の方々も含め、ASDに関連するご相談は決して少なくありません。
まずは、ASDそのものの特徴、そして特に女性における特徴について整理していきましょう。
ASDの主な特徴としては、大きく以下の2点が挙げられます。

相手の表情、視線、身振り、雰囲気といった非言語的なサインを読み取ることが難しく、対人関係において戸惑いや誤解が生じやすい傾向があります。

これらは性別を問わず共通して見られるASDの特徴ですが、女性の場合にはこれらに加えて、特有の傾向も見られます。例えば、男性よりも受動的で周囲に合わせやすい「受動型」と呼ばれる傾向が強く、一見して目立たないことが多いため、診断が遅れやすい傾向にあります。その結果、長年の我慢が蓄積し、うつなどの二次障害へとつながるケースも少なくありません。

雑談とは、特に目的を定めず自由に会話を楽しむコミュニケーションの形ですが、ASDの方にとってはこの「目的のない会話」が非常に難解に感じられることがあります。特に女性においては、思春期のガールズトークや、職場でのちょっとした会話、恋愛・結婚後の「ママ友」との関係など、雑談の機会が重要な社会的スキルとして求められる場面が多く存在します。
ASDの方にとって雑談が苦手な理由としては、以下の点が挙げられます。
これらが組み合わさることで、雑談自体が大きなストレスになり、対人関係の構築にも影響を与えることがあります。
ASDの特性の一つとして、「同時に複数の作業をこなす」ことへの困難さがあります。現代社会では、仕事や家庭の場面においてマルチタスクが当たり前に求められる傾向がありますが、ASD傾向のある方にとっては、これが大きな負担となる場合があります。
特に女性の場合、家事、育児、仕事など、様々な役割を同時に求められることが多く、それが心身の負荷につながりやすくなっています。また、同性の中で比較されやすいという環境も、自己評価の低下につながる一因となりえます。
ASDの方には、感情表現が控えめであったり、表情や声の抑揚が少ないといった傾向が見られることがあります。これは「無愛想」「冷たい」などと誤解されることもあるため、本人の意図とは異なる評価を受けることがあります。
表情や抑揚が乏しくなる背景には、社会性の障害と感覚過敏・鈍麻といったASDの特性が関係しています。対策としては、意識的に表情をつけるようにする訓練や、他者の表現を参考にした「モデリング」の活用などが効果的です。一方で、自然な表情表現が難しい場合は、自分のスタイルとして「クールな印象」を演出するなど、無理のない自己表現を確立することも選択肢となります。
女性のASDには、受動的な特性が目立つ傾向があります。自分の意見を持ちにくく、また自己主張が苦手なことから、周囲の意見に合わせて行動することが多くなりがちです。
この「流されやすさ」は一見すると協調的で問題がないように見えますが、内面では強いストレスを抱えていることがあります。自分の意志と異なる選択を重ねることにより、心身への負担が蓄積し、やがてうつ状態や身体的不調といった二次障害に繋がるリスクがあります。
重要なのは、「理不尽な要求にはノーと言える」スキルを身につけること。そして、自分の価値観や「軸」を模索し、自分らしい意思表示の方法を見つけることが、健やかな対人関係の維持に役立ちます。
女性のASDにおいて特に注意が必要なのが、長年にわたる「過剰適応」による二次障害のリスクです。一見、周囲にうまく適応しているように見えても、内面では強いストレスや葛藤を抱えており、うつ病、不安障害、摂食障害などの形で表面化することがあります。
また、身体的な症状(頭痛、疲労感、起床困難など)として現れることもあり、精神的な問題であることが見過ごされてしまうことも少なくありません。
早期発見と早期対応が極めて重要であり、診断を受けることで適切な支援や対策を講じることができます。環境の調整や、ストレスマネジメントの手法を身につけることで、二次障害の予防や改善につながります。
女性におけるASDは、その特性が目立ちにくいため、見過ごされやすい傾向があります。しかし、その一見「静か」な困りごとの中には、深刻なストレスや葛藤が潜んでいることもあります。
本日ご紹介した代表的な5つの特徴――
――これらはいずれも、ASDに気づく重要なヒントとなるものです。
大切なのは、自分の傾向を正しく理解し、それに合った環境やサポートを選びながら、自分らしい生活を築いていくことです。無理に「普通」を目指す必要はなく、むしろ「自分の得意・不得意」を知ることで、より豊かで穏やかな日々を過ごす手助けとなるでしょう。