不眠症ですがお酒を飲めば眠れます

お酒を飲めば眠れる」は本当に不眠症に効く?そのリスクと正しい対処法

不眠で悩んだとき、「お酒を飲めば眠れるから大丈夫」と考える方は少なくありません。実際、寝酒の習慣を持っている人や、酔って眠ることで一時的に不眠をしのいできたという経験がある人もいるでしょう。

しかしながら、専門的な観点から見ると、「お酒で眠る」という対処法はあまりおすすめできません。今回は、不眠症とお酒の関係について丁寧に解説し、代わりにどのような対処法が望ましいのかについても詳しくお伝えします。

不眠症とは ― 放置できない心身のサイン

不眠症とは、様々な原因によって「寝つけない」「途中で目が覚めてしまう」「早朝に起きてしまう」といった睡眠の問題が続く状態を指します。単なる睡眠不足ではなく、日中の活動にも支障をきたすことから、立派な治療対象となる症状です。

背景にはストレス、生活リズムの乱れ、加齢、さらにはうつ病や不安障害といった精神的な疾患が隠れていることも少なくありません。つまり不眠は、他の疾患の症状として現れることもあれば、逆に不眠が引き金となってうつ病を発症するというケースもあるのです。

こうした背景を考えると、不眠を単に「そのうち治るだろう」と放置せず、早めに対策をとることが大切になります。

お酒で眠ることのリスク ― 一見効果的だが本質的ではない

「お酒を飲むと眠くなる」「酔うとよく眠れる」という体験をしたことがある方も多いと思います。このような「寝酒(ナイトキャップ)」は以前の日本でも一定の習慣として浸透していました。

確かに、アルコールには中枢神経を抑制する作用があり、一時的にリラックスしたり、寝つきがよくなったりする効果があります。この点では、睡眠薬に似た働きを持つことも事実です。

しかし、ここに落とし穴があります。

眠りの質を大きく損なう

眠りの質を大きく損なう

アルコールで眠った場合、たしかに寝つきはよくなっても、深い眠り(徐波睡眠)が減り、眠りの質が低下する傾向があります。途中で何度も目が覚めたり、早朝に起きてしまったりするのです。しかも、翌朝になってもアルコールが体内に残り、倦怠感や集中力の低下を招くこともあります。

耐性がつくリスク

継続的に寝酒をしていると、次第に同じ量では眠れなくなり、より多くのお酒が必要になります。これが「耐性」です。結果的に、飲酒量が増え続け、アルコール依存症のリスクを高めることになります。

肝臓への負担と生活リズムの崩壊

飲酒量の増加は、肝機能障害や高血圧などの身体的リスクも引き起こします。また、日中にもアルコールの影響が残ることで、仕事や生活のパフォーマンスが落ち、生活リズムが崩れてしまうこともあります。

以上のように、お酒による「眠り」は一時しのぎにはなっても、長期的には多くの問題を引き起こすことが明らかです。

不眠の正しい対処法 ― 3段階のアプローチ

不眠への対処は、いきなり薬に頼る必要はありません。まずは生活習慣を見直し、それでも改善が難しい場合には薬を検討するという3段階のステップがあります。

第1段階:薬に頼らない「睡眠衛生」の実践

最初に取り組むべきは、「睡眠衛生」と呼ばれる生活習慣の見直しです。具体的には以下のような方法が有効です。

  • 就寝前にリラックスする時間を確保する:スマホやPCの画面を見ない、ぬるめのお風呂に入る、アロマや音楽でリラックスするなど。
  • 「寝なければ」と焦らないこと:寝よう寝ようと意識することでかえって交感神経が高まり、眠れなくなってしまいます。「最悪寝なくても大丈夫」と少し楽な気持ちで構えることも大切です。

第2段階:依存の少ない新しいタイプの睡眠薬

生活改善だけでは難しい場合には、依存性が少ない睡眠薬を使用する選択肢があります。以下は代表的な3種です。

  • ラメルテオン(商品名:ロゼレム)
     体内リズムを整えるホルモン「メラトニン」に類似した作用を持ち、自然な眠りを促します。効果はややマイルドですが、依存性が極めて低く、安全性が高い薬です。
  • スボレキサント(ベルソムラ)
     覚醒に関わる脳内物質を抑えることで、眠りを維持しやすくします。中途覚醒が多い人に向いていますが、人によっては翌朝に眠気が残ることがあります。
  • レンボレキサント(デエビゴ)
     作用時間が比較的短く、寝つきが悪いタイプの不眠に向いています。こちらも朝の眠気に注意が必要ですが、依存性は低めです。

第3段階:一般的な睡眠薬の使用

第3段階:一般的な睡眠薬の使用

第1・第2段階で改善しない場合には、より強力な一般的な睡眠薬が選択されます。依存や耐性のリスクはゼロではありませんが、適切に使えばお酒に頼るよりもずっと安全です。

  • ゾルピデム(マイスリー):短時間型。寝つきに特化。
  • ブロチゾラム(レンドルミン):短時間型。寝つき・持続のバランス型。
  • ニトラゼパム(ベンザリン):中間型。眠りの持続を重視。

こうした薬は医師の管理のもと、適切な量と期間で使うことで、安全かつ効果的な対処が可能です。

まとめ ― お酒に頼らず、正しい方法で不眠に向き合う

不眠症は単なる寝不足ではなく、心身の不調を映し出す重要なサインでもあります。特にうつ病などと関わることも多いため、放置せず早めの対応が大切です。

「お酒で寝る」という方法は、一時的な寝つきを助ける効果はあるものの、眠りの質を下げたり、依存・耐性・生活への悪影響といった問題があるため、根本的な解決策にはなりません。

不眠には、まず生活の見直し、次に依存のない薬、最終的には一般的な睡眠薬という3段階の方法があります。自己判断でお酒に頼るのではなく、心療内科や精神科などの専門機関に相談することが、安心して眠れる日々への第一歩です。