今回いただいたご相談は「適応障害です。転職すれば解決ですよね?」というものです。
結論から申し上げますと、「確かに転職によって改善することも多いですが、繰り返す場合には注意が必要です」というお答えになります。
適応障害は、強いストレスによって気分が落ち込んだり、不安感が高まったりといった“うつ状態”が出る病気です。ただし、うつ病のような脳機能そのものの異常とは異なり、「環境に適応できないこと」が主な原因とされています。そのため、治療の基本は環境調整──つまり、ストレス源となっている環境を見直したり、対処したりすることです。
適応障害を引き起こすストレス要因は、大きく分けて以下の2つがあります。
1. 外的なストレス要因(環境からのストレス)
これは、職場の人間関係や業務内容など、外側からのストレスです。単なる“嫌なこと”というより、相性の問題も含まれます。たとえば、周囲の人と価値観が合わない、過剰な業務負担があるなどが該当します。
2. 内的なストレス要因(個人の特性によるストレス)
一方で、人によっては「考え方のクセ」や「ストレスに対する耐性の弱さ」など、自分の内側にある性質が原因となる場合もあります。たとえば、真面目すぎて自分を追い詰めてしまう、失敗を過度に恐れる、人付き合いが極端に苦手などの特徴がある場合、それ自体がストレスを生みやすくなってしまいます。


外的なストレスに対しては、環境を変えることが非常に効果的です。その中でも「転職」は、職場という大きな環境そのものを変えるため、大きな改善が期待できます。
実際、以下のような例があります。
【成功例】
ある方は職場でのストレスを感じ、適応障害を発症して休職しました。その後、比較的早期に症状が改善。しかし、復職が近づくとまた不調が再発。結果的に退職し、新しい職場に転職しました。転職後は症状が出ず、薬も不要となり、安定して働けているというケースです。
このように、環境にストレスの原因がある場合は、転職が非常に効果的です。
しかし一方で、転職をしても再発を繰り返してしまう方もいます。
【再発例】
ある方は職場でのストレスにより適応障害を発症。休職し、回復後に転職。しかし、新しい職場でもストレスを感じ、再び適応障害に。さらに転職を繰り返したものの、再発が続いたというケースです。
こうしたケースでは、外的な環境を変えるだけでは根本的な解決に至らないことが多く、内的な要因も併せて考える必要が出てきます。
適応障害が何度も繰り返される場合、以下のような背景が隠れていることがあります。
1. 職場とのミスマッチの反復
「自分に合っている」と思って選んだ職場が、実は客観的に見て合っていなかったというケースです。自分にとって「楽そう」「良さそう」と思った仕事でも、実際に働いてみると負担が大きかったり、人間関係が合わなかったりすることは珍しくありません。特に繰り返し適応障害になる方は、仕事の探し方や選び方の角度を変えることが大切です。
2. ストレスへの過敏さ
ストレスに対して“過敏”である人は、小さなことでも強いストレスを感じやすくなります。そのため、どんな職場に行ってもストレスが溜まりやすく、適応障害を繰り返してしまう傾向があります。
このような場合は、考え方のクセを見直したり、ストレスをため込まない工夫をしたり、発散する方法を身につけたりするといった「ストレスマネジメント」が有効です。
3. 発達障害の可能性
何度も転職しても適応できず、トラブルや誤解が絶えない場合は、背景に発達障害(ADHDやASD)がある可能性も考えられます。
ADHDの主な特徴:
ASDの主な特徴:
これらの特徴が強く見られる場合、一度専門機関を受診して、発達障害の有無を確認することも選択肢となります。

「適応障害は転職すれば解決しますか?」という問いに対して、答えは「多くの場合で改善は見込めるが、再発する場合は注意が必要」となります。
適応障害は、ストレスに対する一時的な反応であり、環境調整──その代表が転職──によって大きく改善することがあります。しかし、再発を繰り返す場合には、以下のような内的要因を見直す必要があります。
転職はあくまで「環境を変える手段の一つ」であり、根本的な自己理解や内面への対処と併せて考えることが、再発防止には重要です。
もし今、適応障害で悩んでいる方がいるならば、「ただ環境を変えればいい」と安易に考えるのではなく、自分自身の内面ともしっかり向き合うことが、真の回復への近道になるかもしれません。