躁うつ病(現在は「双極性障害」と呼ばれています)は、気分が高揚する「躁(そう)」状態と、気分が落ち込む「うつ」状態を交互に繰り返す精神疾患です。躁うつ病は、古くから知られており、歴史的な著名人にも多くの患者がいました。たとえば、作曲家ベートーベンやシューマン、日本の文豪である夏目漱石、宮沢賢治、太宰治も躁うつ病であったことが知られています。
この病気の特徴は、エネルギッシュで活発な生活を送る「躁」状態と、極度に落ち込み引きこもってしまう「うつ」状態を何度も繰り返す点にあります。躁状態では、活動的で寝ることなく元気に過ごし、多くのアイデアが浮かび、社交的になりますが、その反面、衝動的な行動や浪費、危険な行動を取ることもあります。うつ状態に入ると、極度の疲労感や無力感が押し寄せ、日常生活が困難になることがしばしばです。
かつては「躁うつ病」と呼ばれていましたが、現在では精神医学的な正確さを期して「双極性障害」と呼ばれています。双極性障害とは、「躁」と「うつ」という感情の両極を行き来することから、この名前が付けられました。10年ほど前から、うつ病と双極性障害は異なる疾患であることがより明確に認識され、正確な診断が求められるようになっています。

双極性障害には2つのタイプがあり、それぞれの症状に応じて治療方法も異なります。
特にⅡ型は、うつ病と間違われやすいため、治療に時間がかかることがあります。
うつ病は、強いストレスや心理的負荷によって誰にでも起こりうる病気で、適切な治療を行うことで数カ月から数年で回復することが期待されます。対して、双極性障害は遺伝的要因が強く、発症年齢も10代から20代と若い世代に多く見られます。また、治療が長期にわたることが多く、完全な回復が難しい場合も少なくありません。
躁状態にあるときは、本人に不快感がないため、病院を受診しないことが多いです。そのため、うつ状態に陥った際に初めて病院を訪れますが、躁状態の存在を医師に伝えないことがあり、結果としてうつ病と誤診されることがよくあります。統計によれば、最初にうつ病と診断された患者の約2割が後に双極性障害と診断されるというデータがあります。
双極性障害の診断を確定するために、「光トポグラフィー」という検査が利用されることがあります。これは脳の血流を測定する検査で、うつ病、双極性障害、統合失調症を区別するための補助的な手段です。保険適用もあり、費用は約2,000円程度ですが、信頼性は約7割とされ、診断を確定するものではありません。

双極性障害の治療には、気分安定剤や抗精神病薬が使用されます。一般的な処方薬には、デパケン、リーマス、ラミクタールなどの気分安定薬や、ジプレキサ、エビリファイ、セロクエル、リスパダールなどの抗精神病薬があります。しかし、どの薬が確実に効くかは個人差があるため、複数の薬を組み合わせたり、うつ状態が強い場合には抗うつ薬を併用することもあります。
双極性障害は、治療に長期間を要する病気です。再発率は9割に達し、多くの患者が再発を経験します。そのため、いかに再発を防ぐか、そして再発した場合に早期に対処するかが重要です。糖尿病や高血圧の治療に似たアプローチが求められ、病気を完全に治すことを目指すのではなく、病気と共存しながらコントロールしていくことが目標となります。
特に重要なのは規則正しい生活習慣と、睡眠の確保です。睡眠不足や睡眠の乱れは再発の兆候となることが多いため、注意が必要です。家族や医師と協力しながら、自分自身で病気を理解し、コントロールしていく手段を学ぶことが大切です。

双極性障害(旧称:躁うつ病)は、遺伝的要因が強く、治療には時間がかかります。早期発見と適切な治療が、病気との共存を助け、生活の質を向上させるためには欠かせません。もし気になる症状がある場合は、専門医に相談することが重要です。