今回は、「気づくこと」の重要性について、精神疾患や発達障害を中心に考えていきたいと思います。
精神科医療の現場では、うつ病や統合失調症、双極性障害(躁うつ病)といった疾患に加え、発達障害などの相談が年々増えています。これらの問題に共通するのは、「気づくこと」が非常に重要な出発点になるという点です。
薬による治療が可能な疾患もあれば、薬だけでは効果が限定的な障害もあります。しかし、いずれの場合でも「まず気づくこと」がなければ、その後の治療や支援につながっていきません。
今回は、気づくことによって何ができるのかを、三つの側面――①早期治療、②予防、③セルフケア――に分けて詳しく見ていきたいと思います。

精神疾患において、早期発見・早期治療は予後を大きく左右します。たとえば、うつ病には抗うつ薬、双極性障害には気分安定薬、統合失調症には抗精神病薬などの薬物療法がありますが、これらの効果を最大限に生かすには、できるだけ早く治療にたどり着く必要があります。
ここで重要なのが「未治療期間」という考え方です。これは、症状が出始めてから実際に治療を開始するまでの期間を指し、この期間が長ければ長いほど、症状は深刻化し、治療の難易度も高くなる傾向があります。
たとえば統合失調症では、早期に薬物治療を始めることで、その後の社会的な回復や生活の質が大きく改善するとされています。双極性障害においても、気分の波がひどくなる前に適切な薬を使うことで、再発を予防し、安定した生活を送りやすくなります。
うつ病では、適切な休養とともに薬物療法を組み合わせることで、より早い改善が期待できます。そのためには、まず「これはうつ病かもしれない」と気づくことが何よりも大切なのです。

気づくためには、あらかじめ「病気を知っていること」が欠かせません。たとえば、統合失調症では幻聴や妄想が主な症状として現れます。「誰かに監視されている気がする」「声が聞こえる」といった体験は、病気のサインかもしれないのです。
双極性障害では、気分が高揚して活動的になる「躁状態」と、落ち込んで意欲がなくなる「うつ状態」とが周期的に現れるという特徴があります。「やけに元気で活動的だったかと思えば、急に落ち込んでしまう」といった気分の波を自覚したら、それも気づきの一つのきっかけになるでしょう。
うつ病は、「落ち込み」だけではありません。集中力の低下、不安、食欲や睡眠の乱れなど、体の不調として現れることもあります。これらを「ただの疲れ」と見過ごしてしまうと、気づくチャンスを逃してしまいます。
次に、気づくことが予防につながる場合について考えてみましょう。
精神疾患の多くには、「前ぶれ」となる症状が存在します。これに気づき、早めに対処することで、病気の発症を未然に防ぐことも不可能ではありません。
代表的な前兆としては、
これらのサインが現れたときには、生活の中でできる対策を講じることが大切です。
◎予防のためにできること:

発達障害などの場合、「薬がないから何もできないのでは」と感じる方もいらっしゃいます。しかし、気づくことでセルフケアの選択肢は広がります。
発達障害は治癒を目指すよりも、特性に応じた対処や工夫をすることで日常生活を安定させていくアプローチが主になります。その第一歩もやはり「自分の傾向に気づくこと」です。
◎セルフケアの方法:

私たちの心と体の不調に対して、多くの治療法や対処法が存在します。しかし、そのすべての出発点は「気づくこと」です。
気づくことで初めて、早期治療につながり、予防が可能になり、自分に合ったセルフケアの取り組みを始めることができます。
精神疾患や発達障害といった、目に見えにくい困難にこそ、まずは自分自身、あるいは周囲の人が「気づく」ことが求められます。そして、その気づきが、回復や安定した生活の糸口になるのです。