今回は、躁うつ病(双極性障害)において生じる6つの代表的な状態についてご紹介いたします。
躁うつ病とは、一見すると正反対である「躁」と「うつ」という2つの極端な精神状態が交互に現れる病気であり、その症状は時間とともに多様に変化します。そのため、治療や日常生活において、状態の変化を的確に理解し把握しておくことが非常に重要です。
躁状態(そうじょうたい)
まず最初にご紹介するのは「躁状態」です。これは、うつ状態とは真逆の、非常に気分が高揚した状態であり、「何でもできる」と感じるほどの過剰な自信やエネルギーにあふれた状態です。
この状態では、活動量が大幅に増え、周囲の状況を顧みず突き進んでしまう傾向があります。人によっては、イライラしたり、金銭の浪費に走るなど、対人関係や生活においてトラブルを引き起こすリスクが高まります。
代表的な症状としては:
- 高揚感・誇大感:自分が何でもこなせるような気分になり、実力以上のことをしようとする。
- 多弁・観念奔逸:話す量が増え、思考が次々と浮かんで話題があちこちに飛ぶ。
- 衝動行動・浪費:思いつきで行動し、高額な買い物をしたり、後先を考えず行動してしまう。
注意すべきリスク:
- 金銭トラブル:借金や浪費が生活を圧迫する可能性。
- 対人トラブル:他者に対して強引になり、人間関係に亀裂が入る。
- 衝動行動:突発的な行動により、事故や法的問題に巻き込まれる危険性。
対策
- 本来は「休養」や「刺激の回避」が必要ですが、躁状態の特性上、本人は自身の異常を自覚しにくく、治療や休息を拒むことも少なくありません。場合によっては、入院などの専門的な治療が必要になることもあります。
次にご紹介するのは「軽躁状態」です。これは、明確な躁状態に至る前の、比較的軽度な高揚状態です。
一見するとエネルギッシュで前向きな状態に見えることが多く、本人も「良い調子」と感じている場合が多いです。しかしながら、これは不安定な状態であり、見過ごされがちなリスクも潜んでいます。
軽躁状態の特徴:
- 思考が冴え、普段より頭がよく回ると感じる。
- 気分が軽やかで、活動的になる。
- 疲れにくくなり、睡眠が少なくても平気に感じる。
軽躁状態に潜むリスク:
- 躁状態への移行:このままの勢いで過活動になってしまうと、より重度の躁状態に進行する可能性があります。
- うつ状態への反動:一時的な高揚の後、強いうつに急落することもあります。
- 細かな対人トラブル:気分の高ぶりが他人に対する強い態度や傲慢な印象を与えてしまい、人間関係にひびが入る可能性もあります。
躁うつ病における「うつ状態」は、典型的なうつ病と同様、強い気分の落ち込みが持続する状態です。
この状態では、日常生活のほとんどが困難になり、自己評価が著しく低下することで、社会的な活動にも大きな支障をきたします。
主な症状:
- 抑うつ気分:理由もなく落ち込み、物事に対して否定的な思考にとらわれる。
- 活動の停滞・集中困難:動くことがつらく、集中力が著しく低下する。
- 不安・不眠:過剰な不安感とともに眠れなくなり、心身ともに不安定になります。
主なリスク:
- 社会的機能の低下:仕事や学校、家庭などの日常生活が送れなくなる。
- 自己否定:自分に価値がないと感じ、危険な思考に支配されることもあります。
- 生活困難:食事や入浴といった基本的な生活動作すら難しくなることもあります。
「軽うつ状態」は、明確なうつ症状には至らないものの、気分が優れず、不全感を抱える軽度のうつ状態です。
周囲から見ると気づかれにくいですが、本人にとっては「何となく気が乗らない」「物事が楽しく感じられない」といった内面的な不調が続きます。
特徴:
- 漠然とした気分の沈み、気が晴れない感じ。
- やる気が出ないが、日常生活には一応対応できる程度。
- 自分の中で「本調子ではない」と感じる。
ポイント:
多くの方が「安定している」とされる時期においても、この軽うつ状態にあることが多く、自覚的には満たされない気持ちや違和感が続きます。この「不全感」とどう向き合い、対処していくかが治療や予後を左右する鍵となります。
「混合状態」とは、躁状態とうつ状態の要素が同時に現れる、非常に不安定な状態を指します。
典型的な例:
- 落ち込んでいるのに、じっとしていられずに動き回ってしまう。
- 頭の中には活発な思考があるのに、体が動かず気分は重い。
- 不安や焦りの中で、衝動的に行動してしまう。
このような状態は、躁とうつの移行期や、抗うつ薬の影響などでも起こることがあります。状態が複雑でトラブルに発展しやすいため、早期の対応が必要です。
「ラピッドサイクラー」は、短期間のうちに「躁」「うつ」「混合」などの状態が繰り返し切り替わる状態を指します。
定義としては:
- 年に4回以上、明確な気分エピソード(躁・うつ・混合)が確認される。
- 特に抗うつ薬の使用が引き金となることもあるとされています。
このタイプもまた症状が不安定であり、計画的な治療と適切な服薬管理が不可欠です。
まとめ
- 躁うつ病では、「躁状態」「軽躁状態」「うつ状態」「軽うつ状態」という4つの基本状態と、「混合状態」「ラピッドサイクラー」の2つの特殊状態が存在します。
- 一見良好に思える軽躁状態も、実は不安定さを含み、注意が必要です。
- 安定時に多い軽うつ状態では「不全感」が残りやすく、この感覚とどう向き合うかが長期的な回復に大きく関係してきます。