今回は「他責」というテーマについて考えていきたいと思います。
人がストレスを感じたとき、その受け止め方にはいくつかの方向があります。まずはこのストレスに対する反応の三つの方向から見ていきましょう。
人は何らかのストレスやトラブルに直面したとき、大きく分けて三つの受け止め方をすることがあります。
それぞれの受け止め方にはメリットとデメリットがありますが、今回はこの中でも「他責」に焦点を当てて掘り下げていきます。

他責とは、物事の原因や結果について「相手が悪い」「他人の責任だ」と感じる考え方です。
自分の責任ではないと考えることにより、一定の心理的メリットを得られる場合もあります。
他責には、以下のような肯定的な側面も存在します。
このように、他責には一見すると有益な側面もあり、場合によっては自分を守る手段ともなり得ます。
しかし一方で、他責には非常に大きなリスクがあることも忘れてはなりません。
このように、他責は自分と他者の両方に悪影響を及ぼす「心の暴力」とも言える側面があります。

他責には、直接的な攻撃だけではなく、言外に込められた感情や態度によって相手を深く傷つける危険性があります。
たとえば、自分の思い通りにいかない場面で感情的に相手を責めた場合、相手は単なる叱責以上の痛みを感じることがあります。それは行動だけでなく、存在そのものを否定されたような感覚につながることもあります。
これはたとえ内容が正論であったとしても同じです。事実の指摘や改善要求があったとしても、言い方や態度によっては、相手に「奪われた体験」や「尊厳を否定された体験」として記憶されてしまうのです。

他責をしてしまう背景には、いくつかのパターンが考えられます。
いずれの場合も共通するのは、結果として他者を傷つけ、信頼関係を損なってしまうという点です。
信頼関係を表す概念として「信頼残高」という考え方があります。これは、相手にどれだけ良い行動(与える行為)を積み重ねてきたか、逆に奪った行動(攻撃や否定)をどれだけしてきたかを見て、その関係の安定性を測る考え方です。
他責は原則として、この信頼残高を大きく減らす行為です。
特に人格否定や感情的な非難を含む他責は、信頼を大きく損なう結果になってしまいます。
「謝ったから良い」は本当か?
「相手が謝ったから、自分の他責は正しかった」という考え方には注意が必要です。
謝罪という行為は、必ずしも納得や理解の結果ではありません。
「これ以上関わりたくない」「怒りをおさめるために仕方なく」など、相手の本音とは裏腹の行動である可能性もあります。こうした場合、相手は心に不信感や不満、モヤモヤを残すことになり、関係性は悪化の方向に進んでしまいます。
特に注意が必要な他責には以下の三つがあります。
とはいえ、すべての他責が悪いというわけではありません。
たとえば、悪意ある相手から一方的に攻撃されている場合や、人格・尊厳を深く傷つけられているときには、正当防衛としての他責が必要になる場合もあります。
例として以下のような状況が挙げられます:
こうした場合には、「自分が悪い」と自責してしまうことのほうが危険です。
むしろ、事実を正しく伝え、相手の不当性を明確にすることが、尊厳を守るために必要な行為なのです。
このときも、感情的にならず、人格を責めるのではなく、行動や言動の問題点を冷静に指摘することが大切です。場合によっては、信頼できる第三者に相談しながら進めることも検討しましょう。

他責をするときほど、丁寧さと冷静さが求められる。
そして本当に他責が必要な場面こそ、自分ひとりで抱えず、他者の支援を得ながら対応していくことが、心の健康と人間関係の回復につながります。