認知症というと、多くの方が「アルツハイマー型認知症」を思い浮かべるかもしれません。しかし、実際にはそれ以外にもいくつかのタイプがあり、その一つが「レビー小体型認知症」です。この病気はパーキンソン病と共通点を持ちながらも、幻視や注意力の変動など、特徴的な症状を伴います。薬の選び方や日常生活でのケアも大きく変わってくるため、適切に見分けることが大切です。ここでは、レビー小体型認知症の特徴や診断基準、治療とケアについて詳しく解説していきます。

例えばAさんは、夜中に突然大声で叫びながら飛び起きたり、いないはずの人物や動物が見えるようになったりしました。さらに、時間帯によって物忘れや注意力の低下が強く現れ、次第に歩行も不安定になりました。受診の結果、レビー小体型認知症と診断されたのです。このように、「幻視」「注意力の変動」「歩行のしづらさ」といった特徴が重なって現れるのが、この病気の大きな特徴です。

レビー小体型認知症は、脳の神経細胞内に「レビー小体」というたんぱく質の塊(a-シヌクレイン)が多発し、神経細胞を障害することで起こります。このレビー小体の影響で、認知機能の低下や幻視、運動症状などが見られます。

パーキンソン病と似た仕組みで起こりますが、レビー小体が脳のどの部位に多く分布するかで症状の出方が異なります。進行すると両方の症状が重なり合うこともあります。
特徴的なのは「視覚関連の障害」と「前頭葉機能の障害」です。さらに、アルツハイマー型認知症と同じように、脳内でアセチルコリンという神経伝達物質の不足が起きることも知られています。
レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症に次いで多く、認知症全体の約10〜15%を占めます。病気はゆっくりと進行し、おおよそ発症から5〜7年で徐々に悪化していくとされています。
レビー小体型認知症では、次のような特徴的な症状が現れます。
① 注意・認知の変動
日によって、または時間帯によって注意力や認知機能が大きく変わります。この変動のため、一時的にとても調子がよく見えることもあり、周囲が「問題ないのでは」と誤解することもあります。
② 幻視
実際には存在しない人物や動物、虫などがはっきりと見える症状です。これらの幻視は繰り返し現れることが多く、不安や混乱を招きます。
③ パーキンソニズム
動きがぎこちなくなる、小刻み歩行、転倒のしやすさなど、パーキンソン病に似た運動症状が出ます。これにより、日常生活に支障が出たり、けがのリスクが高まったります。
④ レム睡眠行動異常症
夢を見ている間に体が動き、大声を出したり暴れたりするなどの行動が現れます。内容は夢と一致していることが多いとされます。
⑤ 抗精神病薬への過敏さ
幻視などの症状に対して抗精神病薬を使うと、副作用が強く出やすい特徴があります。治療では特に慎重さが必要です。
診断は「認知症の診断」と「レビー小体型認知症の診断」の二段階で行われます。
まず、記憶や注意などの認知機能が有意に低下していることが、本人や家族の証言と神経心理学検査など客観的データで確認されます。さらに、その障害が日常生活の自立を妨げていることも条件です。
次に、レビー小体型認知症の特徴的な症状の有無を確認します。
また、レム睡眠行動異常症や抗精神病薬への過敏さなどが示唆所見となります。
似たような症状が現れる病気もあり、鑑別が大切です。
・アルツハイマー型認知症
記憶障害が中心で、幻視は少ない傾向。薬の効き方も異なり、抗精神病薬への過敏さは少ない。
・せん妄
急に意識が混乱する病気で、注意力の変動が似ています。せん妄の原因(薬や環境)を取り除くと症状が改善することがあります。
・パーキンソン病
初期は運動症状が中心で、認知症状は進行してから出ることが多いですが、両者が重なる場合もあります。
検査では、MMSEなどの認知機能テスト、脳のCTやMRI、レビー小体型認知症に特徴的なI-MIBG心筋シンチグラフィーなどを用いて判断します。
レビー小体型認知症は進行性の病気ですが、症状に応じた治療と生活支援で生活の質を維持することが目標です。
① 薬物療法
② 介護ケア
パーソンセンタードケアの考えに基づき、本人の尊厳を大切にしながら生活支援を行います。
レビー小体型認知症は、パーキンソン病と関連しながらも、幻視や注意力の変動など独特の症状を持つ認知症です。アルツハイマー型認知症などと見分けることが重要で、適切な診断と治療、介護の支援で生活の質を守ることが目指されます。進行性の病気ではありますが、薬や介護サービスを上手に活用することで、本人と家族が安心して生活を続けていくことが可能です。