「最近、なんだかすぐに疲れてしまう」「休んでも疲れが取れない」といった声を耳にすることがあります。そんな「疲れやすさ」は、単なる疲労や運動不足とは異なり、体の不調やメンタルの不調のサインである可能性があります。本記事では、心療内科・精神科の視点から「疲れやすさ」の原因と対策について、丁寧に解説していきます。
まず確認したい「体の不調」
「疲れやすさ」に気づいたとき、まず注目すべきは体に何らかの異常がないかどうかです。疲労感を引き起こす代表的な身体的原因として、以下の三つが挙げられます。
1. 貧血
貧血は、体内の赤血球やヘモグロビンが不足し、全身に酸素を十分に運ぶことができなくなる状態です。特に女性に多く、軽度でも「何となく疲れる」「息が切れやすい」などの自覚症状につながることがあります。根本原因(鉄分不足、慢性疾患、出血など)を特定することが重要です。
2. 甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンは、体の代謝を調整する重要なホルモンです。分泌が低下すると、体温の低下、動作の緩慢化、そして慢性的な疲労感や眠気が現れます。血液検査によって簡単に診断が可能です。
3. 糖尿病
糖尿病は進行するまで明確な自覚症状が乏しいことがありますが、実は「疲れやすい」というのが初期症状の一つであることも少なくありません。のどの渇き、多尿、体重減少などと合わせて注意が必要です。
これら三つはいずれも採血によって診断可能な疾患であり、「疲れやすさ」を軽く見ず、まずは内科で検査を受けることが推奨されます。
メンタルからくる「疲れやすさ」
身体に明らかな異常がないにもかかわらず、疲労感が続く場合は、心の状態に目を向けてみる必要があります。精神的な不調は、しばしば「目に見えない疲労」として現れます。


1. うつ病
うつ病は、気分の落ち込みや意欲の低下だけでなく、「だるい」「疲れる」といった身体症状も目立ちます。これは脳内の神経伝達物質、特にセロトニンの働きが低下することに起因しています。
治療は、①休養、②薬物療法(抗うつ薬)、③精神療法が柱となります。不眠が併発することも多く、疲労の悪化や回復の遅れにつながるため、早期対応が大切です。
2. 不安障害
不安障害では、常に「何か不安」「心配が止まらない」といった精神状態が続くことで、心も体も消耗します。代表的な疾患としては、社会不安障害、パニック障害、全般性不安障害などがあります。
精神的な「気疲れ」に加え、心拍数や血圧の上昇など生理的な反応も伴うため、実際に「体が疲れる」感覚が強くなります。こちらもセロトニンが関与しており、抗うつ薬を用いた治療が一般的です。
3. 不眠症
眠れない、眠りが浅い、早朝に目が覚める――こうした不眠の状態が続くと、当然のことながら体と脳の回復が不十分になります。慢性的な睡眠不足は、心身の疲労を蓄積させ、うつ病や不安障害を悪化させる悪循環を生み出すため、軽視は禁物です。
疲労の「3ファクター」モデルと対策
疲労は、ストレスと密接に関係しています。これを「浴槽モデル」として理解するとわかりやすくなります。
1. 入る疲れ(ストレス・負荷)
2. 出る疲れ(休養・回復)
3. 容量(耐性・体力)
疲れが溜まる原因は、①負荷が大きすぎる、②回復が間に合わない、③そもそもの容量が少ない、という3つの要素に分けられます。したがって、対策は次の3点に集約されます。
対策①:疲労の原因を減らす
• 緊張を避け、意識的にリラックスする
• ストレスを溜めず、上手に受け流す工夫を
• 仕事・住環境の見直しによる負荷の軽減
対策②:疲労回復の質を高める
• 良質な睡眠を取る(寝室環境や寝る前の習慣を見直す)
• 積極的休養:無理に「何もしない」よりも、軽い運動などで回復促進(アクティブレスト)
• リラクゼーション法(深呼吸、ストレッチ、温浴など)
対策③:疲れにくい身体と心を作る
• 適度な運動習慣を身につけ、基礎体力を維持
• ストレスマネジメント:日記、カウンセリング、趣味時間の確保など
• 健康的な生活リズムの構築と体調管理
まとめ:疲れやすさは「見逃さないこと」が最重要
「疲れやすさ」は、体にも心にも何かしらのサインが出ている可能性がある重要な症状です。貧血、甲状腺機能低下症、糖尿病といった身体の不調から、うつ病、不安障害、不眠症といったメンタル不調まで、幅広い原因が潜んでいます。
大切なのは、「ただの疲れだろう」と見過ごさず、必要に応じて医療機関に相談すること。そして、普段からストレスケアや生活習慣の見直しによって、疲れを「ためず」「回復し」「余力を持つ」ことが、健やかな心身を保つ鍵となります。