
2018年に放送された人気ドラマ『大恋愛』は、若年性アルツハイマー病にかかる30代の女性医師が主人公の物語で、多くの視聴者の共感を呼びました。物忘れが少しずつ日常生活に現れる様子がリアルに描かれ、自分もアルツハイマーではないかと疑って、物忘れ外来を受診する若年層が増加したことも話題になりました。現在でも若い世代が物忘れ外来を訪れるケースが増えており、中には20代の人も含まれています。しかし、これは若年層の認知症が増えているというわけではありません。
実際、若い方が物忘れを訴えて受診する場合、診断結果は認知症ではなく、うつ病やストレスによるものが多く見られます。また、ADHDの特性として不注意から生じる物忘れもありますが、仕事や日常生活でのストレスが加わることで、その症状が悪化することもあります。
うつ病や強いストレスが原因で物忘れが起こるという点は、まだ一般にはあまり知られていませんが、気分の落ち込みや意欲低下といった典型的なうつ病の症状ではなく、「物忘れ」が先行して現れるケースもあるのです。特に年配の方のうつ病では、認知症と症状が重なり、区別が難しい場合もあります。

こうした背景から、物忘れ外来を受診する若者が増えている現象が見られるようになりました。物忘れの症状が目立ち始めたことで、自分が認知症になったのではないかと心配し、受診を決意する方が少なくないのです。しかし、実際には認知症ではなく、うつ病やストレスの影響で物忘れが生じているケースがほとんどです。
仕事や生活の中での物忘れには、例えば入力ミスやケアレスミス、大切なアポイントを忘れてしまう、人の名前が出てこない、作業手順を思い出せない、人の話が頭に残らずすぐに抜けてしまう、などがあります。家庭では、暗証番号や財布を忘れる、料理の火を消し忘れる、同じものを繰り返し買ってしまう、といった行動に悩む人もいます。
認知症の物忘れとは異なり、うつ病やストレスによる物忘れは知能の低下ではなく、脳全体の働きが弱っていることによる集中力の低下が原因です。記憶が完全に抜けてしまうわけではなく、家族から指摘されれば「ああ、そうだった」と思い出すことができます。認知症では、食事をしたこと自体を忘れ、家族から言われても思い出せないことが多くあります。

物忘れの原因は認知症、うつ病、ストレスだけに限らず、スマホやゲームの長時間使用、寝不足、飲酒など、生活習慣も影響します。まれに脳腫瘍や甲状腺の疾患が原因の場合もあり、さらに、アレルギー薬や糖尿病薬、睡眠薬の服用が影響しているケースもあります。特にうつ病の治療で症状が改善しつつあるにも関わらず、物忘れが現れる場合には、服用中の睡眠薬が影響している可能性も考えられます。
年齢を重ねるとともに物忘れが増えるのは自然な老化現象です。50代になって人の名前が出てこなくなったり、新しい情報を覚えるのに時間がかかるようになっても、すぐに心配する必要はありません。ただし、急激に物忘れが増え、仕事や勉強に支障が出る場合には注意が必要です。まずはスマホやゲームの使用時間を減らし、十分な睡眠を取る、お酒を控え、休養を取るなど生活習慣の見直しから始めることが大切です。これでも改善が見られない場合は、専門家への相談をお勧めします。
うつ病やストレスによる物忘れについての理解を深め、自分や身近な人の健康に役立ててください。