女性のADHD──男性との5つの違いとその背景

発達障害の一つであるADHD(注意欠如・多動症)は、子どもの頃から見られることが多いとされていますが、特に女性では大人になってから診断されるケースが非常に多く見られます。これは、ADHDの症状の現れ方に性差があるためです。今回は、女性のADHDが男性のADHDとどう異なるのか、その違いを5つの視点からご紹介します。
1. 不注意型が多く、症状が目立ちにくい

ADHDには大きく分けて「不注意優勢型」「多動・衝動優勢型」「混合型」の3タイプがあります。一般的に、男性は「多動・衝動優勢型」や「混合型」が多く見られるのに対し、女性は「不注意優勢型」が多い傾向にあります。
不注意の症状は、多動や衝動のように周囲に迷惑をかけるわけではないため、目立ちにくく、見過ごされやすい特徴があります。例えば、授業中にぼんやりしていたり、忘れ物が多かったりしても、「おっとりしている」「注意が散漫」と捉えられるだけで、問題視されないことが少なくありません。
そのため、女性は幼少期から学生時代にかけてADHDを指摘されることが少なく、大人になって社会に出たときにようやく違和感に気づくというケースが多いのです。
2. 成人後に発見されやすい

ADHDはもともと「子どもの病気」と思われがちでしたが、現在では成人後にも診断されることが多くなっています。特に女性では、学生時代は家族や周囲のサポートにより何とか過ごせても、社会に出てから環境が大きく変わることで症状が顕在化します。
社会人になると、時間管理、約束の履行、タスクの遂行など、自分で責任をもって行動する場面が増えます。こうした場面で不注意の影響が強く出てくるのです。また、成人女性の場合は家事や育児といった家庭内での責任も加わり、ADHDの影響が日常生活に深刻な形で現れることもあります。
このようにして、女性のADHDは「社会人になってから初めて気づく」あるいは「出産や子育てをきっかけに顕在化する」といった経緯で診断に至ることが少なくありません。
3. 衝動性の表れ方が異なる

ADHDの特徴の一つに「衝動性」がありますが、この現れ方にも男女差があります。男性では、怒りの爆発や暴言、暴力といった「外向的な衝動性」が見られやすいのに対し、女性では「内向的」あるいは「間接的」な衝動性として表れることが多いです。
たとえば、女性のADHDでは以下のような行動が見られることがあります:
これらは一見すると日常的な問題に見えるため、本人も周囲も「ADHDによるもの」とは気づきにくく、結果として診断や支援に結びつかないことが多いのです。
4. 気分の波が大きく、ホルモンの影響を受けやすい

女性のADHDでは、ホルモンバランスの影響を強く受けることも特徴です。特に月経周期に伴う気分変動(PMS:月経前症候群)によって、もともとのADHD症状がさらに強調されることがあります。
PMSでは、落ち込みやイライラ、衝動性の高まりといった症状が現れることがあります。これがADHDと重なると、症状が複雑化し、本人も医師もどちらが主な原因なのか判断が難しくなります。
そのため、治療の際には「目立っている症状」に焦点を当てて対処し、その後もう一方の症状がどの程度残るかを見極めて治療方針を考えることが大切です。PMSとADHDの両方にアプローチすることで、より安定した日常生活を送れるようになります。
5. 二次障害が出やすい

女性のADHDは、症状が見過ごされやすいがゆえに、長期間にわたって無理な「適応」を続けることがあります。これを「過剰適応」と言い、自分の特性を押し殺して周囲に合わせることで一見「問題ないように」見える状態ですが、内面では大きなストレスを抱えています。
こうした状態が続くと、やがて心身に支障をきたすことがあり、以下のような二次障害へとつながるリスクが高まります。
特に女性は「周囲に迷惑をかけないように」と自分を抑える傾向が強いため、知らず知らずのうちに強いストレスを蓄積してしまいます。そのため、早期発見・早期介入が非常に重要です。
まとめ:女性ADHDの特徴と向き合い方
女性のADHDは、以下の5つの特徴にまとめられます。
このように、女性のADHDは非常に多様で、かつ繊細な症状の現れ方をします。「子どものころから生きづらさを感じていた」「社会に出てから急につらくなった」「PMSがつらくて気持ちが安定しない」といった悩みをお持ちの方は、ADHDという視点から自分を見直してみることも大切です。
大人になってからの診断であっても、遅すぎることはありません。適切な支援や治療を受けることで、より快適で前向きな日常を取り戻すことができます。