
「認知症は治るのでしょうか?」という問いは、多くの人が直面する切実な関心事です。高齢化が進む日本社会において、認知症は身近な疾患でありながら、その治療やケアに関する正しい知識が求められています。本記事では、認知症の種類と特徴、治療の可能性、予防やケアの実際について、わかりやすく解説いたします。
結論から申し上げると、認知症を「治す」ことは、現在の医療では非常に困難です。ただし、「できることが何もない」というわけではありません。症状の進行を緩やかにしたり、生活の質を保つための対応は数多く存在します。
認知症とは、脳の機能が低下し、記憶・思考・判断などが障害される疾患で、いくつかの異なるタイプに分類されます。それぞれ原因や症状の特徴が異なり、治療や対策も異なるアプローチが必要になります。

最も一般的なタイプで、物忘れが徐々に進行するのが特徴です。脳内にアミロイドβという異常なたんぱく質が蓄積し、神経細胞が破壊されていきます。根本的な治療法は存在しませんが、進行を遅らせる薬はあります。
脳梗塞や脳出血など、脳血管のトラブルによって脳細胞が損傷し発症します。症状は発作的に現れることが多く、アルツハイマー型と合併するケースもあります。
幻視やパーキンソン病に似た運動障害を伴う認知症です。症状が日によって変動しやすく、治療薬への副作用が出やすいのが難点です。
主に前頭葉と側頭葉が萎縮することで、社会的に不適切な言動や反社会的な行動が現れます。記憶障害よりも行動や感情のコントロールに問題が出るのが特徴です。治療薬はなく、精神的なケアが中心となります。
一部には認知症と見分けがつきにくいが、適切な治療で改善が見込める状態も存在します。誤診を避けるためには、医療機関での丁寧な診察が不可欠です。

意欲低下や物忘れが認知症と似ているが、治療により改善可能。
発熱や脱水などによって意識が混濁し、一時的に認知症様の症状を示す。原因を取り除けば回復します。
高齢者に見られる「物とられ妄想」などが中心。抗精神病薬での治療により改善の可能性あり。
頭部の外傷により脳を圧迫し、認知症様の症状が出現。手術で改善が可能。
髄液が脳内にたまり、歩行障害・尿失禁・認知症症状が現れる。シャント手術で改善例多数。
甲状腺機能低下症、低栄養、てんかんなど、基礎疾患の治療で回復する場合があります。
たとえ治療が困難であっても、各段階での対応や予防策によって、本人と家族の生活の質は大きく変わります。
明確に「予防できる方法」はありませんが、次の生活習慣は効果的と考えられています。
・適度な運動
・脳を使う活動(読書・会話・趣味など)
・バランスの取れた食事
・質の良い睡眠
早期に診断されることで以下のメリットがあります。
・進行を遅らせる治療薬の導入
・介護サービスの利用(デイサービス、訪問介護など)
・周辺症状の予防と適切な対応
認知症が進行すると、次のような精神的・行動的症状が現れることがあります。
・物とられ妄想
・興奮・暴力
・徘徊
これらは介護者に大きな負担を与えるため、適切な対応が不可欠です。
騒音、混乱、孤独などのストレスを避け、安心できる空間を整える。
抑肝散などは比較的安全に使用可能。効果が限定的な場合は他の治療を検討。
副作用が強いため、使用には医師の慎重な判断が求められます。
暴力行為などで安全確保が難しい場合には、専門施設への一時入院を検討します。
認知症が進むと、自宅での介護が限界を迎えることがあります。その際には、以下の選択肢が考えられます。
・特別養護老人ホーム(特養)
・グループホーム
・認知症専門施設
介護者の負担を減らし、安心できる生活環境を提供します。
・身体疾患が重くなった場合や在宅での介護が難しくなった際に適応。
・長期療養を目的とした医療機関が選択肢になります。
・通院が困難になった場合、医師や看護師が自宅を訪問して診療を行う制度です。
・最期まで住み慣れた自宅で過ごしたいという希望にも対応可能です。
治せなくても、支え合う選択肢がある
認知症はアルツハイマー型をはじめとしたいくつかのタイプがあり、基本的には進行性で治癒が難しい病気です。ただし、「認知症に似た状態」や「治せる認知症」も存在するため、専門医による正確な診断が極めて重要です。
また、周辺症状の予防と対応は、本人のQOL(生活の質)や介護者の負担軽減に直結します。薬物治療だけでなく、環境調整や介護サービスの活用も含めて、包括的な支援が求められます。
認知症とともに生きる社会の中で、私たち一人ひとりが正しい知識を持ち、温かく支え合う姿勢こそが、最も有効な「治療」に近いものかもしれません。