
心療内科や精神科の現場では、患者さんの症状や生活環境に応じたきめ細やかな対応が求められます。特に認知症に関する治療では、薬の「飲みやすさ」や「副作用への配慮」も重要な要素のひとつです。
今回ご紹介するのは、認知症治療薬の中でも「貼るタイプの薬」として知られる**リバスチグミン(製品名:リバスタッチ)**です。この薬にはどのような効果や特性があり、使用時にはどんな点に注意が必要なのか、わかりやすくご紹介していきます。
リバスチグミンは、アルツハイマー型認知症の進行を遅らせる目的で使われる抗認知症薬のひとつです。貼り薬というユニークな投与方法を特徴としており、薬を飲むことが難しい方にも対応できるのが大きな強みです。

ただし、この薬は病気そのものを治すものではありません。あくまでも「進行を遅らせる」ことを目的としています。
アルツハイマー型認知症は、日本でもっとも多く見られる認知症のタイプで、物忘れから始まり、思考力や判断力の低下が徐々に進行していきます。主に中高年から高齢者にかけて発症しやすく、病気の進行は基本的に緩やかですが、確実に少しずつ進んでいきます。

認知症には、記憶や判断力の低下といった「中核症状」と、いらいらや意欲低下などの「周辺症状」があります。リバスチグミンは、この中でも**意欲低下(アパシー)**のような症状に対しても効果が見込まれる薬剤です。
リバスチグミンは、**脳の神経伝達物質である「アセチルコリン」**の分解を抑えることで、神経間の情報伝達を助け、認知症の進行を緩やかにします。
アルツハイマー型認知症の脳では、神経細胞に変性が生じ、アセチルコリンの量が減少していることが知られています。この減少が記憶障害や思考力の低下に関係しているとされており、リバスチグミンはそのアセチルコリンの分解酵素をブロックすることで、効果を発揮します。
一般的な抗認知症薬は内服(飲み薬)ですが、リバスタッチは皮膚に貼るタイプの薬です。この特徴によって、次のようなメリットがあります:
しかし一方で、「貼る薬」ならではの注意点もいくつか存在します。
およそ3割の方に皮膚トラブルが見られるとされています。赤みやかゆみ、腫れなどが出た場合は、薬を中止したり軟膏を併用したりといった対処が必要です。
貼り忘れてしまうと薬の効果は持続しません。逆に「貼り忘れたと思って重ねて貼る」と過剰投与になり、副作用が強く出る可能性があります。入浴後に貼るなど、習慣化する工夫が効果的です。
皮膚の負担を軽減するためにも、毎日違う場所に貼ることが推奨されています。
副作用が強く出た場合には、一時的な中止や減薬、ほかの薬剤への変更も検討されます。
リバスチグミンのような「コリンエステラーゼ阻害薬」には、**ドネペジル(アリセプト)やガランタミン(レミニール)**もあります。これらは飲み薬ですが、作用機序は似ています。
一方、**メマンチン(メマリー)**は「NMDA受容体拮抗薬」に分類され、作用の仕方が異なります。症状や体質、併用薬の有無などによって、適切な薬剤が選ばれます。
リバスチグミンの使用が特に検討される場面は以下の通りです:
このようなケースでは、他の抗認知症薬よりもリバスチグミンが適していると判断されることがあります。
認知症の治療において、薬の効果は「進行を遅らせる」ことにとどまります。そのため、患者さんの生活の質を維持するためには、介護やサポート体制の構築が不可欠です。
日本では「介護保険制度」が整っており、訪問介護やデイサービスなどの支援を受けることができます。薬物療法と介護支援の両輪で患者さんと家族の負担を軽減していくことが望まれます。
リバスチグミン(リバスタッチ)は、認知症の進行をやさしく遅らせる貼り薬として、多くの現場で活用されています。飲み薬に比べて消化器への負担が少なく、服薬が難しい方にも対応できるという利点がある一方で、皮膚トラブルや貼り忘れには注意が必要です。
認知症治療は、薬だけでなく介護支援とのバランスも大切です。薬の特性をよく理解し、無理のない形で治療と支援を続けていくことが、患者さんとご家族の安心へとつながります。