現代社会において、不安を感じることは決して珍しいことではありません。人間関係、仕事、将来への心配、体調のことなど、不安の種は日常のあらゆる場面に潜んでいます。しかし、不安を抱えることが悪いわけではなく、問題はその不安とどう向き合うか、どのように乗り越えるかという点にあります。
本記事では、不安を感じやすい方にぜひ試していただきたい、効果的な5つの対処法をご紹介します。いずれも専門家の実践経験に基づいたもので、どなたにも取り入れやすい内容になっています。
不安を感じているとき、多くの人は無意識のうちに呼吸が浅く早くなってしまいます。これはいわゆる過呼吸の状態であり、心身の緊張をさらに強めてしまう原因になります。
そんなときに試していただきたいのが「8秒呼吸法」です。この呼吸法の最大のポイントは、吸うことよりも「吐くこと」に意識を向ける点にあります。ゆっくりと、頭の中で「1…2…3…4…5」と数えながら息を吐いてみましょう。無理に長く吐こうとせず、自然な範囲で構いません。
このように深く長く息を吐くことで、自律神経のうちリラックスに関わる副交感神経が優位になります。血圧や脈拍が落ち着き、唾液の分泌が促進されることで、身体全体が「安心しても大丈夫」という状態に切り替わるのです。
毎日決まった時間に8秒呼吸を習慣化することで、不安を感じたときにも落ち着いて対処できるようになります。まずは1日1回、深呼吸の時間を取ってみてはいかがでしょうか。

感情としての「不安」は曖昧で捉えどころのないものですが、それを数値化することで意外にも冷静に眺められるようになります。それが「不安スコアリング」という手法です。
方法は簡単で、今感じている不安に対して「0〜10点」のスコアをつけてみるだけ。0はまったく不安を感じていない状態、10は人生で最も強い不安を感じた状態を指します。ただし、10点は一度きりと考えておくと、その時々の不安の「相対的な大きさ」をより正確に認識できます。
不安に点数をつけることで、「これは今までの中では5点くらいの不安だな」「さっきより少しマシになった」など、自分の感情の波を客観的に捉えられるようになります。そして、軽めの不安のうちに早めに対処する習慣が身につくという利点もあります。
人は曖昧なものに対して強く不安を感じやすいものです。頭の中で漠然と不安を抱えていると、実態以上に大きな問題に感じてしまうことも珍しくありません。
そんなときは、その不安を紙に書き出したり、人に話したりして「見える化」してみましょう。これを「モヤモヤアウトプット」と呼びます。
「何に対して」「どのように」不安を感じているのかを書き出してみると、思っていたほど深刻なものではなかったと気づくことも多くあります。まるで正体不明の幽霊の姿が明らかになった途端に怖くなくなるように、不安の内容を明確にすることにはそれだけで安心感を生む力があります。
もし一人で書くのが難しい場合は、信頼できる友人や支援者、カウンセラーに話してみましょう。誰かに言葉として伝えることで、自分の中にあった不安が整理され、心がすっと軽くなるかもしれません。
不安が少し落ち着いたときには、その不安が「自分でどうにかできるもの」か「どうにもならないもの」かを見極めることが大切です。
もし自分の努力や工夫によって状況が改善する可能性があるなら、思い切って一歩踏み出してみることも良い方法です。逆に、自分ではどうしようもないことに対して必要以上に悩んでいる場合は、その不安を「手放す」勇気も必要です。
私たちはよく「手放すべきことにしがみついて、エネルギーを消耗してしまう」ということを無意識にやっています。自分が今、何に対して不安を感じ、それが自分にとって「頑張るべきこと」なのか「放っておいても仕方ないこと」なのか、紙に書き出して整理してみると気づきが得られるでしょう。

どうしても不安から逃れられない夜。何をしても頭の中がぐるぐると不安でいっぱいになる時もあるかもしれません。そんな時には、思い切って「薬を飲んで寝る」という選択肢も検討してみてください。
夜は特に不安が高まりやすい時間帯です。生物学的にも、夜間は警戒心が高まりやすくなるように私たちの体ができていると言われています。また、夜遅くなるほど脳の判断力が低下し、不安をうまく処理することが難しくなる傾向にあります。
そのようなときは、思い切って「悩むのは明日」と決めて、安心して眠るための手段を取りましょう。場合によっては医師に相談し、適切な睡眠導入剤などの処方を受けることも選択肢の一つです。
そして翌朝目覚めてみれば、「あれ? なんであんなに悩んでいたんだろう」と思えることも少なくありません。不安の渦中にいるときには思い浮かばない選択肢かもしれませんが、「寝てしまう」こともまた大切な自己防衛の方法の一つです。
不安を「完全になくす」ことは難しいかもしれません。しかし、不安と上手に付き合い、必要以上に苦しめられない方法はきっとあります。
今回ご紹介した5つの方法──「8秒呼吸法」「不安スコアリング」「モヤモヤアウトプット」「手放すか頑張るかの見極め」「薬を飲んで寝る」──は、どれも日常生活に簡単に取り入れることができます。
「悩んだら寝て、明日考えよう」
そんな柔らかい心持ちで、不安とともに生きる自分を大切にしていきましょう。