パーソナリティ障害(人格障害)とは、思考や行動が著しく偏っていて、本人が社会に適応できずに苦しんでいる状態を指します。この状態は個性や性格の域を超えて「異常性格」「病的性格」と呼ばれることもあります。かつては「精神病質」「サイコパス」とも称されていましたが、現代では異なる言葉で捉えられています。今回はこのパーソナリティ障害について、特徴や治療法、対応方法を詳しく解説していきます。
パーソナリティ障害の診断には、「どこからが障害で、どこまでが正常か」という明確な境界線がありません。例えば、考え方や行動に極端な偏りがあっても、社会と上手に関わって生活できていれば、パーソナリティ障害とはみなされないことがあります。しかし、本人や周囲が苦痛を感じ、日常生活に支障が出ている場合には、パーソナリティ障害と診断されることがあります。こうした点から、診断には専門的な観察と判断が求められます。

パーソナリティ障害は大きく3つのタイプに分類されます。それぞれが異なる特徴を持ち、診断や対応方法も異なります。
このタイプは他者への不信感が強く、対人関係を築くことに大きな困難を抱えています。妄想性人格障害が代表例で、周囲の人や社会に対して猜疑心を抱き、孤立しがちです。
このタイプの人は自己中心的な思考が強く、感情の制御が難しい特徴があります。周囲とトラブルを起こしたり、時には暴力的な行動に出ることもあり、犯罪に至る場合もある深刻なタイプです。境界性人格障害(ボーダーラインパーソナリティ障害)が代表例で、後述しますが他者との付き合いに大きな問題が生じやすいとされています。
回避性人格障害や依存性人格障害が含まれるこのタイプは、他者に依存し、引きこもりやすい特徴があります。極端に物事にこだわりを持つことも多く、自立することに不安を感じやすいため、特に社会生活において問題を抱えやすいと言えます。
パーソナリティ障害の中でも特に注目されるのが、境界性人格障害(ボーダーラインパーソナリティ障害)です。常に虚しさや不安を抱えており、特に「見捨てられたくない」という思いが強いことが特徴です。この不安感からくる行動が周囲に大きな影響を及ぼすため、家族や恋人にとっては非常に対応が難しい障害とされています。
境界性人格障害の人は見捨てられることを極端に恐れるため、離れられそうになると激しい怒りを感じ、感情のコントロールが難しくなることがあります。相手の気を引くために過激な言動や自傷行為に走り、場合によっては暴力的な行動に出ることもあります。そのため、生活がこの行動に振り回されることが多く、周囲の人にとっては困難な状況が続きがちです。
境界性人格障害は1970年代のアメリカで患者数が増加し、当時は幼少期の虐待やトラウマとの関連が指摘されました。当初は神経症と精神病の間に位置する疾患とされていたため、「境界性」という名称がつけられました。治療には精神分析が必要とされ、心理的な問題を主な原因と考えた治療が主流でした。
しかし、1990年代からは脳科学的な観点が研究に加わり、境界性人格障害の患者の多くは発達障害(例:注意欠如多動性障害(ADHD))の一種ではないかという見解も示されるようになりました。これは、幼少期の体験だけでなく、脳の一部が生まれつき機能していないためにパーソナリティ障害が生じる可能性があるという考え方です。
過去の心の傷や心理的な問題が原因であれば精神分析的な治療が必要とされますが、近年の脳科学的な見解では、親や周囲のせいではなく、脳の機能に原因があると考えることが増えました。これにより、治すというよりも、障害を抱えた状態でいかに社会に適応していくかという観点に転じてきました。例えば、気分が変動しやすく怒りが抑えられない場合には薬で気分を安定させることが有効とされ、不安が強い場合には環境を整えることで生活をサポートする対処療法も行われています。

家族や恋人にパーソナリティ障害の人がいる場合は、ただの「わがまま」ではなく、障害として接する姿勢が大切です。相手の行動が病気に基づくものであると理解することで、冷静に対応でき、過度に反応して怒りを引き出すことが減ります。また、万が一怒らせてしまった場合は、相手の怒りに巻き込まれることなく、冷静に対応することが求められます。
特に境界性人格障害の場合は、自傷行為や暴力が見られることがあるため、家族や恋人のサポートが重要です。自分でコントロールが難しい行動には、本人と話し合って制限を設けることが必要です。場合によってはDV相談センターや警察といった公的機関と連携することも検討しなければならない場合もあります。
近年の研究によって、境界性人格障害がADHDや双極性障害と診断されるケースが増えています。これは、心理的な問題以上に脳の機能に原因があると考えられるようになってきたためです。診断名は異なるものの、問題行動を「わがまま」として扱うのではなく、障害として対応することが、本人を支え、適応力を高めるための第一歩となるでしょう。
パーソナリティ障害には他にもアスペルガー症候群などの発達障害が関わっていることが多くあります。これらの障害は完全に治すことが難しいため、薬を利用して怒り、不安、こだわりなどの症状を抑えながら、いかに社会に適応していくかを考えることが大切です。